雨の日も神様と相撲を 城平京 講談社タイガ

 ミステリー作家で漫画原作で活躍している城平京さんのラノベです。相撲とミステリがファンタジー的に合体した稀有な作品。

 主人公は、逢沢文季(あいざわ・ふみき) 中学3年生の“相撲少年”。父は190センチに達する仁王のような男で、大学まで相撲をやっていたが腰を痛めて力士の道をあきらめる。母は小柄だが、その父を凌駕する相撲知識と理論の持ち主。二人は相撲が縁で結ばれ両国で暮らし、文季が生まれた。しかし、彼が中学3年になる春休みに二人とも亡くなってしまう。
 親族のほとんどいない彼が引き取られた先は、会った記憶も怪しいたった一人の叔父さん。暮らす久々留木村(くくるぎむら)は米つくりが盛んな村で、どうもカエルの鳴き声が名前のもとらしい。その村ではカエルが神様であり、相撲が大好きとのこと。文季も相撲好きの両親の方針で10年相撲をやってきていたが、身長は150cmたらずで体重も40kgあるかどうか。村に来ることで相撲との縁が切れると思っていた文季だが、さらに深まることになる。はては、神様であるカエルから「相撲を教えてほしい」と言われる。彼は相撲に愛されているのか、それとも祟られているのか。

 読みやすい文章に騙されてはいけない。緻密なプロット、異色のキャラクタ、裏の裏の裏まで考えた論理構成が、その読みやすさを支えている。そもそも、引き取られた先が、一度あったかどうかくらいの叔父とその義理の父親という構成からはじまるし、カエルに依頼された相撲が非常にリアルで、人間の相撲との比較はおもわず肯いてしまう。いやいや、それは実際にないだろう・・・って思う以前に肯いているのが素晴らしい。そして、最後はあのオチである。いやはや。

 カエルの神様と相撲に翻弄されるが、見事な青春小説!!とだけ、言っておこう。50過ぎ(この本を最初に読んだとき。今は、還暦も過ぎた・・・)のオッサンが、甘酸っぱい昔を懐かしく思える本である。

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 城平京先生の傑作と思ってます。アニメ映画化希望!!

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