臨床研究にはどんな種類があるか
前向きコホート研究、後ろ向きコホート研究、ケース・コントロール研究、RCT…これらの違い説明できますか??
臨床現場で得た疑問(Clinical Question; CQ)を検証するために、様々な臨床研究が行われます。主要な研究デザインをまとめました。
⚫どんな種類があるか?
大まかに分類すると、
◎介入研究(Interventional Study)
○ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial; RCT)
○非ランダム化比較試験
◎観察研究(Observational Study)
○分析的観察研究
●横断研究(Cross-sectional study)
●縦断研究(Longitudinal study)
・コホート研究(Cohort study)
・ケース・コントロール研究(Case-control study)
○記述的研究
●症例集積研究(Case series study)
●症例報告(Case report)
介入研究と観察研究の違いは文字通り、対象者に介入を行うのが介入研究で、行わないのが観察研究です。
介入研究は、ランダム化(無作為割付)をすればランダム化比較試験、しなければ非ランダム化比較試験と分類されます。
観察研究は、比較対象(Control)を置くかどうかによって分類し、比較対象があれば分析的観察研究、なければ記述的研究と分類されます。
分析的観察研究は、要因とアウトカムの測定時期で分類し、同時に測定するなら横断研究、要因とアウトカムを別々の時点で測定するなら縦断研究と分類されます。
縦断研究は、観察の時間軸の方向性によって分類します。時間軸に沿って要因、アウトカムの順番で観察する場合はコホート研究と言います。時間軸に逆らってアウトカム、要因の順番で観察する場合はケース・コントロール研究と言います。
では、どういった目的に応じて各研究デザインが選ばれるのでしょうか?
1.疾患や診療の実態を把握したい場合
2.要因とアウトカムの関係を調べたい場合(できれば因果関係、無理なら相関関係)
3.要因とアウトカムの因果関係のみを調べたい場合(特に治療・予防の効果)
⚫疾患や診療の実態を把握したい場合
疾患や診療の実態を把握したい場合、記述的研究が主流とされています。疾患の罹患率を調べる全国調査や症例報告、症例集積研究が含まれます。
メリットとして比較的短い準備時間で行えますが、デメリットとして比較対象がないので、要因とアウトカムの評価や治療効果の評価には使えません。
⚫要因とアウトカムの関係を調べたい場合
要因とアウトカムの関係を調べたい場合には、コホート研究、ケース・コントロール研究、横断研究の順番で適しています。
コホート研究からは因果関係の強さが推定できますが、ケース・コントロール研究では因果関係の評価にバイアスがかかりやすく、横断研究では相関関係しか評価できません。
◎コホート研究
要因を測定した後にアウトカムを測定するといったように、観察が時間軸に沿っているというのが一番のメリットで、因果関係の強さを評価できます。ただ、時間と費用がかかるので、アウトカムの発生が稀な場合、アウトカムが出るまでに長時間かかる場合には適していません。
前向きコホート研究、後ろ向きコホート研究という分類がありますが、これは時間軸のどの部分で試験を行うかで分類しています。
前向きコホート研究は、観察開始時点が現在で将来アウトカムを測定します。
後ろ向きコホート研究は、診療録やレセプトデータのみを用いて過去のある一時点から観察を開始し、アウトカムまで測定します。時間軸に沿っている点は前向きコホート研究と共通ですが、測定データは取り終わっているという違いがあります。時間やコストが少なくて済むというメリットがありますが、データの完全性に難があります。
◎ケース・コントロール研究
ケース・コントロール研究は、コホート研究と異なり観察が時間軸に逆行して行われます。つまり、診療録などを用いて、まずアウトカム発生群を同定する。そして元のリスク集団から比較対象群をサンプリングし、調べたい要因について過去に遡って調査するという流れになります。
後ろ向きコホート研究と同様、時間やコストが比較的少なく、稀な疾患に有用な研究デザインです。しかし、デメリットとして、アウトカムの有無で群をわけるのでアウトカムを一つしか扱えない点、アウトカムの発生率や存在率を扱えない点、バイアスが入りやすい点などが挙げられます。
バイアスとしては、以下のようなものが考えられます。
・情報バイアス:曝露・非曝露の情報が曖昧
・選択バイアス:曝露分布の代表性を満たさない選び方
◎横断研究
横断研究は要因とアウトカムを同時に測定します。例えば、一日の歩数と体重をアンケートで回答してもらうなどが該当します。
比較的安価に行なえますが、因果関係の評価は行えず相関関係の評価までしかできません。
⚫要因とアウトカムの因果関係のみを調べたい場合
治療・予防の有効性を調べたいときには、介入研究が最も適切です。介入群、非介入群に分けた対象者を前向きに観察し、アウトカムの比較を行います。
適切にデザインされたRCTは強力なエビデンスを提供しますが、均質な集団を抽出して試験を行っているため、実臨床の場でよくみられる生活習慣病をいくつもかかえた高齢者などに対して適用しにくいのがデメリットです。
⚫まとめると
疾患、診療の実態を把握したい → 症例報告、症例集積研究
要因とアウトカムの関係を調べたい(資金、時間の余裕あり) → 前向きコホート研究
要因とアウトカムの関係を調べたい(資金、時間に余裕ない or 疾患が稀) → 後ろ向きコホート研究、ケース・コントロール研究
治療の有効性を調べたい → RCT
⚫残る疑問
・ケース・コントロール研究が後ろ向きコホート研究に勝っている部分がわかりにくい。試験からの離脱が少ない?集団がより純化されてる?
・数理モデルを用いて予測する論文は何に当たる?
【参考】
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