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ある1匹の子犬が忘れられない

どうも〜!梅雨入りしましたね〜、低気圧から
の偏頭痛に悩まされております自我楽苦です。

僕は週3.4回リンゴやリンゴジュースを住宅街
や駅前にゲリラで売りに行くりんご行商のアルバイトをしていた。

そんな時に出会った1匹のパピヨン。

いつものように店から2人で車にリンゴを積み
住宅街に出向き僕は助手席で現場に着くのを待つ。

着いて降りたらひたすらインターフォンを
押しリンゴやリンゴジュース入りませんか〜?
と声をかけていき買いたい人がいたらもう1人
の運転手に報告して運転手がその家の前に行き
味見をしたり接客をしてる間にまた次の買いたい人を探すを繰り返すりんごの移動販売。

今やネット通販やふるさと納税の返礼品や生協やイオンですら頼めば家になんでも届く時代の中で
中々そう簡単にほな買いますわとはならない。

そんな中ある1件の住宅のインターフォンを押すとインターフォン越しに出るわ!とだけ告げられた。

しばらく待っていると玄関の扉が開き50代位のご主人が白いパピヨンを片腕に抱き出てきた。

出てくるとご主人はそのパピヨン
を地面に置き陽気な笑顔と口調で
「なんやった兄ちゃん」と僕に言った。

パピヨンが足元にスラスラと寄ってきてるな〜
と思いつつ「今日リンゴ屋でこの辺でリンゴとか車積んで来てるんやけどおっちゃんリンゴとかいらへん?」と返した。

おっちゃんは笑いながらすかさず「なんやりんごかいな!でも俺食わへんしりんごはいらへんわ
酒やったらええけどな〜と」と笑い混じりに返してきた。

そんなやりとりをしてる間に尻尾が垂れ下がったままヨタヨタと自分の足元に擦り寄ってきたパピヨンが僕を見上げている。

僕は若干の違和感を感じた。

このアルバイトを1年位続けている経験上玄関先から犬が出て来た場合尻尾を振ってすかさずやってくるか絶妙な距離感でめちゃくちゃ吠えてくるか抱き抱えた状態かの3パターンがセオリーなのだがこのパピヨンは違った。

僕の足元にきて吠える訳でも尻尾を振る訳でもなく静かに僕を見つめて離れようとしないのだ。

するとご主人が「はよこっちこいよ〜家入るぞ兄ちゃん困ってるわ」とそのパピヨンに向かって言う。

パピヨンは僕の足元から離れようとしない。

痺れを切らしたご主人は舌打ちをして僕の足元にいるパピヨンの方に向かってくるとそのパピヨンが一瞬立って僕の膝に前脚をついてまた足元で僕を見つめて小刻みに震えている。

そのままご主人が笑顔で「ごめんな〜」なんて言いながら近づいて足元にいるパピヨンを抱き抱えようと手を差し伸べようとした瞬間…

そのパピヨンが人が人に殴る振りをした時に
防御耐性に一瞬入るあの体制になったのだ。
友達同士ならはいビビった〜なんて言いながら
やる遊びの一環のあれだ。

そしてそのままご主人に抱き抱えられ笑顔で
「兄ちゃんまたな〜」と玄関のドアが閉まった。

僕は色々悟った。

人当たりもよく優しくやんわり断ってくれた
ご主人だがあのパピヨンは確実にご主人に怯えていた。

表向き陽気な分逆にご主人の裏の面が垣間見え
怖くなったと同時にあのパピヨンは僕に助けを必死に訴えていたんじゃないかと思うとたまらない気持ちになった。

これが僕の勝手な憶測だといいのだが、飼い主
が手を差し伸べただけでビビり散らかすような
萎縮した環境で毎日過ごしてると思うとあの時
何か出来る事はなかったのかと…あのパピヨン
からしたら自分は最低なやつやんなとか……
今でもふと思い出して軽く考え込んでしまう。

これが小さい子供なら表札と車のナンバーを控えて然るべき所に連絡したりそのおっちゃんと何かしら対峙したりする自分は想像出来る。

でも人の家の犬に対してはどうしていいか分からなかった…僕はこれからあのパピヨンに対する十字架を背負って生きていく事を決めた。












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