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Berglund Instruments CV Module Board for NuRAD and NuEVI (初期ver) テストレポート

 先日のRoland SE-02をCV制御してみたの記事で使用したNuRAD用 CV Module Boardですが、手持ちの他のシンセでも試してみたのでレポートいたします。あまり良い結果でもなかったのでただの実験メモみたいになってますが・・・・・。

このNuRAD&NuEVI用CV Module Boardですが、現在販売中なのは

ですが、私が今回使用したのは初期の開発品バージョンである、MIDI OUTとGATEのOUTがついているタイプで

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Garage99さんより、モジュールケースとアッテネータ付でお借りしたものでございます。Garage99さんありがとうございます!

 先日のRoland SE-02をCV制御してみたの結果では、「正しい音程で鳴って一応演奏できるけど、SE-02はVCAをCVコントロールできないので音の立ち上がりにノイズが入るのでウインドシンセ的演奏には実用的に使えない」という結果でした。

 今回は他の手持ちのアナログシンセを試して見ようということで、Oberheim SEM-PRO(こちらもよしめめ氏からお借りしているもの)と、Behringer NEUTRON(これは自分で買った)を試して見ました。どちらも、セミモジュラーアナログシンセと言えるでしょう。

SEM-PROもNEURTRONもMIDI入力がついていて、音源のコントロールはMIDIのみ/MIDIとCV併用/CVのみ、の3種が可能です。

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結論だけまとめると、この2機種のシンセにおいては

・ブレスCVの滑らかさ(ノイズの少なさ)はMIDIより圧倒的に優れていてCVの価値が大きい
・音の出だしの自然さについてはCVもMIDIも同じ(スラーで吹いても弱いレガートタンギングが入る)
・セッティングを含めた音程の安定さ加減はMIDIが圧倒的に優れている
となりまして、他のシンセも含めた総合的な私の感想は
「MIDI制御ができないフルアナログのモジュラーシンセをコントロールしたい場合はこのCV Module Boardは当然必須だが、MIDIとCV入力両方を持っているアナログシンセやセミモジュラーシンセの場合はこのCV Module Boardは不要で、MIDIで音程を制御しつつNuRAD本体横からのCV出力をVCF、VCOのコントロールに使ってあげれば充分幸せになれる」
となりました。以下は実験結果詳細のメモ。長くてすみません。

Oberheim SEM-PROの場合
[音源側仕様] CVでVCOのピッチ、VCF、VCO、LFOトリガー、ENVのGATE INがコントロール可能なのでフルアナログコントロールも可能だが、MIDI INもあり、note No.とともに任意のCC(例えばCC2やCC7)またはアフタータッチでVCF、VCA、VCO1/2のピッチがコントロールできる。
[MIDIのみで制御の場合] NuRAd本体とSEMをMIDIケーブルで繋いで、例えばCC2でVCAとVCFをコントロール、という設定にすればそのまま普通に演奏できる。
・ブレスでVCA(音量)を大小するとき:ブチブチノイズがわずかに発生するが、そんなに気にならないレベル
・ブレスでVCFを開閉するとき:ブチブチノイズが少し発生。静かめの曲の時は気になるレベル。
・音のつなぎ目:スラーで演奏しても、完全に滑らかなわけではなく弱めのレガートタンギングが入る感じ。
・ベンドとビブラート時のノイズ:ブチブチノイズが少し発生。
・NuRAD右手親指レバー(グライドに設定)を動かすと:グライドはかけられない。
・総合結論として、ブレスコントロールノイズが多めで静かな曲を演奏するときはノイズ的にストレスを感じるのでイマイチ。
[CV Module Board経由のCVのみで制御の場合] NuRADのMIDI端子(NuRADはMIDIケーブルの空き端子からCV信号が出ている)をCV Module Boardにつなぎ、BoardのPitch CVをSEMのVCO1 CV INに、Breath CVを分岐しつつSEMのVCAとVCFにつなぐ。NuRAD(Firmware1.5.b7)の設定のEXTRAメニューでCV TUNE,SCALEを調節して、チューナーを使いながらピッチをあわせる。
・ブレスでVCA(音量)を大小するとき:ブチブチノイズはほとんど発生しない
・ブレスでVCFを開閉するとき:ブチブチノイズはほとんど発生しない。
・音のつなぎ目:スラーで演奏しても、完全に滑らかなわけではなく弱めのレガートタンギングが入る感じ。MIDIのときと同じ。
・ベンドとビブラート時のノイズ:ブチブチノイズが少し発生。MIDIのときと同じ
・NuRAD右手親指レバー(グライドに設定)を動かすと:グライドがかかるが、このときベンド幅とビブラート幅がとても大きくなってしまうので、グライドしながら同時にビブラートをかけることは音楽表現的に難しい。
・Pitch CVを合わせるのが面倒くさい。また日を改めて鳴らそうとすると音程がずれていたり、ケーブルの不調で音が出なくなったりと、トラブルの元が大幅に増える
・総合結論として、ブレスコントロール時のノイズの少なさはさすがだが、ノイズ発生がゼロになるわけではない。Pitch CV故の正確な音程を出すための設定の煩雑さや再現の不安定さは大きなマイナス。
[MIDIとNuRAD本体横のCV出力を併用する場合] NuRADのMIDI端子からSEMのMIDI INに繋いでnote No.(音程)はMIDI制御にします。NuRAD本体横のCV出力を分岐しつつSEMのVCA CTRLとVCFにつなぎます。音程はMIDI、VCAとVCFはブレスCVコントロールになります。
・ブレスでVCA(音量)を大小するとき:ブチブチノイズはほとんど発生しない
・ブレスでVCFを開閉するとき:ブチブチノイズはほとんど発生しない。
・音のつなぎ目:スラーで演奏しても、完全に滑らかなわけではなく弱めのレガートタンギングが入る感じ。MIDIのときと同じ。
・ベンドとビブラート時のノイズ:ブチブチノイズが少し発生。MIDIのときと同じ
・NuRAD右手親指レバー(グライドに設定)を動かすと:グライドはかけられない。
・総合結論として、ブレスコントロール時のノイズの少なさはCV同等、ピッチの安定さはMIDI同等、という「良いとこ取り」の設定であり、グライドが使えない以外はCVのみ制御に比べて欠点を感じない。これがベストと思う。

それぞれの設定で録音して・・・とも思いましたが手間がかかる割に聞いていただいても大したこと無いものになりそうだったので割愛。ただこのnoteはMIDI,VCAとVCFとVCO2のFreqはNuRAD本体横のCV、という設定での演奏はNuRAD買ってすぐの時の動画の3:55からの音でございます。買ったばかりの不慣れで演奏そのものはミスだらけで酷いものですが・・・

Behringer NEUTRONの場合
[音源側仕様] CVでVCOのピッチ、VCF、VCO、レゾナンス他いろいろ制御できる。フルアナログコントロールも可能だが、MIDI INもあり、note No.とともに設定によりMIDIのアフタータッチをCV OUTから出力できるので、これをパッチングしてアフタータッチでいろいろできる。
[MIDIのみで制御の場合] NuRad本体とSEMをMIDIケーブルで繋いで、アフタータッチをアサインしたASSIGN OUT端子からVCAやVCFにパッチングしてコントロールする。
・ノイズ等の結果はSEMの場合と同じ。フィルター開閉のノイズはSEMより酷い。総合結論としてブレスコントロール時のノイズが多く静かな曲では使う気になれない。(なお、ASSIGN OUTからSLEW/PORTMENTを通すとスムージングされてノイズは減るが、ノイズが消えるまでスムージングするとブレスへの反応が遅くなるため実質使えない)
[CV Module Board経由のCVのみで制御の場合] 設定の仕方は基本的にSEMの場合と同じ。ノイズ等の結果もSEMの場合と同じで、VCA,VCFコントロールのノイズは劇的に減って素晴らしいが、ピッチをあわせる煩雑さ、不安定さが大きな欠点。総合結論としてもSEMの場合と同じ。
[MIDIとNuRAD本体横のCV出力を併用する場合] 設定の仕方はSEMと同じ。ASSIGN OUT端子を使わなくて良いぶんMIDIオンリーの場合よりむしろ設定は楽。ノイズ、ピッチ、グライド時の挙動等すべてSEMの場合と同じ。総合結論としてこれもSEMの場合と同じでこれが良いとこどりでベスト。


というわけで全体のまとめとしては繰り返しになりますが
「MIDI制御ができないフルアナログのモジュラーシンセをコントロールしたい場合はこのCV Module Boardは当然必須だが、MIDIとCV入力両方を持っているアナログシンセやセミモジュラーシンセの場合はこのCV Module Boardは不要で、MIDIで音程を制御しつつNuRAD本体横からのCV出力をVCF、VCOのコントロールに使ってあげれば充分幸せになれる」

でした。まああくまで個人の感想ですので異論は認めます。感想ついでにウインドシンセにおけるCVの利点に考えてみますと「ブレスコントロール時のブチブチノイズが少ない」ことに尽きると感じておりまして、その点だけでいうとコントローラーまで含めて完全フルアナログの「リリコン」は最高だったのですが、リリコンはいままでの私の演奏(youtube参照)を聞いていただければわかりますが、ピッチベンドを使用する演奏前提の場合の演奏中のピッチの不安定さが音楽の完成度に与える悪影響は多少のノイズの問題なんかとは比較にならないほど大きいわけで、そういう意味で、充分な音程安定性とフルアナログ制御の滑らかさを兼ね備える初期EWI(1000,3000,3020)はいま思うとベストと言えますが、MIDIの安定性とブレスCVの滑らかさの良いトコ取りができて最近多いMIDI/CV両対応のいろんなアナログシンセをコントロールできるNuRAD、というのは現代のシンセ環境状況をふまえて良いトコ取りが良くできているなぁ!と改めて思いました。

でも本当のベストは、シンセ音源側がMIDIでのVCA,VCFコントロールでもノイズが少ない音源であることなんですよね。そうすればMIDIだけの楽ちん接続で演奏できますしね。そういう意味ではRoland SE-02はVCA、VCFのノイズの少なさは特筆できると思います。SE-02に関してはNuRAD本体横のCVも使用しなくて良いくらい充分スムーズです。僕はSE-02をその点意識せず買ってしまって、たまたま大当たりだったから良かったですが、試奏してから買えるならそこはしっかりチェックしたい点ですね。たぶんシンセメーカーの人に「このシンセはブレスコントローラーでフィルター開閉したときにノイズは少ないですか」なんて質問しても「?」としか回答が来ないような気がしますがどうなんでしょうか。


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