欲、期待、死にたい

人間の欲には際限がない。
たった一歩踏み出せたらじゅうぶんだと思っていたのに。死ぬ前にすきなことを、やりたいことをやってから死のうと、ただそれだけではじめたはずだった。
ひとつひとつが新鮮で挑戦で怖くて、自分を奮い立たせて、誕生日に死ぬのだから、と逃げ道をつくってとびこんだ。毎日必死で、懸命で、ぐちゃぐちゃになりながら、初めて人生が楽しいと思った。


なのに、まわりと比べる。
同じ空間で同じ日々を過ごし、同じことをまなんだせいで、どうしても同じなのにとおもってしまう。


わたしは、遅い。わたしは、躓く。わたしは、幼い。わたしは、未熟だ。わたしは、一度精神的に壊れた経験のある人間は、どうあがいても普通より生きるのが大変だ。
仲良くなった誰かが、自分のやりたいことで道をすすんでいくのを間近に見るようになった。
誕生日に死ぬつもりでとびこんだやりたいこと。楽しかったのに。
欲が生まれる。まわりと同じように、それ以上に、わたしだって、そうなりたいのに。
これはいけないものか。くるしい。
向上心といえばきこえはいい。それに変換できるならとっくにしている。
でも。わたしはわかってる。きっとむりだ。
わたしは優れてはいない。足りないものがおおい。そのうえ、10代で一度こわれ、無駄にした数年が足を引っ張る。年齢、経験、自己否定。積み上がったそれらは見ないふりをしてもそこにある。


これをかかえて這いつくばって、自分より優れた人間が自分のやりたいことでうまくいくのを見つめつづけるのか。
仲良くなってしまった、身近に知り合ってしまった人間が、うまくいくのを。


醜いことを言えば、今、やらなければ良かったとさえ思っている。やらなければ、それをやっている人間たちと仲良くなったりもしなかった。まわりと自分が同じだと錯覚することもない。欲も出ない。
やってしまったから、知ってしまったから、楽しくなったから、生きてしまったから、苦しんでいる。
直視するのも気持ちが悪い、欲、期待、死にたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?