英雄の書 上・下 宮部みゆき

 物語に潜む、この世を統べるものの話。毎日新聞に連載されたもの。毎日新聞から単行本が出て、今は新潮文庫に収録。

 友里子は小学生で中学生の出来る兄がいる。ある日、友里子は家族に起こった何かで早退する。聞くと、兄が同級生を殺傷して行方がわからなくなったらしい。兄を探すことを決意する彼女。そして、それは物語に中に潜む英雄を探す旅となる。

 宮部みゆきのファンタジーで、当たりを引いたことがなかったが、「英雄の書」は、非常によかった。前半の解説?と思うほどの説明から後半の作中話?を経てラストに向かうあたりは、ファンタジーの醍醐味だと思った。さらにこの話にふさわしい「輪」となるラスト。どう収めるのか最後までわからなかったが、よい意味で裏切られた。

 主人公の友里子に加え、三人?のキャラクターが登場するが、どのキャラクターもイメージしやすいのは、さすがである。欲を言えば、複雑な設定と世界観のため前半の説明が冗談抜きで長い。でも、はしょると訳がわからなくなる。難しいところ。

 ネタバレになるので、詳細ははしょるが、この本の評価は真っ二つに分かれるらしい。Amazonも5から1の評価がバラバラでついている。ホントに珍しい。たぶん、前半の説明部分で物語に入り込めたか否かにかかっているのだろう。本好きの私は、「古書が山積みされている別荘」に行くあたりで、魅了されていました。それと、宮部さんがあとがきで描かれている例の一連のシリーズが好きだからということもあるだろう。一見さんにはつらい物語かもしれない。

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 たぶん、宮部さんはファンタジー系ゲームが好きだと思う。だからこそ、その傾向の話になると作家視点からプレーヤー視点になってしまうのだ。


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