見出し画像

やまでまやまや

 新婚さんいらっしゃいという番組をかつて流し見して、文枝師匠の転ける演技に笑っていた。人生の上り坂。その中途の結婚行事を象徴する番組だった。

 昨日、山へのぼって、ふと、人生の比喩として登山に喩えた元社会人のブログ記事を思い出した。

 乗り継いで都会そばの路順を、にぎやかな人通りを避けて行く水路の山路は、意外に緑の奈落を足元に醸し出す。往き交う往路の静けさだ。散漫した水気と音を滝に打たれる女性の行水者、瀑音が、読経の音声ともなって聞えてくる。6年前に蜂に刺された痛みが忌避した登山客を、なにゆえか山に回帰させた。それは私だ。

 頂上はその日と変らなかった。くもり空と、おでんも販売する店頭の群れが蕎麦めあての客を呼び寄せた。

 今、筒井筒という言葉の意味を調べたら、幼馴染という意味もある。幼馴染という甘いひびきより、口ざわりがよかった。

 山から逃走した人間が、ふたたび山へ帰還する。つついづづ。私とは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?