音速のドラ猫22

 


〜防衛省 陸幕2部〜

カタカタカタカタカタカタ

航英「ふぅ…最近はやけに大人しいな。」

課長はパソコンを打つ手を止め、徐に呟いた。

真人「そうですね。私の部下を使って動向を探ってますが…目立った動きはしていません。」 

航英「ここ最近で奴らの目立つ動きはあるか?」

真人「そうですね…あ」ペラペラ

航英「見せてくれ。」

真人「はい。一昨日付の現地にいる私の部下からの報告書です。」

航英「ふむ…」

俺は資料を受け取り見入った。

そこには…

中国軍情報局外事3課〔闇の執行部〕が二木家の主である 二木 源蔵氏と数回に渡り接触したと記されていた。

航英「二木 源蔵…ついにこの男も動き出したか…なかなか厄介だな。」

真人「二木 源蔵とはどのような人物なんですか?重松課長」

航英「君は10年前に高知沖で自衛隊機が墜落事故を起こした事を知っているかね?」

真人「はッ朧げではありますが…当時はニュースで取り上げられていたと記憶してます。」

航英「世間体では墜落事故として片付けられたが真実は違う…どうやらこの男が噛んでいたようでね。あの当時から我々は二木をマークしていた。そして、魚見くん君たち公安も同じ…」

チヒロ「そうですね。警視庁公安部でもこの男をマークしてましたね。ただ、二木家は名だたる名士の家でして…警察でも下手な動きは…」

真人「そうだったのか…」

航英「話を戻すが、二木と闇の執行部がどんな取引をしているのか…もう少し情報が欲しいな。潜入班を編成し内偵を行おう。」

真人「それでは…自分が、隠密作戦突入作戦なら前に居た部隊でもやってました。」

航英「待て待て、そう話を急くな。確かに突入は行うがまずは潜入捜査が先だ。」

真人「すみません…つい」

チヒロ「私の部下に潜入にうってつけの人物がいます。」

航英「ほう、警察の人間かね?」

チヒロ「はい、警察時代の後輩です。潜入捜査は彼女の得意分野と言っても過言では無いと思います。」スッ

彼女が渡してきた資料に載っていたのは…

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警察庁 警備部警備企画課 6係

警部補 古手 梨花 (26)

・経歴

興宮市立雛見沢中学分校

聖ルチーア女学院高等部

国立下北沢大学 法学部

令和○年 警視庁 入庁

警視庁 池袋署 捜査一課(s1s)

警視庁 公安部 第3係 (通称チヨダ)

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航英「優秀だな。元チヨダか…」

チヒロ「はい、潜入捜査及び偽装工作なら彼女に勝る人間は居ませんでした。」

真人「すげぇな…」

航英「よし、彼女へコンタクトを頼む。」

チヒロ「分かりました。」

航英「だが、彼女1人で潜入捜査は危険だウチからも護衛を出そう。」

真人「それでしたら、こちらにもうってつけの人間が居ます。相良2曹」

相良と呼ばれた男がこちらへ来る。
彼の名は…

相良 宗介(さがら そうすけ)2等陸曹
元某国傭兵部隊(ミスリル)に出身で潜入捜査、偽装工作、爆破、射撃に長けており日本語のみならず英語、中国語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語を操れる。
陸幕2部へ来る以前は俺と同じ"S"に所属
傭兵生活が長かった為か口調が軍人そのものだ

宗介「はッ、お呼びでしょうかッ」

真人「君に任務を与える。彼女を護衛しろ」

宗介「はッ!了解しましたッ」ビシッ

航英「よろしく頼むよ。」

宗介「了解ッ !」

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〜三沢第一小学校〜

校長「卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。君たちが春から中学生になる事を校長として嬉しく思います。」

司会「卒業生起立ッ」
 
ダッ

卒業生全員が起立する。列の中間に私達の娘であるみゆきの姿を見つけた。

卒業生「ありがとうございました!」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

拍手喝采の中卒、業生が退場していく。

佳奈多「みゆき、目が腫れてるわね。」

樹「昨日、夜に泣いてたんちゃうかな?」

佳奈多「樹くんだって目が赤いわよ?」

樹「あれ?あれれれ?気のせいやろ」

葉留佳「涙の跡がありますヨ〜」

大翔「本当だ〜」

樹「み、見るなよ〜」

卒業式後…
 

みゆき「離れ離れになるけど、頑張ってね」

女の子「うん!ありがとう、みゆきッ」

みゆきとその友達の女の子が抱擁していた。
まるで今生の別れのような光景だ。
抱擁が終わりこちらへ歩いてくる…

葉留佳「みゆきちゃ〜ん」

みゆき「今行く〜」

佳奈多「こっちよ」

樹「ほれ、ここに入って入った」

大翔「僕、みゆきお姉ちゃんの隣!」

葉留佳「それじゃ すみませんがお願いします」

最後に校門の前に並び記念写真を撮る。

教員「分かりました。3.2.1で行きますよ〜」

全員「は〜い」

教員「3.2.1.はい、チーズ…」

パシャ

教員「もう一枚、はいチーズ」 
 
パシャ

葉留佳「ありがとうございました〜」

教員「いえいえ、みゆきちゃん卒業おめでとう。困ったことがあればいつでも先生のところに来なさいね?」

みゆき「はい!お世話になりました!先生!」

最後に6年間お世話になった恩師に一礼する我が娘を見て本当に成長したなと私は思った。

葉留佳「綺麗に撮れてますネ」

樹「お、俺も老けたなぁ…」

佳奈多「そんな事ないわよ。」

大翔「おじさんの制服カッコいい〜」

みゆき「お父さん、お母さん、葉留佳お姉ちゃん、ヒロくん忙しいのに今日は来てくれて、
ありがとう!」

樹「娘の卒業式やのに親が来るんは当然やで」

佳奈多「そうよ。仕事よりもみゆきが大事よ」

葉留佳「私はサボりたかっただけですけどネ」

そして…これが最後の家族写真になるとは誰が考えただろうか…

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〜官舎〜

ピローン

沙耶「今日も来てるわね。」

朱音さんに連絡を取ってから数日…仕事用の私のパソコンに定期的にメールが送られてくるようになった。

沙紀「ママ、お仕事?」  

沙耶「ええ、ごめんね。構ってあげれなくて」

沙紀「大丈夫だよ!里沙と遊んでるね!」 

沙耶「ありがとう…沙紀」

カチッ

添付されていたファイルを開くと中にはエクセル方式で氏名と顔写真が書かれていた。

沙耶「ふ〜ん、なるほど…外務省でも奴らの日本への入国を確認したのね。それにしても凄い数の人間が入ってるわね…奴らの狙いはなんなのかしら。ん?」

画面をスクロールしていると…1人の気になる人物の名前を見つけた。

沙耶「森…篤…」

聞き覚えのなる名前、私はすぐさま外務省専用のコンピュータにアクセスしてその名前を調べた。すると…

沙耶「やっぱり…この男が絡んでいたのね。となると警察もこの事に気付いてる筈…」

pririri

スマホが鳴った。画面には〔朱音〕の表示が。

沙耶「朱音さんね。はい、直枝です。」

朱音〔今、電話は大丈夫だったかしら?〕

沙耶「ええ、大丈夫です。早速ファイルを転送して頂きありがとうございます。」

朱音〔礼なんて良いのよ。それよりも面白いものを見つけたんじゃ無いのかしら?〕
 
沙耶「やはり、朱音さんもお気づきでしたか」

朱音〔偽名と偽の国籍を使って入国するかと思えば堂々と本名で入国してるもの…そりゃ気づかない方がおかしいわ。〕

恐らく森の事を指しているのだろう。

沙耶「森 篤…本名チャグ・テヨン…」

朱音〔中国軍情報局外事部 部長 日本国内では中禅産業 代表取締役になってるわね。ま、ダミーカンパニーって事は把握済みだけど。〕

沙耶「二木家と〔闇の執行部〕を影から操っている曲者ですね…」

朱音〔我々、外務省としてはコイツらを野放しにはさせておけないわね。〕

沙耶「私も同感です…ただ、こうも堂々と動かれると警察にも勘付かれてるのでは?」

朱音〔そうね。最近だと警視庁のハム達が二木本家でやけに慌ただしく動いてるわね。〕

沙耶「やはり公安が…」

朱音〔グズグズはしてらんないわね。〕

沙耶「そうですね…」

私はもう一度、パソコンの画面に映る森の顔を見た。忘れもしない…諜報員をやっていた頃から追っていた男…




         続く…



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