‘‘めくばせ’’は秘密の共有
わたしのTwitterを知っている人から、必ず聞かれることがある。
「どうして‘‘めくばせ’’っていう名前なの?」
今週の月曜もそういったことを聞かれたわたしは、どうして、と相手の言葉を繰り返して、半分ほど飲んだハイボールに視線を落とした。
高嶺の花である彼女の色っぽさ
その名前にした経緯を、彼女なしには語れない。
18歳のときに出会った、7つか8つ上の女性。
彼女は服飾学生時代の同級生で、わたしがそれまで生きてきてはじめて「色っぽい」と感じた人だ。彼女以上に色っぽい人を、未だに見たことがない。
艶々とした黒のロングヘアに、シンプルなピアス。ぱっちりとした二重を縁取る長い睫毛と、なめらかな輪郭。
留学経験のある彼女は形のよい唇で、歌を歌うように英語を話した。
凛としていて、まさに高嶺の花。
ユーモアを散りばめた会話には知性が垣間見え、どこまでも聡明で、THE天秤座の女。
すべてにおいてバランスがとれていて、とてつもなく色っぽい人だった。
‘‘めくばせ’’は秘密の共有
色っぽさの理由の1つに、‘‘めくばせ’’がある。
彼女は、特別に仲のいい人間にだけ、よくめくばせをしていた。ぱちぱちと瞬きをしたり、目を細めたり、ウィンクをしたり。
常にフラットで、誰とでも公平に付き合い、すべてにおいてバランスが良い彼女と、秘密を共有しているようだった。
視線を交え、ふたりだけの会話をする瞬間。
微かに揺れながら均衡を保っている天秤が、ほんの僅かこちらに傾く瞬間。
ああ、こんな風に秘密を共有したい、と思った。
彼女が「‘‘めくばせ’’ってことば、色っぽいよね」と呟いていた日は、まだ記憶に新しい。
「何かが変わるかもしれない」可能性
人の目が好きだと思っていたが、ほんとうは視線が交わる瞬間が好きだと、今気がついた。
相手が本を読んでいるとき、頬にできる睫毛の影。こちらに気がついて、ふっと視線が交わる瞬間。
呼ばれて振り向いたあと、別々に漂っていたふたりの空気が絡み合う瞬間。
瞬きの速度や瞳のゆれかた、空気の動きかた、視線の温度から感じるメッセージ。
秘密の共有は、何かが変わるかもしれない可能性を孕んでいる。
その可能性に惹かれているのかもしれない。
今後も秘密を共有するようにツイートしていきたいし、あわよくば、特別な人に‘‘めくばせ’’をして、視線だけで会話をしてみたい。
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