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アーノルド・ローベル『きりぎりすくん』

がまくんとかえるくんシリーズで有名な、アーノルド・ローベルさん。
彼の作品は、素敵な美しい絵と、おしつけがましくない自然さが魅力的です。
そして三木卓さんの訳も、的確かつ読みやすくて素晴らしい。
今回はがまくんとかえるくんシリーズではなく、『きりぎりすくん』をご紹介します。
こちらも、とても彼らしい素敵な作品です。

きりぎりすくんがみちを歩いて旅をしていると、いろいろな虫たちに会います。
そのほとんどのものが、おしつけがましかったり、極端だったり、頭が固かったり。
プラカードを持って、朝が1番!昼と夜は、ダメだ!と叫び合う「おはようぐみ」や、ひまをもてあましてそうじにはまり、ついには地面を、そしてせかいじゅうまでをもきれいにしようと意気込んでいるハエなど、へんてこりんなものばかり。
でも、かしこいきりぎりすくんは、彼らを本気で相手にはせず、通り過ぎる風のように、その場をすーっと離れ、自分の旅を続けていきます。

人の人生というものは、通過する風のようなものであることを、ちゃんと頭で分かっている方だからこそ、作り出せる名作でしょう。
おしつけがましくなく、自分自身を生きるということ……。
アーノルド・ローベルさんの作品を読むと、人が持つべき美しさとはどういうことかを、改めて考えさせられる気持ちがします。

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