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『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』の邦題について

先日、岡山シネマクレールで『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』を観てきました。ほんと素敵な映画で、教育関係に身を置くものとしても、いろいろ感じるところの多い作品でした。

映画自体の感想は以下のFilmarksに投稿してあります!

ところで、ここでは『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』というこの作品の邦題について考察してみたいと思います。

オリジナル英題はシンプルに"The Holdovers"。この単語自体は「残留者(物)、留任者」を意味する名詞で、私もそうだったのですが、おそらくほとんどの日本人は「ホールドオーバーズ」だけ聞いても意味が分からない。そこで邦題はここにこの単語の持つニュアンスを「置いてけぼり」で補いつつ、さらに「ホリディ」という作品の背景を説明する要素を少し付け足していると。「クリスマス」ではなく、あえて「ホリディ」なのは宗教的な配慮なんでしょうね。作中でもそこに触れたシーンがありました。

こういった「原題カタカナ+日本語追加説明」パターンの邦題の付け方はかなり珍しいと思います。パッと思いつくところをあげると『レヴェナント: 蘇えりし者』"The Revenant"(2015)とか、

『インビクタス/負けざる者たち』(2009)とか、

とか、日本語+英語の順番ながら『彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』(2018)とか、

といったところでしょうか。

洋画の邦題問題は個人的にはとても関心を持っているのですが、原題のままだと芸がないと言われ、変えたら変えたで、原題とニュアンスが異なるとかダサいとか指弾されたりするわけですから、特にこのSNS拡散の時代には、非常に神経使うと思います。昔は今では信じられないほど謎な邦題(『恋愛準決勝戦』"Royal Wedding"とか)も多く、それが笑えたりもしたものですが。。

本作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』については、原題尊重派と日本人観客への分かりやすさの両方へ配慮した苦心が感じられますね。

【おまけ】
これはほんとに細かいおまけの話なのですが、「ホリディ」のカタカナ表記について最後に。

holidayのカタカナ表記は「ホリデー」「ホリデイ」「ホリディ」の3つあるかと思います。米発音なら「ハリデイ」とかもありえそうですが、あまり一般的ではないかなと。不思議なのは「ホリディ」と書いてあっても実際には「ホリデイ」と発音する人が多く、この映画の館内アナウンスも「ホリデイ」でした。/ˈhɒlədi/という発音は実際あるにも関わらず。

これには松浦亜弥の「Yeah! めっちゃホリディ」の影響もあるのかな。彼女は明らかに「ホリデイ」と発音してますよね。

そしてこれはおまけのおまけなのですが、この「めっちゃ」の使い方も面白いですよね。普通「めっちゃ」は副詞として「めっちゃ面白い」のような使い方が普通だけど、ここではホリディという名詞を直接修飾している。英語の「the very +名詞」のような語法なんかなあとか思ったり。

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