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急性心不全のクリニカルシナリオ(CS)分類

 さて、みなさんよく「CS1の心不全です」とかいう言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。このCSってなんだ?という疑問にお答えしようと思います。内容は超ソフトなので、どうぞ最後までお付き合いください!

クリニカルシナリオ分類

背景とか、提唱されたきっかけとかが教科書には書いてあって、そこを読むだけでうんざりした人も多いと思います。また、下図のようなものを見せられて「あー、また暗記するの大変なやつだ」と思った人もいるかも知れません。違います!!この分類の最大のメリットは、もっとシンプルなところにあるのです!

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クリニカルシナリオ分類が伝えたいメッセージは「2つ」

 クリニカルシナリオ分類は1~5までありますが、これをいちいち暗記するメリットはありません。まず、押さえておいてほしいことは、「CS分類は、救急外来などに搬送されてきた心不全疑いの患者の初療方針を(面倒な検査結果を待つことなしに)おおまかに決められる」ことにあります。

① 血圧が高い「心不全疑い」患者では、まず血圧を下げなさい

 CS1~3は、実は血圧だけで分類されています。これが「画期的」なのです。低酸素血症の患者が、起座位で酸素を投与されながらER(救急外来)に運ばれてきたら、まずバイタルサインをチェックしますよね。このとき、あなたの目の前のモニターに表示されたその「収縮期血圧」だけで、CS1~3のどれになるかが決まるのです。なんと「早い!」判断ができるのでしょうか。

 そして、多くの場合、心不全であれば、「降圧」だけでみるみる酸素化が改善することがあります。はやめに介入してあげましょう。
 救急外来に搬送されてきた低酸素血症の患者さん。収縮期200mmHgの血圧があるのに、採血が出る「1時間」もの間、降圧せずに「起座呼吸でヒューヒュー言わせておく」のは「もはや罪」ですよね?
 放置している間に経時的に病状が悪くなることもあります。
 フライングでも良いです。もしかするとまったく違う病態かもしれません(あまり思いつきません)が、そのときは薬を止めるか、流量を減らせばよいだけです。シリンジポンプで投与する循環作動薬は、そうやってフレキシブルに使えることもメリットの一つです。

② ACSと右心不全(特に肺塞栓)は、根本治療が必要なので見逃すな

 ぶっちゃけCS4と5は覚えなくて良いです。「心不全疑いの患者が来たら、ACSと肺塞栓は必ず念頭においておけ」というメッセージだと捉えています。これらの場合は「標準的な心不全治療」だけでは良くならない可能性があるからです。特に、ACSと肺塞栓は超急性期に適切な治療ができるかどうかで大きく予後を規定しますので、「必ず頭の片隅に」入れておいてくれよ、というメッセージなのです。

まとめ

 クリニカルシナリオ分類は、高い血圧は早めに下げろ、ACSと肺塞栓は見逃すなよ。というメッセージなのだ、とお伝えしました。このことが理解できれば、臨床の流れもざっくり理解していただけると思います。また、教科書に記載されているCS分類や治療についての解説も「すっ」と頭に入ってくるのではないでしょうか。



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