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その時 走馬灯は見えなかった

大学のM先輩は普通なかなかできない経験をさせてくれた。
そこから学びや気付きがたくさんあった。
M先輩がいなければ、私の人生はもっと平凡なものだったに違いない。


迷ったら両方

M先輩とはよくご飯を食べに行った。特にうちらが好きだったのが名古屋だ。

京都から岐阜までスキーに行ってその帰りに名古屋へ寄って晩御飯を食べて帰る。

もちろん日帰りだ。


名古屋飯は美味いものが多い。

ひつまぶしに味噌煮込みうどん。矢場とんのわらじカツにやまちゃんの手羽先。他にも天むすとかエビフライなんてのもある。

弾丸ツアーは時間がない。
早く食べて早く帰る必要がある。

でも名古屋飯はどれも食べたい。だいたい2択までは絞れるけれどそこから先が決まらない。

そんな時M先輩は分かりやすい。

「迷ったら両方や!」

味噌煮込みうどんの後に味噌カツを食べることになる。まだこれは許せる。



大盛りにするか、普通盛りにするか悩むーー。


「迷ったら両方やで!」


結果、大盛りと普通盛りを食べるハメになる。



M先輩の前では迷ってはいけない。


ちょっとそこまでが2時間

ある日ラボで実験していたらM先輩からメールが来た。

「ちょっとそこまで飯行くぞ!」

3つ上の先輩に対して断るなんて選択肢はない。


午後の実験は戻ってきてからやることにして、M先輩の車に乗り込む。


「今日は何食べるんですか?」


「おー、着いてからのお楽しみや!」


そう言って高速に乗る先輩。


え?コウソク?



結局行き先を理解したのは2時間後。そこは福井だった。

海鮮丼を堪能して発泡スチロールいっぱいのエビをお土産に買ったM先輩と京都に戻ったのは夜だった。

晩御飯はラーメンと焼肉や!

(迷ったら両方や!)


当然その日実験はできなかった。


先輩はこの福井飯が大変気に入ったらしくその後五、六回はリピートすることになる。



走馬灯は見えなかった


福井で海鮮丼を食べることが恒例になった頃、M先輩と仲の良いD先輩、私と私の彼女の4人で福井に行くことになった。

何度も通っている慣れた道。
いつもと違うのは私が彼女を連れていることと大雨が降っていることくらい。

M先輩はマイトンをイジるのが大好きなので、私が彼女に聞かれると困るような話(くのいち元カノの話とか)をこれでもかと繰り出してくる。

苦笑いで聞いている彼女がただただ優しい。


そして高速へ入る最初のグルグルゾーンでそれは起きた。

大してスピードは出てなかったものの、タイヤが雨でスリップしてスピンしたのだ。


よく走馬灯のように、とか走馬灯が見える、なんて言葉を聞くが私の経験上あれは嘘だ。


スピンした瞬間は確かに時間がゆっくりになった。これにはびっくりした。



「ご め ん ご め ん ごめーーーん」


M先輩の全力の謝罪がゆーーーーっくりと脳内を駆け巡る。

これまたゆーーーくり回転する周りの景色。


でも自分が早く動けることもなく、
「や ば い や ば い や ば いーーー」っとゆーーーーっくり叫ぶしかできない。


走馬灯なんて見えやしない。
そんな余裕はない。


このまま死んだら最期の言葉が「やばい」なのか。それはやばいなぁ。


体感では30秒くらい経って車が三回転半し、私の座ってる側からガードレールに突っ込んだ。




生きてる?




生きてたよ。
車はなんとか自走して帰れるレベル。(結局は後に廃車になった)

全員奇跡的に怪我も無かった。

福井に行くことを断念した我々はボーリングをしてから帰ることにした。
なんでぶつかった後にぶつけるゲームに興じたのか。
みんな頭おかしくなっていたとしか思えない。



M先輩の今

もしかしたら2割くらいの人は身構えたかもしれないが、M先輩はご存命である。

ただ元気かと言うと実際そうでもない。
久しぶりに連絡をいただいたが、最近倒れて数日意識が戻らなかったらしい。なんなら今まさに入院されている。

糖尿病から脂質異常、高血圧と基礎疾患バッチリで結果的に肺炎でぶっ倒れたらしい。


そりゃ若い時からあんな無茶苦茶な生活してたら体も壊れるよ。

もう迷ったら両方はやっちゃダメですよ、先輩




🟰🟰🟰

最後まで読んでいただきありがとうございました!
学びがあったよ。と言う方はスキやコメントよろしくお願いします。
私も迷ったら両方派よ、と言う方はすぐやめてください。
走馬灯見たことあるよ、という強者はコメントよろしくお願いします!

皆さんの1日が笑顔と安心で満たされますように。

サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー