自分の人生を振り返る

これは誰の人生というものでもなく、誰に見せるためのものでもなく、ただ自分の人生を振り返るためだけのもの。
これぐらいの人間は見渡せばそこら辺に居るはずだ。

小学生以前――幼少期の記憶

自分の一番子どもの頃の記憶は何だろうか。
そう思って振り返ってみても、おぼろげな記憶しか残っていないので多分この記憶が一番子どもの頃のものだろうというものをあげてみる。

――妹が玄関で泣いていて、私は妹を見つめているというおぼろげな記憶だ。何代も入れ替わってしまった車。今よりも砂利が敷き詰められていた広い庭。周囲には誰も見当たらず、ただ妹が泣いている。

この頃の私には想像力というか、思考がなかった。本能だけの生き物だった気がする。私が自分の中にある思考を意識し始めたのは、保育園に通い始めた頃だったので、それ以前はただ自分の望みを叶えるだけに終始していた。

他人という存在が未分化で、私も妹も親も他人も関係が無かった。ただの背景。食べて、眠り、息を吸う。その本能のままに生きていた。たしかに。

私は子どもの頃から大人になった今に至るまで、人間という者をあまり重要視してこなかった気がする。意識し始めたのは、社会人になり、嫌が応にも他人が何を考えているか、協力が必要になってからのはなしだ。私にとっては、はっきり見えている道筋が他人には見えていないことを知ってイライラせずには言われなかった。自分の能力次第ではなく、社会という強大で自分個人の力ではどうにも出来ないものと向き合うことが必要になったからだろう。それまでは自分の力でどうにかごまかすことが出来ていたのだ。

蛇足はやめて本題に戻る。

私は妹を見つめていた。いつの間にか私の世界の中にいた妹。より身近で一番近い世界を一緒に過ごすことになる妹。
その妹の反応が面白くて、私は妹にいろいろな嫌がらせをした。当時の私にとっては嫌がらせというよりは知識欲。反応が面白かったのだ。私とは違う生き物に興味があった。そのせいで、妹には大分迷惑をかけた記憶がある。しかし、妹も私に負けず劣らずの嫌がらせを行ってきたので、現状はどちらがわるいとも言えないはず。
逆上した妹が恐ろしいのもこの頃学んだ。また包丁を持ち出されては叶わないので、二度とこのようなことはしないだろうが。

それからの記憶もまちまちだ。行動力が異常な妹が仕事に向かった父親を追いかけて、三輪車で迷子になったこと。もう無くなってしまった祖父と家族で旅行に行ったが熱になりもうろうとしていたこと。もう一人、へんな生き物(妹)が増えたこと。
自分と同じ名前を持つ、ごく近くに住む長年の付き合いになることになる友人と、1日だけ保育園ですれ違ったり(友人は幼稚園→保育園、私は保育園→幼稚園に移動した)したこと。
それらは親から話を聞いて、自分の中に作った記憶とは呼べないものに変わっているかも知れないが、私の中ではこれらが記憶として形成されている。

保育園や幼稚園では子どもが用具を取り合ったり、言い争いをしていたり、保育士に言葉が通じずにイライラしたなど、負の記憶がばかりが残っている。
この頃の私にはもう人間不信の卦が出ていたようにも思う。寝たふりをして、大人の話を聞いているような子どもだったので、そうなるのも仕方の無いことだけれど。
強制的に何かもさせようとする大人は、自分にとって完璧なものでなくてはいけないという意識が確かにあって、完璧でない大人には異常なほどに嫌悪を持っていた。とくに、自分の感情を抑制できない子どものような大人に対して、私は軽蔑の感情を覚えていたのだ。
――この大人は関わらなくて良い。そう一線を引いていた。気持ち悪かったから。

しかし、その感情も両親に対しては例外で、よく遅刻してしまう母親も、自分のしたいことを優先してしまう父親にも、そう思ったことはなかった。
私は恋愛感情の分からないアセクシャルという区分に位置する人間なのだが、両親に対しては親愛の情は覚えていると思う。貧乏でもあったし、母から幼少期には暴力を受けたこともあったが、いまはそんなこともなく、両親はとにかくいい人たちだったので、なんだかんだ好きなのだ。なにかを無理矢理させようとすることも無かったし、自由もあったから。
それに、私は小学生時分にはどうして国に所属していなければならないのだろうかと考えていた子どもだったので、自由がなければ、そのまま衰弱していたかも知れない。戸籍を消す方法を模索していたこともあった。
将来の夢は、この世界を一文無しでも旅することができるサバイバーだった。誰にも言ったことはないが。正直、縄文人に憧れていた。

今回の話はこれぐらいにしよう。幼い頃の記憶はそこまで詳細には記憶していないのだ。
幼い頃から変人だったことが確認できた。それが成果だ。

次は、小学生時代について書こうと思う。

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