うつ伏せで

小学生の頃、ご近所で仲の良い1つ年下のAと毎日登校していた。
決まりごとは交代でお互いの家まで迎えに行くこと。その日はAが家に来てくれる日だった。

朝御飯を食べて学校に行く準備をしていると、同じ階に住む自治会長さんが慌てた様子でうちの祖母を呼びに来た。

玄関先のやりとりに聞き耳をたてる。

どうやら隣の建物との間で人が亡くなっているらしい。

ほどなくしてAが到着、ついさっきの出来事に後ろ髪引かれながらエレベーターに向かう。
エレベーターを待つ間、興味本位で少し背伸びして下を覗いてみた。

長い髪、白のノースリーブ、水色のロングスカート。細身の女性がうつ伏せで横たわっているのが見えた。

「なになに?うちも見たい~!」と言ってきたAは下を覗き込むには少し背が足りなかった。

祖母が言うには以前から隣の建物は飛び降りや事故が多いとのことだった。

周りにあまり高い建物がなかったし、セキュリティもさほど厳しくなかったのも要因かもしれない。

ロングスカートの女性が落ちた建物脇の階段はそれまで窓も何もない状態だったが、その後全階に柵がとりつけられた。

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