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[02] minilogue xd ウィンドシンセ日記その2 ・パツパツ考察

ウィンドシンセサイザー用の音源として2024年8月6日にKORG minilogue xd moduleを買いました。使っていく過程を日記感覚でメモします。日記なので、しばらくあとに訂正が入ったりするかもしれませんがその場合はすみません。xd、結構パツパツが気になったので対策に悩んだ結果や考察をつらつらと。


パツパツって?

 KORG minilogue xd module(以下、xd)、購入初日のようすは前回書きました。ブレスへの反応速く、これぞアナログシンセという音色、触っていて楽しい操作性、と良い音源なのですが、私がいままで試したハードウェアシンセの中で、いちばんパツパツが気になる音源という印象もうけまして、パツパツというよりバッツンバッツンという感じなので、あるいはこれは故障では無いのか?とも思ったので改めてネット情報を検索してみると、古くからのウィンドシンセフリーク「ぶー」さんのyoutubeに同じ症状の報告が。

https://www.youtube.com/watch?v=8g8IWeRPMYY

こんな感じで、吹き始めに何回かに1回、「バッツン」という大きな音が入ってしまうのですね、小さめにパツパツ鳴るのは他のシンセでも普通によくあることなのですが、ここで何回かに1回か入る大きな「バッツン」というのは初めての体験。動画を見てぶーさんにお聞きしたところ「KORGに問い合わせてKORGにある個体でも再現した」が、「xdの個体差の可能性もある」ということだったので、あらためてよしめめ氏に確認したところ、「よしめめ氏所有のxdでもこの状況は再現する」とのことでしたので、個体差や故障ではなく「xdはそういう仕様の音源である」というのが結論です。故障や異常で無いのは安心しました。

そもそも「パツパツ」とは何かというと、アナログシンセのEGのATTACKとReleaseをゼロにしてアナログシンセサイザーで鍵盤を押す/離したときに「パツッ」という音が鳴るという現象で、これはビンテージアナログシンセの一般的な挙動であり既に広く認識・浸透していてそれ前提で音や音楽が作られているので、もはやそれが出ないアナログシンセは鍵盤シンセサイザーとして受け入れられない、わけです。このパツパツ(クリック音とも言うようですが)がどの程度の強さで出るかはシンセサイザー機種やメーカー毎に設計思想あって(※1)強めに出る機種・メーカー、弱めの機種・メーカーがあります。勝手な推測ですがxdの場合は強めに出す設計ということかもしれません。

※1参考:こちらの動画の8'30あたり〜
https://www.youtube.com/live/ieOxQ9-ojeU?si=KUWz4x8adDzuAS02&t=508

鍵盤シンセの場合は問題なくて、EGのアタックを少し遅くすればパツパツは消えるので、むしろAttack=0の時にバッツンバッツン鳴らして、音のアタック感や存在感を強くする選択肢を出す、というのは理解できます。
でもウィンドシンセの場合は曲の部分部分によって、最初から息を強く吹き込んで鋭くアタックをつけた音を出す、という状況と、弱い息でピアニッシモの状態で発音して数秒かけて徐々に音を大きくする、という状況が1曲の中で混在する状況なので、前者にあわせたアタックが長い設定では後者が表現できないし、後者にあわせた設定ではピアニッシモでそーっと入りたいのに、note onが出た瞬間に大きな音で「バッツン」となって台無し、になってしまうのですね。もともと必ずパツパツすることになっている音源に対し、パツパツする/しないをブレスだけで如何にコントロールできるか、がウィンドシンセ的の設定をして難しいところであります。

解決法のひとつ・・・ずっと鳴らしっぱなし法

でですね、ウインドシンセでパツパツを無しにする方法としては、ずっとnote onしっぱなし(音が鳴りっぱなし、GATEが開きっぱなし)だけれど、音量がほぼゼロ、つまり、装置の状態としては常に音が出ているけど、音量が極めて小さいので、音として聴こえないという状態だけど息を吹き込むと音量があがるという状態、にしてやれば「電源を入れてAtrackは1回だけで演奏中はその後ずーーーーっとsustain状態」なので、パツパツは起きない、ということになります。LyriconやLyricon driverでGATE信号無し(音源側でGATEは開きっぱなし)にするとこの状態です。

xdでこの状態にするには、ウィンドコントローラーのブレス設定でブレスのスレッショルドを工夫して常にnote on(音が出っぱなし)の状態にすれば良いです。NuRADではブレスセンサーのADJUST画面で設定、MWiCでは例えば05 Breath-A画面のminをマイナス側(-20とか)にすればこの状態になります。EWIや他のウィンドコントローラーでも同様の設定はあります。よしめめ氏にも聞きましたが、パツパツが気になる場合はこの設定で回避するのが解決法のひとつであるとのことです。

ですが、確かにこれで回避はできるのですが、Judd音色等のマルチトリガーの音色でこの対策をやると、吹き出しとタンギングした時のトリガーがかからないので問題が発生するのですね。マルチトリガーで無い音色なら問題ないのですが、せっかくマルチトリガーの特徴を活かした音色がつくれるxdなのでマルチトリガーでも使いたいし、曲ごとにブレス感度を変えるというのもあまり現実的でないし。。。

というわけで、コントローラー側のブレス設定は一般的に使えるもののまま、パツパツの違和感を無くす設定について、いろいろ試してみました。

まだ結論は出ていなくて、それなりに効果のあったもの、なかったものを列挙していきます。たぶんこれらの組み合わせの何処かのポイントに、落ち着きどころがあると思うのですが、実際にいろんな場面や曲で吹く経験を積み重ねないと、本当の落とし所は決まらないと思います。まだ買ってから1週間だし・・・

パツパツ解決方法として考えられるもの各種

基本設定としては、ウィンドコントローラーからはブレスでCC1とCC2 を出力、VOICE MODEはCHORDのmonoでLEGATO、JOYSTICKの下側(CC2)でCUTOFFを+100%、AMPのADSR=0,0,max,0、EG-INT=0とします。この状態からどうやってパツパツを少なく、目立たなくするか、考えられるものを列挙します。

1.コントローラーの設定で対応する

1-1.ブレス感度設定のスレッショルドを「マイナス」にしてnote on出しっぱなしにする・・・・詳細は上述の通り。

1-2.ブレス感度設定のスレッショルドをいつもより少し「プラス」にして、音が出始めるまでのブレス量を少し増やす(少しキツくする)
 今回のバッツンが問題と感じたもう一つは、「何回かに1回、意図せず出る」なので「毎回出る」のであれば、それを前提                                                                                                                                     で音楽表現したり設定を考えることができます。私の通常のブレス感度設定は、スレッショルドをギリギリにしておいて、ほんの僅かでも息を入れたらnote onが出る、という状態なのですが(MWiCでのmin設定値=10)、これを例えば50にすると、「毎回バッツンが出る」ようにコントロールされた状態になりました。不規則に出るよりは毎回出るほうが良いので、コントローラー側はとりあえずこの設定でいくことにしました。

2. note on時の音量を小さくするいろいろな方法(CC利用)

note on時にバツっと鳴ってしまうけど、音量が絞られているので目立たない、という状態にするために考えられるいくつかの方法。

2-1. CC7またはCC11をブレスで上げる
前回書いた通り、ブレスでCC11またはCC7を送信すると、パツパツはそこそこ目立たない状態になりましたが、ゼロではないし気になってしまうレベルではあります。

2-2. AMP EGのSUSTAINをブレスで上げる(効果なし)
ここからはJOY STICKにアサインされたCC1を利用します。JOY STICKに「AMP EG SUSTAIN」を+100でアサインし、xdのツマミのSUSTAINはゼロにします。
結果としては、音量コントロールはできるけどパツパツには効果無しでした

2-3.各オシレータの音量を変える(効果なし)
VCO1、VCO2、VCO3(MULTI)の3つに対しそれぞれ音量のパラメーターがあります。3つまとめて変更するというパラメーターが無いので、例としてJOY STICK上側(CC1)でVCO1の音量=MIXER VCO1を100%、にしたけれどパツパツは変わらず発生。この方法はうまくいかないですね。

3.EGを利用する方法

3-1.AMP EGのATTACKを少し上げる
他のシンセだと、多くの場合これだけで解決するのですが、xdの場合はバッツンの音量が大きいためか、結構大きめにATTACKを上げてないとパツパツが消えなくて、アタックをつけて吹いたときの反応が遅くなってしまいます。

3-2.AMP DECAY、RELEASEを併用
AMP EGのATTACKだけでなくDECAY、RELEASEも調整してみたらバランスが良いポイントがありそうでした。ADSR=100,100,max,100です。これをベースにして演奏者の個人差にあわせてADSをそれぞれ50〜150くらいの範囲で微調整して良いところを見つける良いかもしれません。

3-3. CUTOFF EGで音の立ち上がりの鈍さを補う
必要に応じ3-2.に加えて、EGをCUTOFFにし、AD=0,100、EG INT=10%、TARGET=CUTOFFにして、立ち上がりに少しフィルターが開くようにしてやると、3-2.でアタックが鈍くなる感じを補えます。3-2.とあわせて微調整しながら自分が吹きやすい最適ポイント探します。
3-2と3-3の数値のおおよそのツマミ位置は図1の通り、「9時」の位置のツマミが多いのでざっくり合わせやすいですね。

図1 パツパツ低減EG設定例

4.EGとCC1の併用

4-1. 息を入れない時・弱いときはAMP EG ATTACKを長く、強く吹き込んだ時にはゼロにしてやれば、パツパツ無しと速いアタックを両立できます。その場合の設定例としては、AMP EG ATTACKは100、JOY STICK上側(CC1)=AMP EG ATTACK -100%にしてやります。吹きながらAMP EG ATTACKを調整して一番自分がしっくりくるポイントを見つけます。3-2、3-3の設定と併用しても良いかもしれません。
この「ブレスでATTACKをマイナス側に動かす」設定は他の音源ではうまくいかないことが多いのですがxdでは結構うまくいきました。

いまのところの自分のパツパツ対策まとめと、あきらめ

結局いまのところ
・1-2.(ブレス設定スレッショルドをちょっとだけきつくする)と、
・4-1.(EG ATTACKを長くしつつ、ブレス(CC1)でそれを小さくする)
の併用
が自分にはいちばんあっていそうなのではありますが、

その後数日間、バラード曲を何曲かカラオケにあわせて本気で練習してみた・・という程度ではありますが、結局少しはパツパツするし、無理にADSRやEGで対策するとかえって他の部分で吹きにくかったり不自然なところが出てくるな・・・と思ったので、考え方を切り替えました!
バラードでも速い曲でもなんでも、パツパツあってのxd!盛大にパツパツさせるのがxdを使う醍醐味!管楽器をシンセサイザーにしたのではなく、シンセサイザーを管楽器にしたのがxd! ということでその個性を活かすよう使って行こうと思ったのでした。

基本音色パラメーター(by よしめめ氏)

というわけで自分の中でパツパツ含め設定コンセプト固まったので自分なりに基本音色を作成してみたのですが、あらためて確認するとこれが全て、既によしめめ氏が2年前に公開されたものと一致しておりましたので、先駆者のよしめめ氏に感謝しつつリンク紹介をさせていただきまます。ブレス設定もCC1とCC2が利用されています。

補足:最新ファームウェアと、音色管理ソフト(書き出し・読み込み)

紹介したよしめめ氏のblogには記載がなかったので補足。
xdですが、初期のファームウェアではウィンドシンセでうまく動かないという問題があるようですので、入手したらまず最新のファームウェアにUPすることをおすすめいたします。執筆時の最新版はSystem Updater 2.10(2020.3.10)です。

また、PCまたはMacを使って作成した音色の保存、名称変更、読み込み、並べ替えができる「Sound Librarian」もあります。USB接続してソフトを起動すればOK(Winは専用ドライバ必要、Macはドライバ不要)です。
https://www.korg.com/jp/products/synthesizers/minilogue_xd/librarian_contents.php


あとは・・・・logue SDKで作られた「ユーザー・オシレーター」波形も使ってみたいんですが、私はC言語プログラミングは出来ないので、どなたが作ったものを利用させていただくしか無いのですが、とりあえずお試しのためのフリー配布の波形とかどこかに無いでしょうか・・・なかなか見つからなくて。


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