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テロワールって何かね?


本稿は全文無料公開ですが「投げ銭」制も採用しています。


まとめ
・フランス語の「テロワール」に相当する単語が日本では見当たらない
・日本語では「風土」が一番近い?
・私見:「テロワール」の構成要素=「土地+気候+人(の思想と技術)+設備」


こんばんは、じんわりです。

 以下は読者さん(特にワインビギナーの方)がワインそのものを楽しんで頂くうえで全く不要な知識ですが、ご興味頂けるようであれば是是非ご一読、ご感想下さい。


 先日「テロワールを感じるワイン」という活字を目にしました。

お、おぅ・・・。

 「テロワールを感じる」とはどういうことなのか、書いた人の説明を直接聞いてみたいところです。

 この言葉をとりあげるのは今更ですし、誰得?事案ですが、私が思うテロワールの意味や定義について勝手にブツクサ言ってすっきりすることにします。

そもそもテロワールとは何か?
テロワールの意味、定義:
 「テロワール」(terroir)というフランス単語に対応する英語や日本語の単語はないようです。
単語のみで表すとすると一番近いのは「生育環境」や「風土」あたりでしょうか。

 文脈次第では「ワインの個性」や「ワインのために選ばれし稀有な土地」みたいな意味で使われる場合もあるようですね。つまり、言葉の意味が浮動的であり、しかも形のないものを形容するという謎ワード属性を帯びていますので、「自然派」や「ビオ」同様ビギナーの方のワイン選びをかえって難しくさせるモヤモヤワードのひとつではないかと思うのですね。

 本来は本質的な言葉であったはずのテロワールが、いつのまにか商業用途で使い倒され、なんだか変な方向に向かっているのではと心配します。
 私の仕事仲間には「テロワール」が誤った(=消費者さんにとって不利益な)使われ方をしていることをイジって笑いをとる上級者もいます。
 例えば、同業者間でワインを飲んでいるときに馬小屋臭がはっきり出ているワインに遭遇した時は、「テロワール!」とグラスを掲げながらドヤ顔を見せ同席者を爆笑にいざないます。


 なぜそこで同業者一同は爆笑なのでしょうか。答えは「あるある」なのですね。消費者さんが好むとは思えない味香りの欠陥を『ワインの「テロワール」=個性だ!』とか、なんとなく「テロワール」って言っときゃ売れるやろ・・・とか、正しい言葉の意味を伝えるべきプロの側が「テロワール」という言葉に便乗して消費者さんを煙に巻いているシーンを、我々は少ないながらも仕事場で見てきたがゆえの笑えない爆笑ですね。

 私が考えるワインにおけるテロワールの意味・定義は以下です。フランス語の本来の含意からは乖離するように思いますので、偏った私見と捉えて頂いた方が良いですね。

「ぶどうの生育段階からワインの瓶詰までの間に、品質に影響を与える全要因の質的合計」 

その質的合計を各構成要素に分解すると・・・

「テロワール」=「土地+気候+人(思想+技術)+設備」

 一般的には「土地+気候」か「土地+気候+人」とされる場合が多いかと思いますが、ワイン醸造における科学技術が進歩し続けている現在、造り手の思想、技術、所有する設備がワインに与えるインパクトは本来的なテロワールからもたらされるインパクトと同じかそれ以上に大きいと感じています。いわゆるParkerizationの過程で産地らしさを超越したワイン(産地Aで造られたのに産地Bのような「らしさ」を持つワイン)たちが世に出てきたことはその証左ではないかと考えています。以下の問いに対して皆さんは「おいしいワインが出来上がる」と答えられるでしょうか?

 良い土地と気候でありながら作る人の思想と技術が今一つだったら?
 良い土地と気候でありながら、農業及び製造設備が不十分であったら?

 ワインは化学的に脆い飲み物です。「開けたらできるだけ早めに飲み切る」とか「保管温度は〇〇℃」とか、ご使用上の注意的なコトがあれこれ語られるのはそのせいですね。

 個人的に思うテロワールの意味・定義には含めませんでしたが、ボトルに詰まった本来のテロワールらしさを損なわずに消費者さんに届けるという意味では、流通業者さんのお仕事もテロワールに対する大きな影響因子になるでしょう。ワインにとって良好な環境条件を整えて輸入したか、国内で良い環境条件で保管しているか、消費者に愛のある情報を提供しているか、などですね。
 ワインにも消費者さんにも愛を注ぐインポーターさんや酒販店さんがたくさん増えるといいですね。


さんて!

じんわり

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