音源設定メモ08 Modal Electronics CRAFTsynth 2.0
〜ウインドシンセ用の音源の設定の備忘録シリーズです〜
Modal Electronics CRAFTsynth 2.0(以下CraftS)を2023年9月に購入しました。中古約15000円。発売が2019年夏で2022年頃に廃盤になった機種で現在は中古でしか入手できませんね。発売の頃は海外中心でウィンドシンセ用に話題になった記憶がありそのころの「ウィンドで吹いてみた」動画もyoutubeに結構あります。
小型で電池駆動できるバーチャルアナログ、モノ発音だけどいろいろMODできてSYNC音色もできてModulation Matrixもできて専用アプリで音作りできて2万円以下、ということで4音ポリのSkulptsynthと迷ったのですが小型優先でこちらにしました。Skulptの大きさだとすでにUNO Synth Pro desktopを持っているしそれより小型なのはそれだけでもメリットだなと。
公式サイト
https://www.modalelectronics.com/craftsynth-2/
国内輸入元
公式サイトのマニュアルはhttps://www.modalelectronics.com/wp-content/uploads/2019/06/craftsynth_ii_manual_v1.pdf
本体で音作りするのは操作性に限界があるのと、本体だけではModulation matrixのフル機能は使えないので、エディット用の無料の専用アプリ”Modalapp"を使用するのが基本になります。公式サイト経由でMac/windows用,iOS用、Android用がダウンロード可能。
あと、マニュアルでいちいちMIDIインプリチャートを見るのが面倒な場合はSKINを利用するというのもありまして
このSKIN画像を見るとどのツマミにどのMIDI CCがアサインされているか、マニュアル見るよりもわかりやすかったりします。
ウィンドシンセ用の基本設定と基本音色の設定
私は各ツマミにアサインされているCCよりも、できるだけModulation Matrix(以下 M-M)を使う派なので、できるだけM-M優先にします。
ウィンドコントローラーからのセンサー出力は
ブレスセンサー:CC2とAftertouchの両方を出力。値は0〜127。
ブレスセンサー:CC51を、value = 63〜127で出力(AMP EG DEPTH)
グライドセンサー:CC5を、OFF値62、ON値40(30〜45位で好み)で出力
その他のセンサーやスイッチ:CC1(value=127)を出力
に設定。MWiCなら1〜4まで全て設定できます。EWI5000とNuRADは2.の範囲設定してのCC51出力は不可能かもしれません。その場合はかわりにブレスセンサーからCC1(0〜127)を出力しても良い。
MODALappの画面は下の通り。これは1VCOのSAW音色で、ブレス(Aftertouch)でcutoff、ブレス(CC51)で音量(AMP EGのDEPTH量をコントロールして音量を調節)、グライドセンサーでグライドさせる、という基本的な設定のスクリーンキャプチャでもあるので、各パラメータをこの通り設定すればSAW基本音色になります。
緑色のCC5とCC51はそのパラメーターに直接アサインされているのでウィンドコントローラー側の設定を変えないとコントロール範囲を変えられませんが、最下段のMODW(CC1)、EXPR(CC2でコントロールできるようにSETTINGのほうで設定済み)、AFTT(チャンネルプレッシャー(Aftertouch))は、M-Mなので音色ごとに範囲の細かい設定ができます。ブレスから直接CC51を出せない場合は、ブレスからCC2またはCC1を出してこれでM-MでAMP EG DEPTHをコントロールします。この場合に音の出だしと終わりにパツパツ感を感じる場合は、AMP EGのATTACKとRELEASEを5位まで好みで上げるとパツパツが消えます。CC51でコントロールする場合はATTACKとRELEASEはゼロのままでもパツパツは感じないかもしれません。
ここでちょっとCRAFTSynthの設定(たぶんModal Electronicsのシンセ共通で)で個性的というかあまり普通で無いと思った挙動として、パラメーターの「ゼロ」が「ツマミの12時の位置」で左右にプラスマイナス挙動であるパラメーターが多いことがあります。このようなパラメーターはMIDI CC値が63の時、ゼロになります。例えばGlide(CC5)の送信をOFF=0、ON=127で送信すると、0のときも127のときも長いグライドがかかってしまうという変な結果になります。Glideは
・63でグライドゼロ(=いわゆるMONO。音の変わり目がパツパツする)
・62〜0ではタンギングするとグライドしないがレガートするとグライドする挙動(また、聴感上MONO LEAGATO挙動になり音の変わり目はパツパツしない)
・64〜127にするとタンギングしてもグライドする挙動(また、聴感上MONO LEAGATO挙動になり音の変わり目はパツパツしない)
グライドの挙動は好みですが普通は62〜0のときの挙動かなと思います。63にするとポリシンセで言うところのMONOモードの挙動になりレガートで吹いても音の切れ目が入ります。「mono legato」の挙動にするにはGlideの初期値は常にゼロからずらした位置(普通は-1)にして、グライドセンサのOFF値も同様になるようにすると良いと思います。
音色づくりの例
ここまででCraftSの特異的な点も含めて基本的な挙動の解説はできたので、あとは一般的な「M-Mを持つシンセ」として音作りを進めればよいかと思います。
波形を変える・変調する
MODALappの左上にWavetable方式のOSCが2つあるので、wavetableを選択する、Wabetableの位置を動かす(WAVE1, WAVE2)、2つをMIXする、デチューンする、変調(OSCMOD)するを使い、それぞれをM-Mで息で動かすようにするとかなり変化に富んだウィンドシンセ音色が得られます。変調の種類は16種類から選べてハードシンク音色もここを利用して作ります。この部分がCraftSのキモでしょう。いろいろ弄り倒したいですね。
フィルターのMORPH
CraftSのフィルターは通常ローパスフィルターですがMORPHを最大値にするとハイパスフィルターになり、中間にするとバンドパスになります。ローパス。バンドパス・ハイパスをM-MでモーフィングできるのはCraftSの特徴ですね。
ギミック的に和音演奏
CraftSはモノ発音シンセですが、「SPREAD」ノブを回すとあらかじめ設定された数種類の和音を出すことができます。M-Mを使ってCC1が出たときだけ和音にする、というギミックができたりしますが、M-Mで変化させられるのが-63〜0〜63の範囲なのがもったいないところで、和音が発音されるときのSPREADの値は63より上だったりするので、最初オクターブ重ねの音色にしておいてCC1を押すと5度混じりの和音にする、とか結構な裏技的な設定が必要となります。SPREADについては、演奏中に本体のノブをいじるのが一番良い活用法かもしれません。
ピッチEG(Judd的音色)
例えばJudd音色なら、MOD-EGでOSC2 TUNEをM-Mして作ります。マルチトリガーにしたい場合は、Glideをゼロ(CC値だと63)にすればマルチトリガーになりますが、ウィンドコントローラー側のGlide設定を63以外にしているとグライドをした途端にマルチトリガーではなくなってしまいます。Glideを63以外にしたままマルチトリガーにしたい場合の裏技としては、NuRADであれば「ポリモード」にする、MWiCであれば01 Musicalの「LegatoをOFF」にすると、CraftSでは事実上マルチトリガーの挙動になります。
エフェクター
CraftS内蔵のエフェクターはディストーションとディレイです。ディストーションはそこまで歪まず、音色の押しが強くなるので、他のシンセにおける「DRIVE」的な感じでしょうか。積極的に使って良いのではと思います。デディレイはシンプルなものでウィンドシンセ的にはショートディレイとかの活用でしょうか。追加でリバーブを外部エフェクトでかけたいとは思います。
その他感想
本体のみでの操作性はあまり良くなく、作った音色を呼び出すのでさえ「これで本当にあってる・・?」みたいに不安になるので、エディターアプリの「ModalApp」と繋げて使うのが前提かもしれません。ModalAppはiPhone/ iPadで動くiOS版もあって、iPhoneとはUSB経由で簡単に繋げられるので、ライブ先ではiPhone版をつないで音色選択と必要ならちょっとしたエディットを行うというのが現実的かつ運用しやすいような気がします。
CraftSynth2.0の音色は端正というか上品というか、アナログシンセの野性的な感じはあまり感じませんが、それはそれで良いかなとも思います。
とにかくWavetableの種類も含めて波形の選択・モーフィング・変調の操作がシンプルなので、適当にツマミを回して好みのところを見つけるというのができるのが面白いシンセだと思いました。
演奏例
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