『全治不詳』というコトバ

それって日本語?

 または「全治不明」。
言いたいことは分かる。わかるけどね。
最近ネットニュースで目にして大きな違和感。そんな言葉あったっけ?

試しに「全治不詳」で検索してみた。結構ニュース記事に使われているらしい。
Y新聞とか大手新聞社でも使われていた。
でも、辞書に載っている様子はない。
もちろん、「全治」と「不詳」「不明」はそれぞれ辞書には載っている。
でも、繋げてひとつにするのはどうなの…。


どうやら法律用語らしい

 検索しているとちらほら判例文らしいものがあるので、どうやら裁判で使われる言葉のよう。
実際に検索してみると、31件ヒット(2024年6月14日現在)。
なぜか本文中に含まれていない事案が1件あったので、今回検索した中では30件該当した。
「全治不明」、「全治不詳」どちらも使われている。一判例の中では統一されているが、どちらを使うか、という基準はちょっと分からなかった。単に裁判官の感覚なのかも?

もともと法律用語は特殊なものが多いし、判例で使用されるのはあまり気にならない。おそらくこういう所で聞きかじった(と言ってしまおう)記者さんとかが単に便利だから記事でも使ったんだろうな~と推察。
でも再度言おう。
『辞書にも載っていない言葉を報道で、何の注釈もなく使うのはどうなの??』
特に大手新聞社はもっと敏感になって欲しいと思うのはわがままだろうか…。
もし、この言葉が一般に広がったとして、市民権を得たとかって辞書に載るのは何だかイヤだなあ。まあ傷害事件など限られたケースにしか使わないから可能性は低いけれど。


あえてどちらかなら

 なぜ報道で使われるともやっとするのか?
その言葉自体が意味不明というか、曖昧だからではないかと。
「全治」(という言葉も医師はほとんど使わないらしいが)が「不詳」または「不明」と言う場合、それが
『治るまでの期間』なのか、『そもそも治るのか』なのか、どの程度の状態が『全治』なのか(これはちょっと意図がずれるが)、とか、具体的に何を示しているか分からなくなる。
もちろん、感覚的には分かったような気がするかもしれない。

「意識不明」「年齢不詳」はどちらも、どんな状態なのか、何が不明・不詳なのかはっきりしているよね。
でも「全治」を「不明」や「不詳」とくっつけてはいけない。と思う。

個人的にはあえて使うなら『全治不明』(いつ治るか分からない、不明)かな?
使わないけどね。



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