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オトモダチ

週末。
昼を過ぎた太陽がジリジリと全てを照りつける。エントランスを出た彼女はあまりに眩しい日差しに目を細めてから日傘を差した。

しばらくするとよく磨かれた白のセダンが彼女の目の前に停車した。カチャリとドアキーが開き、彼女は唇の端に少しだけ笑みを浮かべてセダンのドアを開き、滑るようにシートへ身を沈めた。

…私には少し年上の「オトモダチ」がいる。
そもそもは「オツキアイ」だった関係だけれど、何度かの大きな喧嘩のあと、オツキアイはオトモダチになったようだ。いや、オツキアイなのかと私はいつも彼に問うことが出来ずにいる。

怖いのだ。彼と私の関係を「キチンと」確認するのが怖くてたまらないのだ。彼はオトモダチのつもりかもしれない。いや、それ以下かもしれない。なのに私は彼にまだ「スキ」というとんでもなく面倒な気持ちを持ち合わせている。

関係の名前なんてどうでもいい。
とにかくこうして「つながれる」のなら、私はそんなものどうでもいい。なのに。

…今週末もこうして、私は彼の握るハンドルを見つめながら、オトモダチとして車に乗る。
必死で「スキ」を、隠しながら。