冬と傷

なんだか最近元カレさんのことばかり思い出します。
未練がましい人みたいですね。
好きでもないのになぜか、ふと思い出してしまう人。
馬鹿みたいに好きで好きでしょうがなくて、好きなまま別れた私たち。
彼の文面。
「多分好きじゃなかったんだと思う」
さいてい。
さいていだよ。
言わなくて、いいじゃない。
多分って、たぶんって、なんなの。
別れて、私は割とすぐに立ち直りました。
まだ止血できずに血が滲んだ包帯を見て見ぬふりをして。
上手に、できました。
君を私の中から消す、こと。
包帯を外すともう血は止まっていて、青い傷だけが、残っていました。
消えない傷を抱えて、しばらく私は泣きました。
見るたびに痛む傷を残した彼を恨んで、恨んで。
そろそろ一年が経とうとして、紺に近い青だった傷は、少しずつ肌になじみ始めました。
冬、寒さの中に傷を見出してまた私は胸の奥に疼く痛みを抑えます。
思い出と好きを全部取り除いて残った痛みは、じんわりしてて掴めなくて、
笑って辛かったねって言うのにちょっとだけ無理をするほどに淡い。
傷は、あなたとの時間に、季節に近づくにつれてきっとまた濃さを増してきます。
でも、もういいの。
痛いんだから、ずっと。
あの文面を、今では直視できるようになりました。
最後まで悪役でいてくれたんだね。
彼は優しいから。
「相手に傷を残す恋愛をするな」
私の母がよく言っていた言葉。
よくないけど、よくないんだけど、何かを彼に望むのだとしたら。

彼に小さな傷がひとつ残っていますように。

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