〔台本〕心象的ディセンブランス

まだ完成してないよ!!台本読みで確認してから正式公開するね!!

登場人物

鴼:数年後のバレットの相棒。紫ヶ崎の娘。この台本では一セリフのみ。おとなしくてキッパリとした印象を与える。
*〔心理的アノミー〕

バレット:銃の天才。紫ヶ崎の弟子。鴼の相棒。この台本では幼少期と大きくなってからの姿が描かれます。粗雑な印象。
*〔赤部屋〕〔心理的アノミー〕

夢花:バレットの姉弟子。日本語が流暢なチャイナガール。
*〔摩天楼〕

紫ヶ崎:中年の男性。バレットの話し方はこいつの遺伝です。だらぁ、っと粗雑な話し方。

ダフネ:幼女趣味の気持ち悪い青年。〔2000の時を堕ちる〕よりも前の話なので、幾分若いです。〔赤部屋〕のバレットと同じくらいの歳。
*〔2000の時を堕ちる〕

カサンドラ:所属組織で社内政治バチバチだった姐さん。

unknown:ボス

人割例(5人 男3 女2)

男性1:ダフネ、unknown
男性2:バレット
男性3:紫ヶ崎
女性1:鴼、カサンドラ
女性2:夢花

本編

鴼:ちょ…あぶなっ…

SE:車の扉を閉める音

鴼:『…父さんの時もそう?…私の父さんを殺す時も、辛かった?』

バレット:…いまさら、



0:場転
0:11年前

紫ヶ崎:木村隼人。
    随分平凡な名前ときた。

バレット:…

紫ヶ崎:(資料をめくりながら)名前に見合わず数奇な人生なこって、かぁーいそうに。

バレット:かわいそう…

紫ヶ崎:にしてもひでぇ親だなぁ?
    ま、俺も人のことなんて言えたもんじゃねぇがよォ。

バレット:…

夢花:紫ヶ崎。ここでいいか?

紫ヶ崎:おー、構わねぇ。
    お前、自分がなんで生きてるかわかるか?

バレット:(じっと目を見た後、顔を伏せる)さぁ。

紫ヶ崎:ガキってのはな、人殺しても罪に問われねぇんだ。
    酷い境遇のガキなら尚更。警察の世話になったとしても、そりゃ文字通り”世話になる"だけなんだな。顔も名前も報道されねぇ、トライアンドエラーできんだよ。

バレット:…とらいあんど、えらー、…。

紫ヶ崎:わかっか?人材としての価値がたケェんだ。
    よかったなァ、”生きてる状態”で価値があって。

0:沈黙

紫ヶ崎:あー…。
    残念だが、俺はコミュニケーションが苦手だ。ガキ相手は特に。

バレット:…しらねーよ。

0:沈黙が続く

紫ヶ崎:俺のことあんま好きじゃねぇな?

バレット:まぁ。

紫ヶ崎:そして俺ぁガキのそんなとこが嫌いだ。
    …おい、夢花。

夢花:なんだ。

紫ヶ崎:"見学”だ。お前もやったろ。

夢花:いきなりか?大丈夫か?

紫ヶ崎:あー
    おい、ガキ。見たことあるか?

バレット:なにを…

夢花:死んだ人間を

沈黙

夢花:何黙ってんだ、早く答えろ

紫ヶ崎:夢花

夢花:なんだ

紫ヶ崎:お前が圧かけんな。
新入りに必要なのは序列の提示…俺ァ、お前とこいつの間に交流を求めちゃいねぇ。
むしろ、否定だ。お前らは俺の生徒、俺の前では対等なんだよ先輩風吹かすんじゃねぇ。
んで、どうだ、見たことあるか

パレット:ない

紫ヶ崎:…そうか。
かといって、やることァ変えねぇ。新人教育なんぞ…
ただ、吐く可能性が高けぇってことだけ覚えとけ。吐いたらそこのタッパあるやつが片付ける。

夢花:(渋い顔)

紫ヶ崎:って言ったらゲロ飲み込んだアホがいたが、ゲロは飲むもんじゃねぇ、吐くもんだ。気分悪くなったら吐け。
なぜそれを勧めるか。なぜだ?夢花

夢花:そいつはすぐ死んだ。ゲロを飲むと死ぬ。迷惑をかけないようにするオヒトヨシは、吐瀉物を飲み込む奴は死ぬんだ。

紫ヶ崎:なんで生まれが中国なのに吐瀉物なんて単語知ってんだ?すげーな。感心するよ。

夢花:感謝する。ゲロで褒められたのは初めてだ。

紫ヶ崎:だが絶妙に誤りだ。ゲロを飲むと単純に気持ち悪りぃし窒息するかもしれねぇ。故に、ゲロは飲むな。

0 :場転、無機質なコンクリートとアルミ、廊下
SE :足音

ダフネ:紫ヶ崎先輩じゃないですか〜

紫ヶ崎:よォ。

ダフネ:広州から帰ってたんですね〜

紫ヶ崎:んー、帰ってきたっつーか、かえってこざるをっつーか

ダフネ:せーんぱい

0 :手を差し出すダフネ

紫ヶ崎:は?

ダフネ:お土産♡

紫ヶ崎:アホか。ねェよ、んなもん。

ダフネ:先輩の威厳って土産の豪華さで示すもんじゃないんです?

紫ヶ崎:初耳だわ。
    んにしてもよダフネ。なんでボスはこうも俺に新人を任せんのかねェ?

ダフネ:夢花とかいう成功例ができたからじゃ?

紫ヶ崎:俺がアイツに仕込んだことなんて何一つないんだがなァ。

ダフネ:またまた

紫ヶ崎:俺ぁそこらへん指導者にしては珍しくわきまえてんだよ。
    優秀な奴はァ、”育てた”んじゃねーんだよなぁ、勝手に育つんだ。

ダフネ:ま、”いい目”をしてるやつってのはいますよねぇ。でも最近はなかなか活きの良いやつって…

紫ヶ崎:殺しもだが、アイツは人を騙すのが上手い。自分が他者からどう見られてるか、俯瞰力、観察力…あれは天性のもんだ。お前もその類だな。

ダフネ:ははぁ〜♡照れるな。後入りと比べられるのは気分悪い、です、が

紫ヶ崎:日本語出来ねぇフリしてる時のアイツ、だいぶ腹立つぞ。

ダフネ:へぇ。まぁたしかに。夢花は元の性格が明るいのか暗いのかよくわからない。頭が悪そうに見えてキレ者。仲が良さそうに見えて険悪、疎遠に見えて親密。そんな感じの人間かんけ〜い…

紫ヶ崎:一方で、銃はからきしだな。女はやっぱ向いてねぇ。

ダフネ:おぉっと男女差別ですかぁ?

紫ヶ崎:ちげーよ。単純な身体の差だ。スナイパーだったらたまにすげーのがいんだが…空間認知と動体視力、筋力、体力、全部求められたらきちぃんだろーな。俺の娘と一緒だ。

ダフネ:紫ヶ崎先輩の娘さん、かわいいですよねぇ。目が似てます。いい目をしてますし。

紫ヶ崎:あ?

ダフネ:おっと

紫ヶ崎:…んで知ってんだよ。幼女趣味のやつに娘が把握されてんのはだいぶ気分悪りぃぞ。

ダフネ:幼女趣味?誰がそんなこと。

紫ヶ崎:誰が見てもそうだろ。

0:タバコをくわえる紫ヶ崎

紫ヶ崎:お、そうだ。あとよ、多分お前の仕事が増える。悪いな。

ダフネ:げ、なぜ?

紫ヶ崎:見てわかんねぇか?俺ァ、もう銃撃てねーんだわ。

0 :人差し指と中指のない手を差し出す

ダフネ:ありゃ、指が…

紫ヶ崎:向こうで、広東人にやられた。

ダフネ:へぇ。

0:じっと見るダフネ

ダフネ:(態とらしく)拷問が得意な俺の知見から察するに、
    広東人というのは随分腕がいいらしい。綺麗な断面ですね。

0:腕を下ろす紫ヶ崎

ダフネ:概ね、チャイニーズマフィアに手術を強制された可哀想な医者の仕業ってとこですか?

紫ヶ崎:まぁ運が良かったわな。交渉の手札になるって、命まではとられなんだ。

ダフネ:はは、にしても、とんだ土産ですねぇ。ボスも浮かばれない。

紫ヶ崎:ははは…。いやなぁ…

ダフネ:?

紫ヶ崎:大金を払って買い戻したはずの犬に牙がねぇってなった時の、ボスの顔はなァ…

ダフネ:ははっ、想像に容易い。

紫ヶ崎:死んだほうがマシだったかもなァ…

0 :場転

夢花:兄ちゃん、はやく言うてもらわナイと、ウチの上司と指の数オロソイになる!
目の前のシガイが仲間かどーかだけおしえタラ良いなのに、何をちゅーちょスルね?
ま、さ、か、ヒミツを守っタラ、助かると思っている?
そんなわけないネ〜!お前さんらのとこはウチもよー知ってるヨ。
何も話してませんなンて…
”けじめ”が大好きな人たちダカラ、ここで話した方が、ラクだと思うよ?
それに、鞭だけで飴がナイなんて、一言も言ってないネ。
ショージキ者はウチらだぁ〜い好きや…
言ってくれたら、それなりのゴホウビある!
話さナイだったら〜…、
そもそも、帰れるかな?

0 :ナイフを喉に当てる夢花
0 :長めの間

夢花:ん、おおきに。知ってたけど。

0:笑顔から無表情に切り替わる夢花。
0:噴き出す血

夢花:仲間がすでにゲロってる。

0 :バレットに向き直る夢花

夢花:おいチビ。おまえ、さっきの2人見てたろ、次お前がやれ。実践だ。

バレット:実践…?

夢花:好きなの選べ。

バレット:…

夢花:ピストルでもショットガンでもカービンでもなんでもいい。10分以内にくる。それまでにやれ。

バレット:やれ…

夢花:通過儀礼だ。できなきゃ捌かれて死ぬ。若い臓器は常に品不足だ。
私たちは合理的経済人であり、功利主義。徹底的な利益追求。こいつらの死は組織にとっての利益だ。必ず殺れ。

SE:重い扉が閉まる音

紫ヶ崎:『おい、ガキ。見たことあるか?』

バレット:死体、を、みたこと…

バレット:『ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!!父さんがおかしいのは俺のせい、母さんのせいじゃない、俺の、俺のせいだ、あ、ああああ…』

バレット:(呼吸が整わない)

SE:秒針の音→扉が開く音

夢花:10分経った…

0:顔をぐちゃぐちゃにされた死体

夢花:ぞ…

(叫び芝居ができる人は是非下も読んでね。無理な人は読まないでね。)

バレット:ぁあああ!しねっ!しねっ!しねっ!見るなぁ、見るなぁあー!!!!

0 :場転

紫ヶ崎:どーだったよ

夢花:あれはダメだ。使えない。
使えたとしても暗殺は無理だ。それに、戦地で傭兵やらせたとしてもあの調子じゃ発狂だ。

紫ヶ崎:あれか、めちゃくちゃにするタイプか。

夢花:あぁ。しかもパニックで自傷する。

紫ヶ崎:ほーん、じゃ、やっぱりアイツは自分で親殺してんだろーな。

夢花:なんだって?

紫ヶ崎:陀(トゥオ)向かった時にゃー、滅多刺しの父親の前で痣たくさんつけて座ってたらしい。母親は錯乱。

夢花:なんでそれを先に言わなかった

紫ヶ崎:言ったらお前同情するだろ

夢花:私はプロだ。同情?

紫ヶ崎:俺はな、これでも結構、人を見る目がある。
お前が俺に対してはそれなりに心開いてんのもわかってんだ。
ヘラヘラしてない時のお前は、結構人間だろ。

夢花:…

紫ヶ崎:似たような生い立ちのお前が、同情しねぇわけねぇよ。
お前だけじゃない。此処は子犬にリード繋いで逃げられねぇってことを覚えさせて、死ぬまでくくる。似たような生い立ちのやつがここにゃ沢山いる。
俺がやたら教育係なのも、それが理由だろうよ。そういったしがらみがねぇからな。

夢花:アイツはどうなる。

紫ヶ崎:さぁてねぇ。お前みたいに特別な才能でも、ありゃいいんだがな。

0 :場転
SE :銃声

紫ヶ崎:こりゃたまげた。すげぇな、百発百中だ。

夢花:…

紫ヶ崎:夢花〜!ヤベェぞ、一番弟子の座、この調子だと奪われんな!ははは

夢花:かまわない、興味ないからな。

紫ヶ崎:薄情なやつだな〜。にしても、サイティング、グリッピング、トリガーコントロール、全部いい。

バレット:(まじまじと銃を見つめる)

紫ヶ崎:なにより、運動神経と視力。努力じゃどうにもなんねぇ。

夢花:実戦でどうなるかが問題じゃないのか?

紫ヶ崎:意地のわりぃ姉弟子だなぁ。褒めてやれよォ。
ま、事実ではあるけどな。
近々実戦の機会も来るだろ。体鍛えとけ。

バレット:…あぁ

紫ヶ崎:銃の練習は今後俺が見る。
    コードネームはァ…そうだなぁ。

バレット:コードネーム

紫ヶ崎:仕事する時の名前だな。紫ヶ崎って名付けてやってもいいとこだが…

バレット:ハヤト…

夢花:……本名は勧めない。反対にそれ以外ならなんでもいい。
   好きなものとかねェのか?

バレット:好きなもの、は、ハンバーグ、とか。

0:しばしの間ののち爆笑する紫ヶ崎と呆れ顔の夢花

夢花:(ため息)

紫ヶ崎:ははははは!!!お前コードネームがハンバーグはねぇだろぉ!
    ハンドルネームじゃねぇんだ、変えがきかねぇ。慎重に決めろ。

バレット:…わからない。

紫ヶ崎:そいじゃぁ、期待を込めてバレットとかにしとくか?

バレット:バレット…?

夢花:バレットってなんだ?

紫ヶ崎:お。お前英語は苦手か〜?弾丸だよ弾丸。

夢花:それをいうならbulletだ。せいぜいブレット、バレットじゃない。

紫ヶ崎:いーんだよォ煩えな。それにbulletだと絶対被る、バレットにしとけ、わざと間違えとくんだよ。

夢花:知らなかっただけだな

紫ヶ崎:じゃかしぃわ。問題はお前ェだよ。どうだ、バレット。

バレット:なんでも…いい。

紫ヶ崎:そうか、じゃ、バレットだ。いつか俺の弾丸になってくれや。はは!

SE:扉が開く音

unknown:随分と賑やかだな。

紫ヶ崎:お、どうも。ご無沙汰してます。

unknown:ん。夢花、顔あげて。

紫ヶ崎:何か御用ですか。

unknown:なに、用がなかったらきちゃダメ?

紫ヶ崎:まさか。

unknown:新入りの顔を拝もうと思ってね

0:バレットに手を伸ばす

バレット:っ!

0:後退りする

unknown:おや、

unknown:頭を撫でようとしたんだけどな

バレット:…

unknown:怖かったか

0:バレットの頭を撫でる

バレット:…

unknown:夢花も撫でようか

夢花:やめてほしい

unknown:正直でよろしい
      で、
unknown:この子は使えそう?

紫ヶ崎:あ、あー、まぁ

unknown:どうなのかな

紫ヶ崎:ま、センスはありますよ。

0:的に目を見やって

unknown:そんな感じがするね

unknown:お初はまだ?

紫ヶ崎:まだです

unknown:そうか、じゃあ

夢花:いや

unknown:いや、なぁに?

夢花:早いです。

unknown:そう…。若手への成長環境は大事だよね。紫ヶ崎。

紫ヶ崎:そうですね。

unknown:でも若手に裁量権を与えすぎるのも良くないよね。

紫ヶ崎:そうですね。

unknown:じゃあ仕事をお願いしようかな。
      トロイの王女をミュケーナイに連れて行こう。

0:場転

夢花:記念すべき一回めだ。

紫ヶ崎:おすすめは、自分はこの仕事向いてるって思い込むことだな。
映画のダークヒーローか何かだと思え。体が震えるなら、のけぞって大袈裟に動け。
声が震えるならデケェ声出して喚け。
つらけりゃ笑え。
思い込みの力はすげぇ。楽しい仕事だぞ。

バレット:楽しい…。

紫ヶ崎:ただ弾が的にあたんのが面白いと思えばいい。ナイフを肉に刺す感触もねぇ、楽だ。死が遠い。

バレット:…っ

0:殺人現場を思い出し、喉が締まるバレット

紫ヶ崎:罪悪感を感じるなら、いい教えをやるよ。
    俺の弟子共通の教えだ。

0:目で促す紫ヶ崎

夢花:「首切り役人は責任を負わない。死刑の責任を負うのは裁判官だ。罪を背負うのは依頼者だ。私たちは、執行人にすぎない。」

紫ヶ崎:そうだ。特にお前なんか、成り行きだろ。殺したくて殺したわけでもない。

バレット:や、俺は…

夢花:自分の意思で殺したと思ってるのか?

バレット:俺は…殺そうと思った。殴られた時、殺して…
刺した時、まずいと思った。親父に怒られると思った。
ずっと、親父は怒ってる目をしてた。俺を見てた。親父の顔を、刺しまくった。刺そうと思って刺した。

夢花:お前だけじゃない。人を殺した時、多くの殺人犯はパニックから死体を必要以上に滅多刺しにする。正常だ。

バレット:正常…

夢花:正しさなんぞ環境によって変わる。ここでは殺しに罪悪感を抱かないことが正しいことになる。

バレット:正しいか?

夢花:正しい

バレット:殺すのが?

夢花:正しい

バレット:俺はそうは思わない

夢花:正しい!
死にたいならそう思っとけばいいだろ。
私たちはそんな贅沢な考え方してられない。気狂いにならないと気が狂う。

紫ヶ崎:落ち着け。夢花、お前以外と繊細だなぁ。自己紹介か?

夢花:うるさい。

紫ヶ崎:似たもの同士だなァ。

夢花:は?

紫ヶ崎:そんな優しくてお揃いの夢花先輩と今回は一緒だ。安心だな。ま、死んだらドンマイだ。才能…いや、運がなかったとしか言いようがねぇ。

夢花:裏切り者を殺しに行くだけだ。警察にも話を通してある。後始末もなんもない、初めてにしては丁度いい仕事だ。

紫ヶ崎:だそうだ。頼もしいなァ。縁日で射的やりに行くぐらいの感覚でいいんだよ。

バレット:縁日なんて行ったことねぇ。

夢花:…

バレット:や、母ちゃんと、一回行ったな。

紫ヶ崎:おー、美しい思い出なこって

バレット:うん。夕飯に好きなもの買えって。焼きそば買ったな。

紫ヶ崎:おーーーーー…そりゃ、美しいな。

夢花:そうか?

紫ヶ崎:…さァ

沈黙

SE:扉の閉まる音

0:場転
0:カサンドラの部屋

夢花:久しぶりだなカサンドラ。元気にしてたか。

カサンドラ:弁明の機会もなしなのかい。

夢花:ない。裏切り者の言葉なんぞ信用に値しない、ボスからの言伝だ。

カサンドラ:お前たち、騙されてるよ。

夢花:興味ないな

カサンドラ:早いとこ見切りをつけた方が…

夢花:いったろ、興味ない。騙されてようがなんだろうがなんだっていい。死にそうになったらその時考える。政治は嫌いだ。正しい奴なんていないんだから。今までもそうやって生きてきた。

カサンドラ:犬だね

夢花:バウワウ、番犬だ。死んでくれ。

0:机を乗り越えようとする夢花

カサンドラ:ここは私の部屋だよ

0:机に電気が走る

夢花:つっ、電気、

カサンドラ:悲しいよ、気づいてくれると思ったのに

0:バレットを見る

カサンドラ:かわいそうに。判断力のない子供集めて、飼い慣らして、使い捨てる感じがさぁ

夢花:ふっ!よそ見か?

カサンドラ:…本当に理解できない、大人しく首輪に繋がれてあいつの元で吠えているのか!結局サツの言いなりじゃないか!

夢花:首輪を切って逃げたところで、生きていけるかわからない。それくらいなら、首輪に繋がれたまま犬小屋の中で死ぬ。

カサンドラ:はっ…臆病者。

夢花:うるさい

0:組み伏せる夢花

カサンドラ:君たち、全部仕組まれてるって考えたことないのかしら!!

夢花:はぁ?

カサンドラ:親を殺したのも親を殺すよう仕向けたのも、借金をさせたのも、バイヤーを絡ませたのも、全部、全部全部人材集めのためのカラクリだって、思わないわけ!?

夢花:…

カサンドラ:なんでお前らはそんな、組織の大人を信用してんだ?紫ヶ崎だって…

夢花:紫ヶ崎がなんだ

カサンドラ:紫ヶ崎だって!お前らの親ぶってるくせに上司の前だと聞こえないふりだろうが!

夢花:仕事だからな。合理的に割り切って保守的になる上司は賢い。ある意味尊敬する。

カサンドラ:利口すぎるな、君は
      紫ヶ崎が愛してるのは娘だけだよ

SE:銃声

バレット:。

カサンドラ:…

バレット:はは…はははは…

夢花:…遅い!

SE:追い銃声

バレット:はは、笑え、笑う、スーッ、ハーっ、あー、おもしろい、おもしろい、おもしろい、

夢花:お、おい

バレット:な、うまかったよな、ちゃんと、ちゃんと死んだよな、だ、だいじょ…オエッ

SE:追い銃声

バレット:見るな…うぜぇ…うぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇ!ウゼェんだよ!!!!

夢花:もういいやめろ

バレット:はは、はははははははは…

夢花:よせつってんだろうが!

バレット:うるせぇ!!

夢花:ガッ…!
   ハァ?ふざけんじゃねぇこのクソガキ!!

0:殴り返す

バレット:がはっ、、、いってぇ、、

夢花:なんなんだお前は!なんもしゃべんねぇと思ったらいきなり殴るし声はデケェし任務は遂行しねぇし腹かっさばいて袋詰めにしてやろうか!

SE:扉が開く音

紫ヶ崎:おーーー。合格だ。終わりだ。そこまでだ。

夢花:あぁくそっ!!!!!

紫ヶ崎:どうどう、落ち着け。姉弟喧嘩はこれから死ぬほどできるぞ。

夢花:…
バレット:…

紫ヶ崎:夢花…は後だな。どうだった、バレット。大丈夫そうか?

夢花:こいつは

紫ヶ崎:オメーに聞いてねぇよ。
    どうだ。できるか。コレ。

バレット:…あぁ。できる。

紫ヶ崎:そりゃよかった。そう報告しとくわァ。
    送ってってやる。あとは清掃員の仕事だ、散れ。

0:場転

紫ヶ崎:ずーいぶんなはっちゃけっぷりだったらしいじゃねぇか。大変だったな。

夢花:労を労わられたのは初めてだ。

紫ヶ崎:始末班がだいぶぼやいてた。ちゃんと指導しろってな。

夢花:指導?

紫ヶ崎:死体を見るに…全ての死体が、必ず急所に弾痕があると。にもかかわらずそれ以外は適当にぶちまけてる、一発で仕留められるんなら汚さねぇように指導しろ、だと。

夢花:それは、多分…

紫ヶ崎:…無理だろ。ありゃー急激な環境の変化についていけてねぇからこそのバグみてぇなもんだ。時間がかかる。

夢花:私は、あいつと一緒は、嫌だ。

紫ヶ崎:…初めてだな。お前が自分からメンバーに意見すんの。

夢花:…

紫ヶ崎:ま、考えとく。あいつはどのみちお前とじゃ無理だし、あいつ一人でも無理だ。俺が直接面倒見るしかねぇ。任務もこんなのより、日本語通じない奴ら相手のゲリラ戦とかの方が性に合ってる。殺し屋らしい殺しは、それこそ俺が死んだ後ぐらいでやっとどうかなってとこじゃねぇか?

夢花:紫ヶ崎、カサンドラが言っていた。この組織に見切りをつけるべきだと。

紫ヶ崎:…

夢花:騙されていると

紫ヶ崎:夢花ァ。

夢花:。

紫ヶ崎:医者へ行け。お前の任務でその面はヤベェ。治してもらえ。

夢花:…

紫ヶ崎:顔は大事だろ。

夢花:…あぁ。

紫ヶ崎:お大事にな

0:場転 数年後

バレット:ハッはー!!!!!!!俺の殺しのテーマはァ「爆★殺」ダァ!!死ねやァあああああああああああ!!!!!!!!!

紫ヶ崎:おおー、今日もすげぇな

バレット:楽しいなぁぁぁぁァァァァオイ!!!!!!

紫ヶ崎:…楽しい、ねぇ。
    バレット!やめろ、終わりだ。

バレット:百発百中ゥ!

紫ヶ崎:バレット(腕を掴む)

バレット:!

紫ヶ崎:終わりだ。

バレット:…わりぃ!聞こえなかった

紫ヶ崎:よくやった。だが弾薬は限られてる。使いすぎるな。

バレット:あー、、、しくった。でもヨォ、今日のは結構いい感じだったと思うぜェ?

紫ヶ崎:そうだな、昔に比べるとだいぶ、なんだ、その、戻ってくるのが早くなった。

バレット:拘束しろって言われてた奴ぁちゃんと脚だけ撃っといたしよ〜!
     遮蔽の使い方もうまかった!

紫ヶ崎:だが、一体何年かかるんだかなァ。

バレット:んだヨォ…ゆっくりでいいって言ったの紫ヶ崎だろォ!
  それに、紫ヶ崎のガキは紫ヶ崎のガキのくせに全ッ然だめなんだろぉ?
  そいつと比べりゃァ、すげーだろーが!

紫ヶ崎:まぁな。才能がなくてよかったと思うこともあるが。

バレット:はァ?

紫ヶ崎:や、別に。近いうちにお前が独り立ちできそうで、俺ぁ嬉しいよ。

バレット:独り…

紫ヶ崎:そ。大人になるんだよなぁ。お前らも。

バレット:…

紫ヶ崎:なぁバレット。俺はな、もう組織にとっての価値がなくなりつつあるんだよ。

バレット:あ?

紫ヶ崎:銃が撃てねぇガンマンに価値なんてないだろ

バレット:んだよ、キョーイクガカリじゃねーのか

紫ヶ崎:いやなぁ…、派閥ってのは、増えねぇ方がいいんだよ。

バレット:ほーん…?ハバツ…

紫ヶ崎:バレット

バレット:んだよ。何回も名前呼ぶな。

紫ヶ崎:金やるからさァ、俺んこと殺してくれや。

バレット:……………ハァ?

紫ヶ崎:頼むよ

バレット:ンでだよ。嫌だね。夢花とかに頼めよ。あいつの方が綺麗に死ねるぞ。

紫ヶ崎:よく覚えてるなぁ。

バレット:…

紫ヶ崎:あの頃に比べたらほんとによく喋るようになったな。嬉しいよ。記憶あるか?

バレット:あんまねぇけど…姉貴がいたのは覚えてるよ。

紫ヶ崎:そうか…
だけどな〜、俺は銃で死にてぇんだよ。銃に生き銃に死ぬ。ロマンじゃねぇか〜!それに、しらねぇおっさんに殺されるよりか自分の育てたガキに殺されてぇんだ。わかるだろ。

バレット:わかんねぇよ。

紫ヶ崎:ダメか?

バレット:他のやつに頼めよ

紫ヶ崎:つってもなァ。夢花となんてもう数年会ってねぇ。
    染まってんじゃねぇか?あいつ。部下の数とんでもねぇだろ。

バレット:…

紫ヶ崎:かぁ〜…バレットにも見捨てられてひとりぼっちかぁ、俺

バレット:それじゃァ

紫ヶ崎:お、

バレット:殺されそうになったら殺してやるよ。俺が。

紫ヶ崎:…おー。ありがてぇこった。

0:沈黙

紫ヶ崎:いやぁ〜!楽しみだわァ!

紫ヶ崎:じゃ、頼む

0:場転
0:車の往来

鴼:『…父さんの時もそう?私の父さんを殺す時も、辛かった?』

バレット:(独り言)…どーだろーな。 

0:スコン、と石を蹴るバレット

バレット:つれぇ時は笑えって言われてたかんな〜。
笑ってる時、つれぇのか、楽しいのか、腹立ってんのか…
よくわかんねーんだよなァ。

バレット:親父…

SE:車のクラクションが背景でなる

バレット:あー!気色わりぃ!

     俺ァ天才、
     俺のテーマは『爆★殺』、だ!

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