音速のドラ猫28
GWが終わり、5月も下旬に入った頃…お母さんは唯湖さんの勤務する〔三沢病院〕に入院した。
樹「んじゃ、行ってくるわ。戸締まりはちゃんとするんやで。何かあったらすぐ電話してや」
みゆき「は〜い、お父さんも気をつけてね」
樹「あいよ〜」
お父さんを見送り、私も学校へ行く準備をする。
ピンポーン
玄関のインターホンが鳴る…
確認すると中学に上がり友達になったしおりんが来ていた。
しおり〔おはよ〜 みゆきち〕
みゆき「あ、おはよう。しおりん 今開けるね」
ガチャ
しおり「や〜 久しぶりだね〜」
みゆき「昨日も学校で会ったじゃない…」
しおり「それもそうだね〜」
しおりんこと関根 しおりちゃんは私と同級生で
同じバンド部のベースギターを担当している。
ちなみに私はドラム担当だ。
しおり「みゆきち親御さんはどったの?」
みゆき「お父さんはお仕事、お母さんは入院中」
しおり「え、病気…?」
みゆき「ううん、もうすぐ妹が産まれるの。」
しおり「おぉ〜 おめでたですネ〜」
みゆき「うん…でも、ちょっと心配かな…」
しおり「やっぱ心配になるよね…」
みゆき「うん…でも、お姉ちゃんになるしくよくよしてられないよ!さ、学校行こ!」
しおり「うん!」
私たちは一緒に登校した。
男「ザザッ…こちらα目標は同学年の女生徒と通学を開始しました。」
⁇?〔了解、尾行を続けろ。〕
男「了解 交信終了…いつまで続くのやら…」
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〜防衛省陸幕2部〜
宗介「定時連絡によれば、現在のところ不審な人物は確認されてないようです。」
航英「今のところは…か。」
梨花「最近はやけに静かですね。」
航英「だね。闇の執行部はおろか二木本家の動きも静かなままだな。同業の動きは?」
梨花「はい、現在 青森県警の公安部が秘密裏に動いていると情報を得ています。」
宗介「本省内でもDIH(情報本部)が動き出したようです。」
航英「そのまま、闇の執行部を潰してくれるとありがたいんやけどなぁ…」
宗介「それは我々の悲願でもありますね。」
航英「ただ、最近不穏な噂を聞いてね。」
2人「不穏な噂ですか…?」
航英「ああ…アイツからの情報でな。アメリカの…G2の連中が動き出した」
宗介「奴らが…」
梨花「G2…何ですかそれ?」
航英「古手くんには教えてなかったな。」
宗介「自分が説明します。G2とは俗称であり正式名称は NSA(アメリカ国家安全保障局)SCS(情報収集部)G2の事です。」
梨花「NSA…アメリカがなぜ?」
宗介「前にも話した通り、闇の執行部は世界的にも危険な組織に分類されます。DIHは勿論、アメリカやイギリス、ドイツ、フランスさえもこの組織を危険視してます。」
梨花「そんなに…」
航英「だから、彼等が出てくる前に我々で闇の執行部を潰しておかなければならない。」
宗介「しかし、なぜ熊岡3佐がこんな情報を持っていたのでしょうか?」
航英「あれ?言ってなかったかな、アイツはDIHの人間だって事を」
梨花「それじゃあ…本省内で動き出した人間は熊岡3佐という事ですか?」
航英「そうやね。アイツの他にもアイツと同じ隊の 松原 玄武 2等空尉もDIHの人間だ。」
宗介「しかし、そのような情報は…」
航英「この情報は君の上官である井ノ原2尉が入手した情報でね。アイツらもこちらと手を組んで闇の執行部殲滅に乗り出したんだろう。」
梨花「それで…熊岡3佐達の肩書きは?」
ガチャ
その時、俺の上司である井ノ原2尉が習志野駐屯地から帰ってきた。
真人「防衛省情報本部 対外特別情報収集部 工作課長だな。玄武もそこの課に所属している」
宗介「班長」
梨花「井ノ原2尉」
航英「任務ご苦労だった。」
真人「これだけの情報を集めるのも苦労しましたよ…まさかあの人が"SiCO"だったとは思わなかったですよ。」
梨花「SiCC(サイコ)…ですか?」
宗介「対外特別情報収集部の俗称ですね。頭文字を取ってSiCOです。」
梨花「なるほど。どんな部署なんです?」
宗介「すみません。自分も詳しくは…ただ、噂では日本版のMI6やCIAのパラミリと聞いたことがあります…」
航英「的を得た言い方をすると…日本版の
パラミリだな。」
パラミリ…Paramilitary Operation Officer
CIA(中央情報局)内に編成される特殊部隊のようなものでメンバーは元軍人によって編成された工作特殊部隊になり、世界でも最も優れた極秘ミッションを行う専門部隊になる。
それに似た部隊が日本にもあったなんて…
梨花「物騒ですね…」
航英「情報とは危険で物騒さ」
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〜三沢基地 114飛行隊隊舎〜
理樹「これが今回の訓練報告です。」
豊「機器系統に異常はありませんでした。」
祐介「うん、良いんじゃ無い?」
玄武「先輩、報告書の確認お願いします。」
葉留佳「システム表もお願いしますネ」
樹「ほいほい」
今日の訓練メニューはスクランブル発進からの2対1でのスクランブル対応訓練だった。
僕と玄武がスクランブル発進した要撃機で副隊長が国籍不明機役だ。
理樹「訓練とは関係無いですが…最近増えてますよねスクランブル」
祐介「そうだね。特にお隣の訪問回数が増えてきてるな。つい先日も入ってきてたし…」
豊「何が目的なんでしょ?」
樹「(領土奪還!)とかやないかな?」
玄武「んな、まさか」
葉留佳「でもでもあり得ない話では無いですよネ〜 現に竹島や尖閣だって…」
樹「ああ言うんは言うたもん勝ちやけんな…言われたら言われた分だけこっちは損するんよ」
理樹「世知辛い世の中ですね…」
祐介「ま、世の中そんなもんさ」
樹「よっしゃ、これでブリーフィングを終わるけど…質問確認等は?」
全員「無し!」
樹「了解、以上!解散ッ」ビシッ
全員「お疲れ様でしたッ」ビシッ
副隊長の号令で姿勢を正し敬礼する。
豊「あ〜疲れた。帰るべ帰るべ」
理樹「豊、まだ報告書出来てないでしょ…」
豊「うげッ…忘れてた」
葉留佳「やはは…相変わらずですネ」
祐介「早くしないと千景さんにどやされるぜ? それじゃお先に失礼します。」パタン
樹「あいよ〜」
全員が部屋から出ていったのを確認し、俺は副隊長に声をかけた。
玄武「全員行きましたね。先輩」
樹「やな。んで女将から何か指示はあったか?作戦を早めるとか」
玄武「特には無いですね。ただ、風の噂でNSAが動き出したとか…あと、青森県警のハムも動いています。」
樹「アメリカと公安か…他には?」
玄武「イギリスのMI6の諜報員の入国を外務省が確認しています。」
樹「外務省となると沙耶ちゃんも外務省の人間やったな?どこの部署か分かるか?」
玄武「部下に探らせた所…外事部特別調査室」
樹「SgSか…また、おもろい所が噛んどるな」
玄武「外務省の中でも国外情報を収集するのに長けた部署ですからね。」
樹「流石は元 CIAやな。」
玄武「元P.O.Oでしたっけ?沙耶ちゃん」
樹「現場で一番会いたく無い連中やったなぁ…特殊部隊上がりばっかりやけん。」
玄武「そうですね…」
樹「幸いなことに二木本家が動き回ってないんが救いやな。佳奈多も出産控えてるしストレスはかけとう無いな…」
玄武「ええ、親父になれますよ先輩」
樹「旦那として当たり前のことをしとるだけやで…そんな大層な事はしてない。」
玄武「僕が女なら絶対…ぐふッ」
樹「それ以上は言わさん…俺はゲイやない」
玄武「酷いじゃ無いですか、まるで僕がゲイみたいじゃ無いですかッ」
樹「温泉旅行の時の会話は忘れんで」
玄武「あ…あれはノリでして…」
樹「ま、ええわ。奴らは俺らの手で絶対に仕留める。味方やろうが敵やろうが容赦はせん。小田切 智樹の墓前にそう誓った。」
玄武「そうですね…」
俺は昔のことを思い出していた…
先輩が小田切2尉を事故で失ったあの当時…あの人の墓前で宣誓していたのを俺は忘れない
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〜回想〜
ー 某記念公園(墓地)ー
樹「小田切 智樹…」
玄武「小田切さんは〔先輩がいたお陰でファントムライダーになることが出来た…〕と言ってました。先輩が居たから空を好きになれたと…」
樹「そうか…彼は俺以上に空と"ファントム"を愛していたんやな…」
玄武「ええ」
樹「ならば宣誓しよう。私、熊岡 樹は必ず彼の仇を撃つと」ビシッ
玄武「……。」ビシッ
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あの当時、俺はまだ航空学生でT-4を使って訓練していた。しかし、先輩のスカウトにより秘密裏にDIHに所属していた。階級は空曹長であったがDIH内では3等空尉扱いだった。
玄武「必ず仇を撃ってやりますよ…小田切さんは僕にとっても大切な恩師なので。」
樹「首突っ込み過ぎて真っ先に死ぬなや?」
玄武「分かってますよ!先輩こそ佳奈多さん達遺して先に逝かないで下さいよ?」
樹「当たり前や!俺が先に死んだらお前が俺の嫁を盗りかねんからな死んでも見張り続けたる。」
玄武「うわ、酷ぇ!間違ってないですがw」
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〜病室〜
コンコン
佳奈多「は〜い あ、みゆき。しおりちゃんも」
ガラガラガラ
みゆき「ただいま〜」
しおり「こんにちは〜」
佳奈多「いらっしゃい。今、お茶淹れるわね」
みゆき「いいよ、自分でやるから休んでて!」
しおり「そうですよ!佳奈さんは休んでてくださいよ〜!」
佳奈多「そう?ありがとう。」
みゆき「しおりん〜」
しおり「ん?なぁに?」
みゆき「お花ってこれで良いかな?」
しおり「良いんじゃない?綺麗に生けてる」
みゆき「ふふふ」
佳奈多「2人は仲良しね〜 しおりちゃんいつもみゆきと仲良くしてくれてありがとうね」
しおり「いえいえ、良いんですよ!中学生になって初めて出来た親友ですから!」
佳奈多「2人とも学校は楽しい?」
みゆき「うん!」
しおり「はい!」
佳奈多「そう…安心したわ。」
みゆき「お父さんは今日も残業かな?」
佳奈多「そうね。最近は忙しいみたい。」
みゆき「そっか…」
しおり「寂しい?」
みゆき「うん…少しだけね」
しおり「みゆきちのお父さんって何の仕事してるの?」
みゆき「私のお父さんは戦闘機のパイロット」
しおり「ほへぇ〜カッコいいね。て、事は三沢基地に勤めてるの?」
みゆき「そうだよ〜 しおりんのお父さんは何の仕事してる人なの?」
しおり「あたしのお父さんはね〜」
しおりんの親御さんの職業は意外なものだった…
続く…
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