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ドラムを叩かないコアな音楽ファンがドラマーを解説すると・・・???

ものすごくコアな音楽ファン(特にロック・ファンク・ソウル・フュージョンなど)であり、自身もバンドマン/ギタリストで、大人気YouTuberである「みのミュージック」のみのさんが、ドラマーとしてはスルーできない動画を上げていました(2020.9.8)。



Rolling Stone 誌(アメリカ発。ポップミュージックやカルチャーを扱う老舗雑誌)に掲載された、「100 Greatest Drummers of All Time(史上最も偉大なドラマー100人)」という記事をもとに、みのさんがドラマーを紹介していくというもの。

この動画とRS誌の記事、ドラマーである僕には、いろんな意味で面白く、頭を殴られて目を覚めさせられたような気分になります。

それはどうしてかというと、


・ドラマー以外の人を含めた音楽ファンがベストドラマーを選ぶと、ドラマーにとっては意外(?)な結果になる。

・本業がギタリストであるみのさんがドラマーを解説すると、ドラムをプレイする人にはあまりない視点、感覚、言葉で語られるので、びっくりする。


からです。


ドラマーは、他のドラマーを評価するときにどうしてもプレイヤーとしての自分の事情(特にテクニックの面)を投影しちゃって、それが原因で一般の方々からの目線とか、音楽の本質から求められているドラマーの在り方とかからかけ離れてしまい、かなりうがった評価をしてしまうことがあるんですよね。

うがってしまうことは人として当たり前のことであって大事な個性なのでそれ自体は悪いことではないんだけど、「自分の意見は一般大衆(リスナー)と比べてこれぐらいかけ離れている」というのは認識しておくといろいろ役立つよね。例えば、作曲の仕方とか、ドラムアプローチの仕方とか、必要な技術とか、そういったことを考えたりするときに、ひとりよがりになってしまうことを防ぐことができる。

「ドラマーって、ドラマー以外の人達には、こんな風に聴こえているんだ~~~」と気づくことで、自身のドラマーの在り方を本質のところから見直すきっかけになります。


というわけで、「Rolling Stone 誌 が選んだ100名のドラマーの中から、みのさんが注目し解説したドラマーを、イトウが解説する」note、いきます!



【94位 Meg White】

ホワイト・ストライプスのドラマーは、メグ・ホワイト以外考えられないでしょう。ジャック・ホワイトのヴィジョンに完璧にマッチしてるプレイだと思います。

・・・いきなりごめんなさい。名前しか知らない。

ホワイト・ストライプスって、グラミー賞も取ってるんですね。世間知らずでスイマセン。

いや、一回もホワイト・ストライプスって聴いたことないのに、メグ・ホワイトの名前をなぜか僕が憶えているのは、それでそれで興味深い。それだけ活動当時、名前が広まってたんですね。


というわけで、聴いてみました!


僕の印象は・・・「ドラマードラマーしていないドラマー!」。

「超シンプルの極み!素材そのまんまみたいなドラミング!」


なんか、普段ドラムをあまり叩かないギタリストとかベーシストが遊びでドラムを叩き始めると、こういうドラムサウンドになるよね。

ホワイト・ストライプスは「ギターとドラムのデュオ」ではなくて、あくまでも「ジャックとメグのデュオ」っていう感じがする。「あまりドラムでなきゃということにこだわっていないドラム」とでも表現すべきか。ドラムが先にあったんじゃなくて、2人で音楽を作ろうとしたときに「ドラムがいいんじゃないか」とそのときにはじめてドラムが登場する感じ。

テクニック的には洗練されていない感じで、タイムも揺れまくりなんだけど、その揺れがすごい自然発生的というか、ジャックの呼吸にシンクロしているというか、、、。メグ・ホワイトというドラマー単体では評価できなくて、ジャックとメグの2人でようやく評価できる感じになるドラマーだと思います。

「ホワイト・ストライプスのドラマーは、メグ・ホワイト以外考えられない。」とは、まさにそのとおり。メグ以外だったら、そもそもホワイト・ストライプスは誕生しなかったでしょうね。

参考音源に聴いたのはこれだったんですが、ドラムの音、めっちゃ好みです。シンプルで生々しいロックこそこういう音でやりたくなります。



【81位 John "JR" Robinson】

この人はもう本当に数えきれないくらい死ぬほど色んな曲で叩いているセッションミュージシャンの方ですよね。

みのさんのコメントはたったこれだけですが、これだけで十分なくらいジョンのドラマーとしての活躍ぶりを表しています。大半の世界的大御所とは仕事したことあるんじゃないでしょうか・・・


Michael Jackson、George Benson、Quincy Jones、Patti Austin、Donna Summer、David Lee Roth、Diana Ross、Whitney Houston、Maurice White、Steve Winwood、Madonna、Lady Gaga、、、


もう、共演歴をテキトーに並べるだけで、音楽スターの辞典が完成してしまうほどのすごいお方です。上記以外にも、たくさんいろんなスターと演奏しています。

しかしながら、僕個人としては、ジョンのドラムの大ファンというわけではないんですよね。すごい経歴の方であり、素晴らしいプレイをしているのに、なぜか印象に残らないという。こういう感覚を持っているドラマーは多いと思う。これだけ活躍していて、テクニックが確かで、知名度も高いのに、ドラマー同士の会話でジョンの名前が出てくることはめったにない。少なくとも僕の経験では「好きなドラマーは?」と尋ねて「ジョンロビンソン」と答える人は会ったことがない。

この「素晴らしいプレイをしているのに、なぜか印象に残らない」というのがジョンのプレイの本質を捕まえていると思います。彼のプレイはまさに「バンドの土台を支える存在としてのドラマーの役割とはなんぞ」を完璧に体現していて、彼の無味無臭なプレイのおかげでめちゃくちゃフロントマンが際立ちます。

もちろん、機械音のような「本当の意味で無味無臭」なわけじゃないですよ。「あたかも無味無臭に聴こえる職人技」をやってます。その曲の、そのバンドのグルーブに完璧に一体になって溶け込んじゃうって感じ。

ジョンのドラムを改めて聴きながらこの記事を書いているわけですが、基本ヘヴィに叩きこんでいる(※)のに同時に不思議な軽快感があります。それでいて「これこそジョン」みたいなわかりやすいシグネイチャーフレーズがあるわけではないので、言語でこの魅力を説明するのがとても難しい・・・。

(※そういえば、昔販売されていたジョンのシグネイチャースティック(zildjianからだったかな?忘れた・・・)はめちゃくちゃ太くて長かった。径16mm以上で長さ420mm以上あったような・・・。意外にバランスがとれていて振りやすい、ボール型チップのスティックでした。)

ドラマーからは過小評価されやすいドラマーかもしれないですね。逆にヴォーカリストからの評価はめっちゃ高そう・・・。

ちなみに、テクニック的には相当すごいです。バークリー音楽院を出ていて、深いジャズのバックグラウンドがあり、シンバルの繊細なタッチやダイナミクスの広さにそれが垣間見えます(アメリカのポップシーンで活躍しているスタジオドラマーって、普段は演奏しないけれど、必ずクラシカルなオールドジャズをしっかり身に着けている、っていう印象ありますよね。)。


たった2人紹介するだけでこんなに長く書いちゃった。

これは気の長いシリーズになりそうだ。。。

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