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「片山健の油彩画展 濃密な記憶と懐かしい匂い」鑑賞

“絵本の読み聞かせあるある”のお話。

気に入った絵本を何回も何回も催促され。
これでもかこれでもかと読み倒してもまだまだ子どもは寝ず、挙げ句の果てに親が先に睡魔に襲われはっ!と目覚めれば子どもはいつのまにやら眠りについていた、ということが何度もありました。

子育て真っ最中の絵本の読み聞かせ時期。

今では懐かしい想い出です。
幼い頃の我が子が何度も読んで~!とせがんでいた絵本が片山健さん作・絵の「おやすみなさいコッコさん」です。

この子がコッコさん

ご存知の方もいらっしゃると思いますがこの絵本、なかなか眠ってくれないコッコさんが最後に眠るまでのお話なので、夜の寝かしつけにはうってつけの内容の絵本なのであります。
そしてこのコッコさん、小さい女の子のはずなのに大人の女性のような、不思議なエロティックさがあります。

このコッコさんを生んだ片山健さんの油彩画展が吉祥寺美術館で催されていると聞き先日行ってまいりました。

ビルの前です

コッコさんをモチーフとした油彩画は数点のみでしたが片山さんの貴重な作品を計98点も鑑賞することが出来てかなり濃厚な時間を過ごせました。

会場内は撮影禁止です。心に刻みつけるため目に焼き付けるようにじっくりと味わうように堪能しました。
絵本作家という肩書きをお持ちの片山さんですが、絵のタッチはすべて、コッコさん同様ノスタルジーを感じさせるうえに非常に官能的な趣がありました。今回お子さんと一緒に観に行くタイプの展覧会では決してありません。実際鑑賞されているのは大人の方ばかり。

各々作品のテーマは非常にユニークで「ざりがにとり」というタイトルの絵は人がザリガニを背負っていたり、「フンコロガシ」という絵ではいわゆるその名を付けられた虫のことではなく人が四つん這いでフンとおぼしき大きな球体を足で転がして運んでいたり。

中には男女の睦みごととおぼしき描写や身の毛もよだつホラーチックな描写のある作品もありました。

「線をひく人」は真っ直ぐだったり丸だったり棒や自分の足を使って地面に線を描く人を描いています。どの人も腰を曲げて地面を垂直に見ながら線を懸命にひく作品はどこかユーモラスでその先に何があるのか想像を掻き立てられます。

私が惹かれたのが「鮫の影で眠る」という展示会終盤に掲示された作品です。眠っている人の上に覆い被さるように鮫が登場する絵が何点かあったのですが、その鮫のエラの描写が立体的でリアルに感じられ、淡い水色の色彩が非常に綺麗で好みでした。

片山さんの作品はどれもシュールでグロテスクでそしてエロティック。
久しぶりの吉祥寺でキョロキョロしつつ不思議かつ大人な油彩画を目一杯鑑賞することが出来て満足感を感じながら帰路に着きました。



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