関心という「フック」の綱渡り
対象者へ支援をしていく上で、よく出てくる問題なんですが、
「どうやったらやる気になるだろうか?」
「何がこの方のモチベーションになるんだろう?」
という議論です。
ご本人を盛り上げる、掻き立てるためにどうやったらいいのか、そもそもどういう事にモチベーションがあるのか分からないケースは少なくありません。
社会に出ていく力があるが、何のためにはたらくのかってことが分からなかったり、通所をする理由を得られなかったり、活動をすることに対して興味づけが行えなかったり、と理由は様々なんです。
関心や興味のきっかけになるものを「フック」と呼んでいるんですが、要はその「フック」を探しあぐねてしまう、ということですね。
何故探しあぐねるか、というと、どうしても「得たい成果」に直結しているものをフックとして持ってこようとしてしまうんです。
例えば一般就労へのモチベーションを持ってもらうのに、フックとして「どんな仕事だったら楽しめるかなぁ」とか、通所している事業所の活動内容についてどのような配慮が必要なのかな、というフックを探ろうとしたり、ということを僕ら支援者も考えがちになったりするんです。
そうすると急に難易度が上がっちゃって迷子になってしまうことが多々あります。
僕もそういうフックの探し方をよくしてしまっていたので、ちょっと支援が難航してしまったこともありました。
ちょっと話が飛ぶんですが、地域の就労移行系の事業所を運営されている方が、併設で「ひきこもり相談支援センター」というインフォーマル事業をされているんですが、彼は対象者の方との接点やフックに「オンラインゲーム」を使うんです。
きっかけはたまたまだったらしいんですが、ある対象者の方がゲームが好きで、共通言語として話題にするためにそのゲームをめちゃくちゃ練習してその方と一緒にするようになったんです。
するとそれをきっかけにその方がだんだん仲良くなっていって最終的には外に出てきてくれるようになったんです。
おそらく最終的には就労移行に通所されるようになったみたいです。
ひきこもりの方が家の外に出る、そして次のステップにつながっていくという成果に向けていくための最初のフックが「オンラインゲーム」だった、というのに僕はとても刺激を受けました。
と同時に何かヒントをもらったような気がしたんです。
支援者側が求めたいと考えている成果と、対象者の方にある固有のフックって違って当然ですし、その間に距離があるのも当たり前なんです。
それを一足飛びに自分達の側に寄せようとするんじゃないんだな、ということです。
入り口は本人に固有のフックに思い切り寄せたところを導入口として受け入れることから始まりますが、そのフックをつないだままで違うフックを引っ掛けていくんです。
先程の例を使うと、最初はご本人のフィールドにあるオンラインゲームにこちらから飛び込んでいく。そこで自分と仲良くなると、オンラインゲームというフックがつながったまま「自分」がフックになります。
今度は自分というフックを少し強くしていって、そこを頼りに例えば「ちょっとうちの事業所にもゲームあるから一緒に行ってみようよ」みたいなカタチで次のフックを目掛けつつ「外に出る」という小さなステップを踏んでいきます。
こうして段々ご本人のフックを数珠繋ぎにしていきながら、合わせてひとつずつステップに向かっていくことで、自然なモチベートが出来るんじゃないかと思います。
勿論全ての方に適用される手法ではないでしょうし、そもそも動機のありかが見えている方に無理に用いるものではないとも思います。
支援をしていると、どうしても僕ら支援者自体が自分たちの土俵に持ち込もうとしがちなんですが、どうしてもきっかけが見つけにくい時は、思い切り相手の懐に飛び込んで、相手の土俵からスタートしてみるのもひとつの支援のカタチじゃないかな、と思います。
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