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セブン&アイグループとは異なるローソンの独自戦略とは

前回のセブン&アイグループに続き、今回はローソンの決算資料を見ながらどのような戦略が取られているか調べてみました。

全体的な数字

セグメント別に業績を見てみると、営業総収入では国内CVC事業が約3433億円を計上しているものの、セブン&アイグループの国内CVC事業の同時期(2023年2月期2Q)の約4467億円に比べると77%ほどに留まっている状況です。
営業利益率で見ても、セブン&アイグループが28%ほどに対して、ローソンでは6%ほどになっており、大きな差が生まれています。
また海外CVC事業についても、セブン&アイグループの同時期の営業総収入が約4兆1845億円、営業利益が約1155億円に対して、ローソンでは営業総収入382億円、営業利益が21億円とこちらもセブン&アイグループが圧倒しているという結果になっています(なお、営業利益率で見るとセブン&アイグループは2.7%に対してローソンは5.5%ほど)

2023年2月期第2四半期決算短信より筆者作成

ローソン国内CVCの戦略ポイント

2023年2月期第2四半期決算短信を読んでいくと、ローソン国内CVCの戦略ポイントは
1. 「まちかど厨房」や「無印良品」の導入により日常購買へ転換していく
2. 「ヘルスケア強化型店舗」や「ホスピタルローソン」による介護・医療分野への進出
になってくるように思われます。

「まちかど厨房」や「無印良品」の導入により日常購買への転換

店内調理サービス「まちかど厨房」は8853店舗に拡大され、「三元豚の厚切りロースカツサンド」や「海鮮かき揚げ丼」などの定番商品や地域ごとのニーズに対応した商品を展開しています。ローソン店舗への「無印良品」導入店舗数も3780店舗となっています。

2022年度上期決算説明会資料p14

またUber Eatsを含む4社のフードデリバリーサービスの導入店舗数は3498店舗となっており、従来のコンビニ商品に加えて店内調理サービスによるできたて商品をデリバリーできるなど、セントラルキッチンによる徹底した管理でコスト削減と品質の安定化を図っているセブン&アイグループとは異なる戦略を展開しています。

フレッシュフードなどをUber Eatsから注文できる

Uber Eatsに関しては、OTC医薬品の取り扱いを87店舗で実施している点も興味深く、後述の医療・介護分野への進出とあわせて、日用品を購入する場所へと転換する姿勢が強く出ています。

介護・医療分野への進出

個人的により興味深かったのは、調剤薬局やドラッグストアチェーン、病院等と提携しながら介護・医療分野に進出していく動きです。
通常のローソンよりも化粧品、日用品などの品揃えを増やしたヘルスケア強化型店舗を含む一般用医薬品の取扱店舗数は、289店舗(うち、調剤薬局併設型店舗数は50店舗)であり、介護拠点併設型店舗数は21店舗展開しているようです。
加えて、医療衛生・介護関連用品などの品揃えを強化した「ホスピタルローソン」は340店舗に上るとのこと。
個人的にも以前病院内のローソンを利用したことがありますが、医療・介護需要が伸びていく中で、こうした専門特化した戦略は業界トップのセブン&アイグループと一線を画しており、興味深い展開と言えそうです。

ローソンHPより

ローソン海外CVCの戦略ポイント

最後に海外CVCの展開について少しだけご紹介しておきます。
セブン&アイグループの海外展開については前回の記事で触れましたが、セブン&アイグループでは北米で13000店を展開しており中国や韓国、タイなどアジアでも3万店超を展開しています。
それに対してローソンは中国では日系コンビニエンスストアとしては初めて5000店舗を超えており、新型コロナウイルス感染症のロックダウン施策により一時的な影響を受けたものの、まだ拡大の余地があり注力ポイントになっていきそうです。

2022年度上期決算説明会資料p19

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