山脇学園中学2024年度国語帰国生入試(大問一)とってもわかりやすい中学入試過去問の解説
中学受験国語の成功の極意は、
①できるだけたくさんの過去問を解いて、
②正解の理由をよく理解して、
③何度も読み返して復習することです。
間違えた問題は、本文の正解の理由になる部分に色をつけると効果的です。色鉛筆で問題ごとに色を変えてみてください。
※この解説は保護者の方が声に出して読んでいただけると、生徒さんの理解が格段に深くなります。
養老孟司先生の『ものがわかるということ』からの出題です。養老先生は難しいことでも、わかりやすい文章で書いてくれるので、本当の頭の良さを感じますね。
問一Ⅰ直前の「ドミノ理論」の意味を言い換えて説明しています。
Ⅱ前後で「感覚的にわかってきます」と「相手の呼吸も息遣いもわかりません」が反対の意味になっています。
問二「風光明媚」山や川などの自然の景色がすばらしく美しいこと。
「森羅万象」宇宙に存在するすべてのもの。
「花鳥風月」自然の中にある美しい景色や美しいもの。文学や小説のテーマになるのは花鳥風月です。
「疑心暗鬼」疑う気持ちを持つと何でもないものまで(ありもしない鬼のように)恐ろしくなること。相手が生身の人間のだからこそ、相手がわからないことで不安になります。
「前後不覚」前と後ろの区別がつかなくなるほど判断力がなくなること。
「優柔不断」ぐずぐずしていて物事の決断ができないこと。
問三線①のすぐ後ろの部分に「テレビの映像は、一見、公平・客観・中立なものに見えますが、テレビの映像はカメラマン個人の視点です。テレビが普及して以来、一個のカメラが撮っている映像を全視聴者が見るという、非常に異常な事態が続いているのです。そうすると何が起こるか。視聴者はその一つの視点が現実であるかのように感じてしまう。一人の視点を全員が共有できるような錯覚が生じるのです。現実の人間は視点を共有することなんてできません。」と書いてあります。現実的には視点を共有することはできないのに、カメラマン一人の視点から撮影されたテレビの映像を見ることで、全員が同じ視点を共有できるように感じてしまうということです。
問四1ページの下の段の初めの部分「私の寒いと他人の寒いは、感覚としては同じはずがありません。身体が違うのですから、感覚を共有することはできない。人によって感覚はそれぞれです。しかし、寒いという概念を共有できなければ、話は進みません。だから寒いという言葉が必要になるのです。こういうふうに感覚の世界は人それぞれ全部違うということがわかっていれば、言葉をありがたいものだと感じます。感覚だけではわかり合えなかった事柄を共有できるようになるからです。」と書いてあります。「概念」とは、何かがどんなものなのか、どういうことなのか、それがはっきりとわかる内容のことです。
問五1ページ上段の最後の「感覚が落ちると。言葉や概念の重要性にも気づけなくなります。感覚が抜けた人たちは思考のすべてが言葉から始まってしまう。初めに言葉ありき、になるのです。」の部分です。「初めに言葉ありき」は「言葉を前提とする」という意味す。また、聖書の中にも書いてあって「創世は神の言葉から始まった」とう意味です。
本来、他人の感覚を理解することができないので言葉による概念ができたわけですが、「初めに言葉ありき」(まず初めに言葉があった)では、順序が反対です。
問六適当である理由を探してみましょう。
ア2ページ上段の初めの方です。「感覚が働かないので、つかず離れずという距離感をつかむことができないのです。」
イ2ページ下段の前の方。「人からどう見られるか、人とどうつき合うか。こういう関心だけで世界が成り立っているのはもったいないことです。」
エ1ページ下段の最後。「都会には人の作ったものしか置いていないので、何か不愉快なことが起これば他人のせいになりやすい。」
問七1対物の世界は対人の世界と対になる考え方です。2ページ下段の真ん中あたりに「自然の風景というのは、人間の外側に、人間の意志とは無関係に広がっています。」と書いてあります。
2自然は人間の思い通りにはなりません。3ページ上段の中ほどに「世の中には思い通りにならないことがあることを知る。」と書いてあります。
問八1ページから2ページ上段までの内容のまとめです。「現代人は総じて、感覚的に捉えることが苦手な人が増えています。」と書き出して、2ページの初めに「感覚が働かないので、つかず離れずという距離感をつかむことができないのです。」と続き、その結果2ページ上段の終わりで「人ばかり相手にしようとすると、疲れたり不安になったり、イライラしたりする。」と、対人の世界の典型である、SNSの問題点を論じています。
問九2ページ下段から3ページで「対人の世界でも対物の世界でも、多様な場所に身を置けば、何事も自分の思い通りにならないことがわかります。世の中には思い通りにならないことがあることを知る。それが寛容の始まりです。」「寛容になるためには、思い通りにいかないことを受け入れたうえで、少しずつ状況を変えていくしかありません。それには自分だって変わらなきゃいけない。そうやって人間は努力・辛抱・根性の方法を学んでいくのです。」と、人間の本来あるべき姿について論じています。
たまには自然の中ですごして、自分の思い通りにならない不便や不自由を体験することで、多くのことを学べるのかもしれませんね。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
これからも頑張ってわかりやすい解説を書いていきます。
受験生の皆さんも問題の文章を繰り返し読んで読解力を身につけてください。
合格をお祈りします!
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現在、英検1級に挑戦中で、不合格体験記を書いています。
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