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結んで切れて絡まり繋がる | CHEERFUL CUT

別れを意識するからこそ
時を大切に刻めるのです。
(江原啓之)

こんばんは。wisteriaです。

今回ので、第8話目ですね...
思ったより長編になってしまいました。
長いですが、よければ、ご覧ください。

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時系列が思い出せないのだが、
恐らく、以前のCRACKの前後に、ある1件の連絡が入った。

Aちゃん「ちょっと話したいこと、聞いてほしいことがあるんだけど、
                 オンライン上で話せないかな?」

なんの話だろうか、と内心ドキドキしながら、当日を待った。

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当日。パソコン画面で待ち、3人顔を合わせた。

すると、Aちゃんは、静かに話し始めた。

Aちゃん「実は、以前に内定頂いた所と
                 別にもう1つ内定をもらっている所があって。
                 色々考えて、悩んでいて...」

私は、少し驚いたが、私の予想を遥かに外れた話ではなかった。
Aちゃんは、ポツリポツリと続けた。

Aちゃん「過去の先輩は、もっと良い有名な就職先に行ってて、
                 その人たちと比べると、考えるほどに、
                 自分がどれほど落ちこぼれなんだろうと思って...
                 そう思うと、悔しくて、悲しくて...」


Aちゃんは、本当に、真っ直ぐで、優しい人だ。

だから、人一倍傷つきやすい。人一倍、抱え込みやすい。

周りと自分とを比較して、葛藤に苛まれている。

さらに、人生の重要な分岐点に、立っていることも自覚しているから、

余計に、一歩を踏み出す勇気がなく、ためらってしまうのだろう。

決断とは、残酷なものだ。


冷酷無比にも聞こえるだろうが、私は、

"どこに進学/就職しても気にしない"

様に、以前から考えるようになった。

なぜなら、
その”大学”や”企業"が、その人を表す/構成する因子ではないと思うからだ。

身近な人なら、尚更だ。

たとえば、

『○○くんが、あの有名企業に就職するんだって。すごいよね。』

と聞いても、私は、○○くんを有名企業によって紐づけない。

私の中での○○くんは、
実際に、私の目で見た、私が感じ取った、○○くんであり、
有名企業に就職する点は、私の頭に入らない。

有名企業に就職したからといって、
一人の人格を持つ人間に、何ら変わりはない。

正直なところを言うと、
一人の人間として付き合う/接するにあたって、
年齢、性別、環境、学歴、就職先、病気/障がい、などは、
私にとって、あまり関係なかったりする。


しかし、私も初めから、このような考えだったかというとそうでもない。

さらに、現在の日本では、なかなかこれらが受け入れられないように感じる。

だから、私はAちゃんの不安や悩みに対して、
個人的に、身に染みるところがある。

だけど、私は、一人の友人として、私の考えを述べた。

私「私は、Aちゃんが望んだ場所であれば、どこに行ってもいいと思う。
       なぜなら、私にとって、一人の人間として、接する時に、
       就職先を考えないから。
    たとえ、先輩が有名企業に就職したとしても、
       私の中での先輩は、私と実際にかかわって感じた人であって、
       有名企業で、私の中の先輩像が変わることはない。

  それは、Aちゃんに対しても同じ。
        Aちゃんがどこに就職しようと、
        私は、変わらず、Aちゃんと接するよ。
        だから、最後まで、悩んで、悩んで、悩んで、
      自分が納得した道を迷わず選べばいい。」

Aちゃんは、泣いていた。
だが、少し落ち着いてもいた。

泣かせてしまった、と後悔したが、
私の想いは変わらない。

これからもずっと、
苦しみや喜びを分かつ、あなたの友でいます。
そして、あなたは、私の親友、かけがえのない存在です。

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あまり紹介できていなかったCくんの話をしよう。

彼は、とても優しく、気遣いのできる人だ。
どんなことでも手伝ってくれて、本当に何度も助けられた。

だが、その優しさと気遣いが彼自身を苦しめる。

先輩たちの間に挟まったり、同期の間に挟まったりと、
何かと挟まれてしまう立場を強いられることもあった。
さらに、先輩の愚痴を聞き続ける負荷を背負ってもいた。

私は、そんな彼を見ていて、表現は良くないが、不憫だった。

誰も彼の気持ちを考えないのか、と怒りを覚える時もあった。

時々、彼と他愛もないことを話している時でも、
たまに、研究室がしんどい、と漏らすこともあった。

私は、それを聞いて、どうすることもできない自分が悔しかった。

本当の意味で、彼を助けられない、と。

だから、私は、以前のCRACKでの出来事を彼に伝えない決意をした。

余計なことを考えなくて良い様に。苦しみをもつ人を増やさない様に。

それから、何の意味も持たないかもしれないが、
彼の気休め程度に、私は、
彼の愚痴を引き出して、聞くことに努めた。
そして、感謝の言葉を共に、彼に伝えようと努めた。

彼は、私のことをどう思っているのかは分からない。

だけど、私は、異性関係なく、想いは変わらない。

あなたの苦しみを取り除くことができなくて、ごめんなさい。
そんな私だけど、それでも、
これからもずっと、
苦しみや喜びを分かつ、あなたの友でいます。
そして、あなたは、私の親友、かけがえのない存在です。

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これらの件をきっかけに、
あと半年で、新たな環境へ旅立つ、AちゃんやCくんに、
これ以上、研究室のことで迷惑をかけるわけにはいかないと強く思った。

彼らには、彼らの人生がある。私が邪魔してはいけない。

私が手を放さない限り、彼らは自由になれない。

だけど、本心は、手を放したくなかった。
ずっとそばにいてほしかった。

でも、友人だから、かけがえのない存在だから、

振り返らずに、進んでほしい。


これまで、支えてくれた、応援してくれた、協力してくれた、

彼らだからこそ、これから、何の心配もなく、

自分の信じた道を歩んでほしい。


私は、彼らにとって、取るに足らない存在かもしれないが、

今度は、私が彼らを応援する番だ。


私はそこから研究室に関することを話すことを極力やめた。

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不器用な結び目がついた、
複雑に絡まり、擦り切れ、
導かれるように、結びつきを強固にし、
まっすぐ円く繋がり、
少し亀裂が見えていた3本の糸は、
ゆっくりとその結び目を解き始めた。

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