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【英語本】『英語の路地裏』北村紗衣【ブックレビュー】

いやー、めちゃくちゃ面白い!

一見軽い筆致の語学系エッセイながら、頁を捲る手が止まらない。読んでいてこんなに心躍る読書体験はなかなか得られるものではない!

私の大好きな作品『パディントン』の'Lends a Helping Paw'からはじまって、『クレイジー・リッチ!』『マンダロリアン』『リトル・ダンサー』『シャーロック』といったどれも面白い映画やドラマ、さらにはSNSやYouTube配信コント、加えてオスカー・ワイルド、アガサ・クリスティ、そしてご専門のシェイクスピアといった文学作品などなどを題材に、英文法・英文解釈・文化背景知識の面白さと英語理解への有効性を実演し、巻末には北村先生自身で作問されたという大学入試問題の設問意図と解説まで付されている。

まるで私のために書かれたのでは?と錯覚するほどに、選ばれている素材、それへのアプローチ、仕上げの調理、どれもこれも目も綾でとっても美味しい!あたかも先生の授業に出席しているようなライヴ感溢れる文章に誘われて「路地裏」をそぞろ歩きしていると、ふと広場へと通じる「王道」にも繋がってくるような。

路地裏つまみ食いの一例をあげると、YouTubeのコントから引用された英語の言葉遊び。

'What is the current sterling conversion rate?'

これは字義通りには「現在のポンドの交換レートはどのくらいですか?」という質問だが、コントでの答えはなぜか'About one goal in every 10 games.'(10ゲームごとに1ゴールくらい)。どういうことか?

これはプレミアリーグ好きにはお馴染みのラヒーム・スターリング(Sterling)選手の「決定率」'conversion rate'の低さをネタにかけたもの。

現在はチェルシー所属の彼は、すごく身体能力の高い良い選手なんですが、こういうミス集動画があるぐらいのおもしろプレイヤーでもあるんですよね。。

さて、塾講師の私としては、最後の大学側からの入試作問意図の解説はとても興味深く、今後の授業の参考およびモチベーション向上になるものでした。

例えば、一般の高校生に親近感が持てるようなTikTokを取り上げつつも、sea shanty(労働歌の一種)というあえて大半の受験生の知らないであろう題材にすることで、背景知識がなくとも本文だけで解けるような平等性を保とうとした配慮とか、学生に文化・芸術の力について真面目に考えられるような人になってほしいという願いを込めた、とか。

以下は、入試本文で取り上げられていたTikTokにあげたsea shantyから歌手として成功したNathan Evansの'Wellerman'。

入試過去問を、大学側からのメッセージとして受け止めると、私たち塾講師としてもその研究に気合いが入りますね!

著者の北村紗衣先生の本は今回はじめて読んだのですが、他にも私の長年興味のある「共感覚」についても著作を出されているようで、そちらも個人的に気になっています。

本書については他にもいろいろ触れたいポイントがあるのですが、いったん、今回のブックレビューはこの辺りで。

Class dismissed!

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