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利尿薬の種類 〜導入編〜

 前回の「降圧薬」に関係して利尿薬の話もしておきましょう。

 教科書に載っているような厳密な分類はさておき、利尿薬を、臨床での役割を考えた上で分類します。

 使用する「場面」ごとに整理された知識というのは臨床で「すぐ使える」知識になりますよ!

WING先輩「流」、利尿薬の分類

まず本記事では、分類の紹介をしましょう!

利尿薬グループ① 体液量のコントロール目的
(いわゆる心不全・腎不全・肝不全による体液貯留に対して)

① ループ利尿薬(体液コントロールの「主力」
② トルバプタン(「水」利尿薬:血管「外」体液貯留に対して「補助的」に使う)
利尿薬グループ②:ループ利尿薬の補助
③ アルドステロン拮抗薬(「K保持性利尿薬」と呼ぶ人もいる)
④ アセタゾラミド
利尿薬グループ③:「降圧薬」としての利尿薬
⑤ サイアザイド系利尿薬
利尿薬グループ④:心不全・糖尿病コントロール薬としての利尿薬
⑥ SGLT2阻害薬

いかがでしょうか?あっさりしていますね。もちろん、厳密には、こんなにうまく分けられません。
 でも臨床現場では、「分かりやすく」分類していない知識は「使えません(役に立ちません)」。断言します!!
 どんなに病態生理学的・薬理学的に正しい知識を頭に詰め込んでも、臨床現場では役に立たなかったという経験は少なくないでしょう。現場で役に立つように頭の中で整理しなおさないといけない。ですから、個人的には、上記のように分類されていると良いのではないかなぁと思います。

 ここから、もっと大胆に解説していきますよ!大丈夫です、詳しいことや難しいこと、正確なことは成書にうんざりするほど書かれています。ここでみなさんが知りたいのは、「まずはどんな情報を知っていれば、『なんとかなる』か?」だと思います。そう割り切って解説しますよ!

 根拠や詳しいことは別記事にしようと思います。今日はざっくりイメージをつかんでいただくことが目的です。

グループ①:体液コントロール目的

 「とりあえずラシックス」というのはある意味正しいです。ループ利尿薬が使えることが大前提です。むしろ「ループ利尿薬を使わずに、別の利尿薬で体液コントロールをしようとするのは無謀」だと知っておいてください!
 ループ利尿薬は静注なら「フロセミド(ラシックス)」一択ですが、内服には「アゾセミド(ダイアート)」と「トラセミド(ルプラック)」という代表薬があります。
 体液コントロールが目的であれば、静注メインで戦わなければならない時期ですので、ラシックス一択です

 トルバプタン(サムスカ)も個人的には便利で、胸水や浮腫の強い人に早期から併用します。が、ループ利尿薬を使いこなせるようになってから学習しましょう。もしくは、上級医と一緒に使っている患者さんをみて学ばせていただきましょう。

グループ②:ループ利尿薬の補助

 単独では利尿効果がイマイチですが、ループ利尿薬と併用することで「縁の下の力持ち」的に効いてくれるのが、いわゆるアルダクトン(スピロノラクトン)とダイアモックス(アセタゾラミド)です。

 前者(スピロノラクトン)は点滴(カンレノ酸カリウム)もありますが内服させるのが一般的です。
 一方、後者(ダイアモックス)には内服薬もありますが、「呼吸状態が安定していない患者の利尿薬治療で併用することが多いので静注することが多いですね。

 ここでは紹介だけにとどめておきます!あくまでもループ利尿薬が使えることが前提です。

グループ③:「降圧薬」としての利尿薬

 サイアザイド系利尿薬。いわゆる「降圧利尿薬」です。
 腎機能が保たれている患者であれば、ループ利尿薬との併用により利尿作用を強めることも期待されます。その点、「グループ②に入れたい!」という気持ちが強かったのですが、あえてここでは役割を強調するためにこのグループにしています。

 というのは、降圧利尿薬であるサイアザイドには、利尿薬としての作用が「ゆるい」です。また代償性にレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の亢進により「最終的には体液量は補正」されてしまうからです。

 ただ、それらの代償機構も含めて、トータルで人体に対し、「降圧」という作用をもたらします。K(カリウム)が増加しやすい降圧薬だらけのなか、唯一K(カリウム)を低下させる作用がある点、Ca保持をする点などで特殊な降圧薬です。だから、降圧薬を選ぶ際に、かならずみなさんの「選択肢」の中に忘れずに入れておいてほしいのがこの「サイアザイド系」なのです。

利尿薬グループ④:心不全・糖尿病コントロール薬

 正直、これを「利尿薬」として使う場面はあまりないと思いますが、紹介だけしておきます。SGLT2阻害薬です。
 特に糖尿病合併心不全で有用な内服薬です。有効性のエビデンスが明らかになり、あっという間にガイドラインに組み込まれた薬ですね。血液中の過剰な糖を強制的に排泄させ、同時に(浸透圧)除水もできる薬。腎臓の負担を軽減し腎保護的にもはたらき、安定期に心不全患者さんでループ利尿薬の必要量が減少することを経験します。

まとめ

 いかがでしょうか?コツは掴めましたか?

 急性期の体液コントロールは、ラシックスをベースに、適宜スピロノラクトンやダイアモックスを併用します。サイアザイドを併用することもありますが、サイアザイドはむしろ「キャラの違う降圧薬」だと思っておいてください。そして、SGLT2阻害薬は、長期予後を改善することが期待される(経口血糖降下薬でありながら)心不全治療薬です。詳しい話も近々、記事にしたいと思います!


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