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在来種野菜の味力、地元満たし潤す【深夜22時の創造しい会|7月7日(金)】

企画参謀
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雲仙産野菜の直売所活気
在来種の味力、地元満たし潤す

日経MJ
2023/7/3

長崎県雲仙市で農産物直売所「オーガニック直売所タネト」が注目を集めている。

春大根1本160円、タマネギ1個80円――。

タネトの店内には地元産野菜がずらりと並び、買い物客でにぎわう。一見、普通の農産物直売所だが、野菜をよく見ると形や色、大きさが不ぞろいなことに気付く。

新鮮で豊かな味わいの地元産在来種を軸に扱う。国内外の雑誌で紹介されて知名度が上昇。扱う野菜にほれ込んで移住したシェフが開いた店が人気店となるなど、県外からの集客にも一役買っている。


「これが歳月をかけて土地の風土に適応していった在来種野菜」
「味は濃くて風味も豊か。車で30~40分かけて買いに来るお客さんが多い」

雲仙野菜に引かれた奥津さんが妻の典子さんと移住し、2019年にタネトを開業。
交流のある約20軒の農家が旬の在来種野菜を持ち込み、売れた場合は奥津さんに手数料を支払う。
扱う野菜の8割は半径10キロメートル以内で生産されている。

都市部から離れている直売所はSNS(交流サイト)で発信して通販に活路を見いだすケースが多いが、タネトでは通販はしていない。

それでも事業が成り立っているのは、料理の材料として買い付けに来る飲食店など地元のリピーターに支持されているためだ。

スーパーなどで出回る野菜は「F1種」と呼ばれる。色や形、大きさが均一になるよう改良された種からつくられる。形質が発現するのは一代限りで、農家は毎年種を買う必要がある。

在来種は農家が手作業で種を採り、翌年にまくというように継いでいく。
奥津さんが移住を決めたのも、種を継ぐ農業の大切さについて聞いたことがきっかけだった。

在来種野菜は料理人も引き付ける。

雲仙温泉の老舗旅館、雲仙福田屋の草野玲料理長
「一般的な青首大根は生でも、火を通しても食べられるが、在来種の源助大根などは生では辛すぎて食べにくい。それが火を通すと何倍ものおいしさになる」と魅力を語る。

市内の小浜温泉でレストラン「BEARD」(ビアード)を営む有名シェフの原川慎一郎さんや、市内の山あいで日本料理店「彩雲」を22年に開いた宮下裕之さんも移住組だ。2店とも地元や県外からの予約で埋まる。

取り組みは海外の注目も集め、21年には世界90カ国に読者がいる英国発の総合カルチャー誌「MONOCLE」(モノクル)が紹介。国内でも「ブルータス」などの雑誌で取り上げられた。

JR九州が創設した「西九州観光まちづくりAWARD」でタネトが大賞を受賞。「生産者と消費者をつなぐ拠点となり、活動の広がり自体が観光の目的となる唯一無二の取り組み」と評価された。

<ポイント>
地元に愛される商売が本当の観光資源
地域文化でもない習慣を商業化して観光用に打ち出しても地元は冷め、目の肥えた観光客にはバレる。生活に根付いた地域文化があるから深く、濃く、再び来たくなる。

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