『万引き家族』にみる、法だけが裁ける日本という国

『万引き家族』という映画を観た。
『八日目の蝉』『そして父になる』と、家族の在り方を取り扱う映画を立て続けに観ている。Amazon Primeで関連動画に出てくるからである。
『そして父になる』との繋がりでいえば、樹木希林とリリーフランキーがどちらにも出演している。いずれもかなりハマり役だったし、勧めてくれるAmazon Primeは優秀である。


※ネタバレを含むかもしれません


日本という国は法だけで裁かれる国である。
先日カジサックさんのYouTubeを観ていたら、ゲスト出演していたメンタリストのDaiGoさんがそう言っていた。結局自分たちのしていることが正しいかという判断は法にしかできない。だから炎上しても、アンチに何か言われても、法で禁止されていないならそれは対処すべきではないと。

『家族』というカテゴリーについていうならば、日本ではほとんどの場合、『血縁』のみでそのコミュニティーが作られる。
『万引き家族』は、その秩序が果たして必ずしも正しいのか?幸せなのか?を何度も何度も問い続ける映画だった。


1人の老婆の家に、一組の夫婦、その夫の妹、夫婦の4人が転がり込んでいる。物語の冒頭で夫が幼い女の子を拾ってきたため、狭い家に6人が住んでいることになる。
足りない生活費は万引きで賄い、貧乏ではあるがなんだかんだ仲良く暮らしていたことがわかる。
そんな彼らはある出来事をきっかけに関係が変わっていき、隠されていた事実が一つずつ明るみに出ていくことになる。


万引きとはいけないことなのか?
産んだら母親になれるのか?
必ずしも、血縁関係のある親と一緒に生活しなければならないのか?
など、物語後半では次々に疑問が投げかけられ、それらを考える間もなく、『法』で既に定められている通りに、登場人物たちがそれぞれの道へ振り分けられていく。

6人は血縁関係のある本当の家族ではなかったけれども、互いを知ることで認め合い、愛し合っていたという点で、一緒にいるべきなのではと思わされた。
しかし自分の身が危険となれば見捨てて逃げようとする、そういった場面では『本当の家族ではない』ことを突き付けられた。

不思議と本映画は、観ていて苦しくなることが少なく、それは退屈にもなるほどのじゅうぶんな余白を与えられていたからかもしれない。


そして全員の演技が上手かった。
リリー・フランキー、安藤サクラの夫婦は必ずしも美しくないところが本当に生々しかったし、樹木希林も彼女にしかできない演技でまたしても輝いていた。
安藤サクラに関しては朝ドラにも出演するほど印象の良い女優さんだったけれども、映画の中の彼女は正反対で、それでも見事にリアルに演じ切っていたと思う。
つくづく映画というのは、モデル上がりの俳優や、アイドル出身の女優のような、美男美女だけでは成立しないのだなと気づかされた。

中でも個人的には、子役・城 桧吏くんが素晴らしかったと思う。
自然な演技で、しっかり顔も綺麗なので夢中になった。彼のちょっとした出来事での心情の変化が、大きく運命を左右していくことになるのだけれど、繊細な心の動きを見事に演じ切っていた。すばらしい。


日本という国は、全員が幸せを手にするにはまだほど遠い国なんだなと、思わされる映画でした。


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