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ストレッチ

生まれた時から身体が固い。赤ん坊は自分の足の親指をしゃぶろうとする本能があるらしいのだけれど、母が言うには、ぼくはそれをやろうとしても、足が口に届いていなかったそうだ。

小学生の時に自宅で毎日ストレッチをしましょうという宿題があった。全校生徒に課された宿題だったので、経緯を想像するに、体育教員か校長がストレッチは健康に良いというような情報をどこからか仕入れてきたのだろう。

ポーズの例として写真が印刷されたプリントが配られたのだけれど、その写真に写っている人の身体はとても柔らかく、そんな姿勢を取るのはとてもじゃないが不可能だった。どうにか同じ姿勢に近づけようと無理をすると、ますます身体に力が入り筋肉は伸びなくなる。身体を柔らかくする必要が高いのは、自分のように身体が固い人たちのはずなのに、目標設定が異次元すぎて、全く参考にならなかった。結局、ストレッチを試みたのは最初の数日だけだったし、お手本通りにできない自分が悔しかった。そのおかげで、運動をする機会があっても、ストレッチは滅多にしなくなってしまった。

その後およそ三十年の時が流れ、筋トレが習慣になって初めて、ストレッチの大切さを実感するようになった。トレーニングの前後にストレッチを行うと、翌日に残る疲労が明らかに軽くなる。こんなことなら小さい頃から続けておけば良かったと思う。

せっかくなので、身体が固い人向けにストレッチのコツを書いておこう。まずは伸ばしたい筋肉が、どの骨とどの骨にくっついているか確認する。次に筋肉が始まっている部分 (身体の中心に近い方、太腿の裏ならお尻) を入念にマッサージする。そして力をできる限り抜いて、呼吸を止めずに筋肉をゆっくり伸ばしゆっくり戻す。

この方法でストレッチをするようになってから、多少身体は柔らかくなったけれど、小学生の時にもらったプリントのお手本には程遠い。どう考えても例が不適切だったとしか言いようがない。

結論。どんなに良いことでも、個々の個性に合わせた方法でない限り、その人のためにならないばかりか全くの逆効果。

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