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NHK常時同時配信に対する総務省の考え方に寄せられた2万6千件の意見の中から、主な意見に6件も採用いただいたので、参考までにワイズ・メディアの提出分を全文掲載します

『「日本放送協会のインターネット活用業務実施基準の変更案の認可申請の取扱いに関する総務省の基本的考え方」についての日本放送協会の検討結果の回答及び意見募集結果に対する総務省の考え方』
という息継ぎしなければ読みきれないほど長いタイトルの文章が24日、総務省から公表されました。
NHKの常時同時配信の認可申請に待ったをかけた、いわゆる「総務省の考え方」に対して、NHKの返答と、一般の意見募集の結果を公表したものですが、主な意見の中にワイズ・メディアの意見が何と6件も採用されましたので、参考までに我が社の全意見を公開いたします。
NHKのためではなく、日本の放送産業全体の未来や、放送の独立という民主主義の根幹を鑑みて意見をしたつもりです。
以下、連絡先など一部割愛しましたが、意見そのものはまんま掲載いたします。(文中「意見:」とあるのは。読みやすさを考慮し、noteにて加筆したもので、原文にはありません)

「NHKインターネット活用業務実施基準の変更案の許可申請の取り扱いに関する総務省の基本的考え方」に対する意見

令和元年12月8日

総務省情報流通行政局放送政策課 御中
法人名  株式会社ワイズ・メディア

「NHKインターネット活用業務実施基準の変更案の許可申請の取り扱いに関する総務省の基本的考え方」に対し、下記のとおり意見を提出します。 

・全体について
・意見:「同考え方」については、そもそも許認可の前に総務省が表明し、意見募集するという方法が通常と大きく異なります。もし、意見を募集する必要がある重要な事案であるなら、その前に「放送を巡る諸課題に関する検討会」において十分に検討すべきであり、それを踏まえず一方的に総務省が公開したことは、手続きの適正さにおいて問題があると考えます。「同考え方」について、まずは諸課題検討会における議論を経た上で、案として提示すべきだと考えます。

・P1 1. 「全体の収支構造が妥当なものと認められるか否かについて、改めて検討することが適当であり…」の文章について
・意見:諸課題検討会において数年間検討されてきたことであり、改めて検討する必要性があるのであれば、具体的な根拠を数値等で先に示すべきだと考えます。

・P2 2.(1) 業務全体の見直し
「子会社の業務範囲の適正化等、(中略)更なる取組を着実かつ徹底的に進めることが必要である」の文章について
・意見:必要性を否定するものではありませんが、新たな事実関係が発生したわけではなく、必要であれば法改正直後、少なくとも9月より以前に指摘すべき事項であり、取組の必要性を今更取り上げることは不自然だと考えます。

・P3 2.(4) インターネット活用業務
「インターネット活用業務を含む協会の業務全体を肥大化させないことが求められる。インターネット活用業務の拡大がそのまま事業支出の増加につながり、事業収支のバランスを悪化させることとならないように取り組むことが強く求められる」の文章について
・意見:総務省として「肥大化」の定義を明確化すべきです。
NHKは基本的に受信料収入によって事業計画を立てており、予算上、インターネット活用業務が増えればそのほかの業務を圧縮せざるを得ないのが普通であるので、何をもって「肥大化」と表現するのはこの文面だけでは意味が不明です。

・P5 4.(1)
① ア 常時同時配信(受信料制度との関係)
「利用申し込みのために年に2回、大会に際しては特段の制限なしに、特例措置を講ずることができることとしているところ、協会が実施した意見募集において、民間放送事業者から、特例措置を講じることによって、市場競争が阻害されかねないとの懸念が示されている。
以上を踏まえれば、受信料負担の公平性及び市場競争の観点から、特例措置を設けないことが望ましいと考える」の文章について
・意見:賛同できません。
NHKのインターネット活用業務において、「国民・視聴者の理解が得られることを前提に」とあるにも関わらず、国民・視聴者の利便性を軽視し、民間放送事業者からの懸念点のみを踏まえて結論づけており、ユーザー視点を欠いています。
インターネットビジネスにおいては、フリーミアムはごく普通の普及戦術であり、年に2回程度の特例措置すら総務省が意見するのであれば、事業自体の裁量が失われ、NHKの独立性に危険が生じると考えます。
また、「本業務は、国民・視聴者と大会期間中の訪日外国人の期待に応えるものであるから、一定の社会的意義が認められる」としながら、訪日外国人に無料で大会の同時配信を開放しないこととなれば、不満が爆発する可能性があります。逆に訪日外国人にだけ特段の制限なしに視聴できるとすれば、国民との公平性を欠くことになります。
なお、公平性および市場競争の観点とは、どことの公平性、どことの市場競争か明確にすべきです。FANGやBATなど海外の巨大プラットフォームとの公平性や、市場競争を考慮していないのであれば、将来海外プラットフォームによる市場独占を許してしまう懸念が払拭できません。

・P6~P7 4.(1)
① エ 国際インターネット活用業務
「協会が行うものとして適切なものであると認められるものの、既存の国際インターネット活用業務から強化する部分を明らかにしつつ、既存部分も含めて、適正なコストで実施することが望ましいと考える」の文章について
・意見:「ものの…」以下を削除すべきだと考えます。
平成30年6月に政府の規制改革推進会議が提出した第3次答申「NHK国際部門の充実・抜本強化」の趣旨からすれば、世界に向けての情報発信を通して、日本の魅力を向上させ、日本のプレゼンスを高めるためのNHKの役割を特に重要と捉え、ユニバーサル・サービスに関する業務や、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する業務と同様の社会的意義を認めるべきです。

・P8 4.(1)
② 業務の実施に要する費用に関する考え方
「令和2年度については、インターネット活用業務の費用の上限は、一時的に発生する大会に関する業務の費用を除き「受信料収入の2.5%」を維持することとし」の文章について
・意見:賛同できません。
ユニバーサル・サービスにしろ、国際インターネット業務にしろ、社会的意義が高いものを「受信料収入の2.5%」の枠組みに押し込んでしまうと、NHKに求められている公共的使命をインターネットにおいても果たすことが困難になると思います。
特に国際インターネット活用業務は、平成30年6月に政府の規制改革推進会議が提出した第3次答申「NHK国際部門の充実・抜本強化」の趣旨に鑑みれば、「受信料収入の2.5%」の範囲から外し、別枠でその取り組みを加速させるべきだと考えます。

P8 4.(2) 有料業務に関する考え方
「見逃し配信の提供に伴うワンサービス化が有料業務の累積収支の改善を遅らせる点は否定できない」の文章について
・意見:これまで見逃しとアーカイブという、2つのサービスを別々に提供してきたことが、視聴者ニーズに応えていなかったことは事実であり、逆にワンサービス化は加入者増に繋がる可能性もあり、「改善が遅れる」との指摘は、的を射ていないと考えます。

・P9 4.(2) 有料業務に関する考え方
「ニーズの高いコンテンツの見逃し配信については、有料業務で提供することなども考えられる」の文章について
・意見:賛同できません。
見逃し配信を有料で提供することになれば、受信料以外の収入増加となり、民業圧迫や肥大化につながります。
ニーズの高いコンテンツほど、併せてTVerやGYAOなど、国内のプラットフォームにおいて無料での提供を実施し、受信料支払い率向上の施策につなげていく方が、NHKのためにも、放送業界全体のためにもプラスに働くと考えます。

以上

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