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ウマ娘5thとユニット甲子園に見た「音楽ライブに実況」という新たな可能性

女子スポーツ作品好きのHSP勢オタクがお送りする「オタ語り」。

今回は、『ウマ娘』と『ラブライブ!』という人気コンテンツの音楽ライブにおける特徴と、今後の新たな可能性について少し語っていきたいと思います。

私は二次元の女子スポーツ作品を一貫して25年近く追い続けている者でして、それに加えて実際の女子スポーツも気にかけており、応援しています。

日本唯一(自称)の女子スポーツ作品専門ブログもやっていたりするので、興味を持たれた方は冒頭のnote初投稿などをご参照いただきたく。


キャストが参加する音楽ライブ

アニメやゲームなどのメディアミックス展開されるコンテンツにおいては、作品に登場するキャラクターを演じるキャストが「音楽ライブ」に参加することが増えてきています。

その先駆けともいえる存在が『ラブライブ!』や『アイドルマスター』といったコンテンツで、キャストが参加するライブは東京ドームでツアーを行うまでに成長し、2023年12月には両コンテンツがコラボする『異次元フェス』が開催され大いに盛り上がりました。

ゲームや音楽CDの売上は減少傾向にある中、(コロナ禍でいったん落ち込みはしましたが)リアル音楽ライブの売上は過去最高を記録しました。

エンタメの多様化で、既存の娯楽作品が苦境に陥る中でも、「生」の体験を重視する音楽ライブには根強い需要があることが明らかになっています。

声優キャストが参加する大型コンテンツのライブなどでは、現在も人気のツアーは競争率が高く、発売からすぐに売り切れてしまうこともしばしばです。

コロナをきっかけに広がったライブの「配信」

右肩上がりに成長を続けてきた音楽ライブ市場も、やはりCOVID-19の影響を免れることはできず、音楽ライブでも無観客で配信されたり、声出しが不可能になったりしました。

しかし、私のように「人混みが苦手」だったり、「大きな音や点滅する光」などの刺激が苦手なHSP気質のある人間にとっては、ライブ配信というのは有難い存在でもありました。

「皆で騒ぎたい」という観客もいるでしょうが、「キャストのパフォーマンスをじっくり見たい」という私のようなタイプの人にとっても、ライブを楽しむことができるようになった意義は大きいと思います。

配信ライブについて様々な課題はあると思いますが、それまで音楽ライブの魅力を知らなかった層にも、裾野を広げる効果があったような気がいたします。

「スポーツ中継」を意識した音楽ライブ構成

先日2024年3月9,10日にKアリーナ横浜で開催された『ラブライブ!』シリーズのユニットが登場するライブ『ユニット甲子園』。
(私も配信で視聴いたしました)

そこに起用された「実況」の存在に、私は驚きました。
『ウマ娘』のNHKアニソンプレミアム特集にも登場していた、《藤井康生》アナウンサーの名前がクレジットされていたからです。

※ちなみに、「解説」役で参加していたのは、その『ウマ娘』で【キタサンブラック】を演じていた《矢野妃菜喜》さんでした。

ⒸNHK 「ウマ娘×競馬SP」 アニソン!プレミアム!

《藤井康生》アナウンサーは、大相撲や高校野球、さらにはオリンピック中継など様々な実況を経験されてきたレジェンド的存在の方ではあるものの、「ユニット甲子園」においては軽妙なトークで一切威圧感を感じさせない雰囲気が素晴らしかったです。

ⒸNHK 「ウマ娘×競馬SP」 アニソン!プレミアム!

オグリキャップが最後のレースで勝った有馬記念の実況も担当!

これまで、「音楽ライブ」における"進行役"というのは、それほど必要とされるものではなく、様々なアーティストが一堂に会する「フェス」的な場において、アーティスト名を紹介する程度の役割しか持ち合わせていなかったように思います。

しかし、今回紹介する『ウマ娘』や『ラブライブ!』というコンテンツは、ある意味では「スポーツ観戦」との親和性が高いところが注目点であって、観客との一体性を追求し、進行役である"実況"は、まるで『スタジアムDJ』のような性格を纏っていたところが特筆すべき点ではないでしょうか。

「ウマ娘5thライブ」での曲中の生実況

『ウマ娘』というコンテンツの始まりは意外と古く、発表されたのは2016年で、既に発表から8年近く経過しています。

キャストによるライブはゲーム登場前から行われており、2ndライブからは実況役の《明坂聡美》さんが一貫して進行役を務めつつ、セットリストの紹介のみならず、曲中でライブを盛り上げるための様々なセリフを披露することも今作のイベントの特色ではないでしょうか。

「生」のライブなので、時にはセリフが尺に収まらなかったりするトラブルも場合によっては生じたりもしますが、大きなプレッシャーの中でも円滑にライブを進行する明坂さんのスキルは素晴らしいものがあります。

特に、5thライブ東京公演-YELL-の『ソシテミンナノ』(アニメ3期の主題曲)内における間奏での生実況披露はトレーナーの間にも伝説として語り継がれるレベルのパフォーマンスでした。

映像に合わせてアフレコを行う、という声優さんの技術が極限までに活かされた『ウマ娘』のライブイベントで、他の作品においても声優さんが音楽ライブで実況を行うというスタイルが定着するきっかけにもなる可能性を感じました。

「推し活」とともに増える「応援上映」

近年、映画館で「応援上映」というものが開催される機会が増えてきました。

映画館で行われる応援上映は、ライブビューイングとは異なり、既に映像として完成されたものを見つつ、応援を行うという点ですが、そうした体験を求める観衆は「臨場感」を求めているともいえそうです。

アイドルなどの「推し活」全盛の現代、自分の「推し」を応援したい!
そういった気持ちが、ファンを応援上映に駆り立てるのかもしれません。

スポーツ観戦などにおいても、観客の「声援」が選手の後押しになることもしばしばで、無観客で行われるスタジアムと、満員の観衆で埋め尽くされたスタジアムとでは、選手のパフォーマンスにも差異が出てくるという研究結果もあるようです。

無観客によるメリットもあるようですが、やはり選手にとっては、観客の存在が力になる部分も大きいと思うので、それは音楽ライブにおけるキャストの方々にも通じるところはありそうです。

考察:『ラブライブ!』が「甲子園」をモチーフにした理由

ウマ娘』は実在の競走馬をモチーフにした作品で、当然ながら実際の競馬の要素を作品に取り入れ、かたや『ラブライブ!』については、「スクールアイドルもの」という認識の方も多いでしょうが、実は「ラブライブ!」という大会を優勝するために頑張る「青春部活もの」という側面があります。

※以前私が外部ブログで『ラブライブ!』と『スポーツ』の親和性について述べたエントリがあるので、そちらも参考にしていただければ。

Jリーグやパ・リーグなど、過去にもプロスポーツとのコラボを多く行ってきた『ラブライブ!』。
ストーリーが「スポ根」であることもそうですが、会場での「ライブ体験」が声出し応援を行う「スポーツ観戦」に近いことも、今回「ユニット甲子園」で野球をモチーフにした理由のひとつではないでしょうか。

野球漫画『MAJOR』の作者である《満田拓也》さんはこう語ります。

一般的に「女性のスポーツはパワーやスピードの点で男性に劣るので、つまらない」という評価になりがちですが、僕はそうは思いません。

 その理論で言ったら、大リーグを見た後に、甲子園の高校野球を見たらつまらないということになってしまう。

 そんなことはなくて、高校野球も面白い。

https://www.asahi.com/articles/ASR7G6GVTR73PTQP008.html

一般的には、プロ野球の方が、高校野球よりもレベルは高い。
それなのに、なぜ観客は甲子園に惹かれるのか、それは「ひたむきさ」ではないでしょうか。
「レベルが高いか、低いか」ではなく、「必死に頑張っているか」が重要だと指摘した満田氏に、私も同意したいと思います。

『ラブライブ!』のキャストさんは、ライブでのあれだけのパフォーマンスを見せるために、相当の努力を重ねてきたことは明らかです。

加えて、「スクールアイドル」という限られた時間の中で精いっぱい花咲こうともがく彼女たちの姿は、まさに甲子園を目指して頑張る高校球児の姿にも重なります。

そういった意味で、今回の「ユニット甲子園」の試みは大成功だったと私は思っています。

これからの「実況」

声優さんやアナウンサーという仕事もAIに取って代わられるのではないかという危惧もささやかれている昨今。

しかし、eスポーツの現場や麻雀のMリーグ、そして今回挙げた音楽ライブにおける進行役。
そうした「生」の現場において、AIが「場の空気」を読み取りつつライブを進行するというのは難しい気がします。

野球の審判なども機械が担うようにすべき、という意見もありますが、例えば絶妙なクロスプレーの瞬間、観客がかたずを飲み、判定を待つあの一瞬、球場に一瞬静寂が訪れる、あのタイミング。

そこでコールされる「セーフ!」「アウト!」の宣告とともにどっと沸きあがる球場。
あの「熱」をAI審判でどうやって再現できるでしょう。
おそらく無理のような気がします。

「生」という予測不能な出来事。
それは、過去のデータの蓄積だけで判定される人工知能では対処しきれないのではないでしょうか。

時に観客を煽ったり、アドリブを加えつつ、観客を盛り上げる。
『ウマ娘』5thイベントでの明坂さん、『ラブライブ!』ユニット甲子園での藤井アナウンサーの素晴らしい機転の利いた「実況」に、私はこれからの新しいライブの可能性を見たような気がしたのでした。

※ちなみに『ラブライブ!』と『ウマ娘』のキャストを兼任されている方も何人かいらっしゃいますので、個人的には2つの作品の異次元フェスのようなクロスオーバーも期待しております…
(ライブ制作はどちらもバンダイナムコミュージックライブ)

ネイチャ先生がお礼を言いたいようです

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