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翻訳の幻想、フリーランスの幻想

翻訳で何が重要なのか、突き詰めていくとポイントは下記の3点に集約されるような気がします。

1) 原文(日本語や英語など)の理解
2) 訳文(英語や日本語など)の理解
3) 専門分野(ビジネス、IT、法務、医薬など)の理解

言い方を変えると、2つの言語の高い読解力と文章力を持ち、何らかの専門的な分野に精通している者でなければ翻訳者にはなれないと言うことです。

「翻訳・通訳」の求人募集などを見ると「英検準一級、TOEIC900点以上」が必須になっていることが昔から多いのですが、残念ながらこれらの資格試験は受講者の語学力(英語)を判断するだけで、翻訳・通訳のスキルレベルをチェックするものではありません。留学経験や海外就労経験があり、「英語などの外国語ができる」なら「翻訳・通訳も当然できるよね?」と考えるのはとても浅はかで想像力の欠片もありません。企業の経営者や採用担当者も実務経験なしで翻訳者・通訳者を雇うリスクについてもっと認識するようになれば良いなと思っています。

翻訳という仕事の分かりづらさは、確実に翻訳の一般認知度の低さに関連しています。業界団体や大手翻訳会社がもっとクライアント(翻訳の買い手)や世間全般に「翻訳の仕事」を知らしめてくれればいいのに...と昔は願っていましたが、多くの企業は業界内での優位性確保や生き残りの方を重視しているようです(まあ、企業は営利団体なので、当然といえば当然ですが)。私が「業界」に対して生暖かい眼差しを向けるようになったのは、そのような理由からだったりします。

10年ほど前、某業界団体の依頼でセミナー講演する機会があり、録画されたDVDの売上げは「翻訳業界の健全な発展と成長のため使われます」と事務局に言われたことを覚えています。DVDは10枚程度しか売れていないはずなので大した貢献にはなっていませんが、機械翻訳・AI翻訳で誤訳や訳抜けなどの致命的なミスがニュースになる度に業界が健全な発展も成長もしてきていないことを思い出させてくれます。

コロナ禍の影響で在宅ワークやフリーランスの仕事がまた注目されているようです。「フリーランス」は「フリー」のイメージが強く、間違った憧れや幻想を持っているひとが多いのが気になります。フリーランスは経済的安定からほど遠いだけでなく、ひとを選ぶワークスタイルであることは念頭に置いておく方が良いかもしれません。

長くなったので、フリーのお話の続きはまた別に投稿したいと思います。

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