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[05] Roland S-1 ウィンドシンセ日記その5 ・MWiCとの組み合わせ

ウィンドシンセサイザー用の音源として2024年6月25日にRoland S-1を買いました。使っていく過程を日記感覚でメモします。日記なので、しばらくあとに訂正が入ったりするかもしれませんがその場合はすみません。
第五回目はコントローラーとしてMWiCを使用したときの感想と設定とアイデアについて。S-1、アタック強めに出る傾向はあるけど反応良く演奏できて4音ポリを活かしていろいろ仕込めます。


吹奏感

購入してから1ヶ月半だけですがRoland S-1とWind MIDI Controllerとして
①NuRAD、②MWiC(サックスマウスピース)、③MWIC(ソフトマウスピース)で使った感想です。

3種のコントローラーどれでも問題なく吹奏できますが、コントローラーによらずS-1の吹奏感は好みがあるかなと思いました。というのも、S-1はいろいろある音源の中では音の出だし・立ち上がりが速い方だと感じましたがこれのためにコントローラーとの相性が少しある感じでした。
NuRADのときは特に問題なくて、速いパッセージでも、バラード的な曲でも違和感なくS-1を吹奏できるのですが、MWiCの場合だと、マウスピースによらず音の立ち上がりがとても速く、テンポが速い曲では問題なくむしろ良いのですが、バラードの時には「もう少しそっと、大げさに言うとプワンと音を立ち上げたい」という表現がちょっとやりにくくて、息の入れ方をかなり気を使わないといけないなあと感じました。まあコントローラーの個性なので、好みのコントローラーを選ぶか、息の入れ方を練習するか、どちらか頑張れば良いのですが、設定でなんとかできないかなあといろいろ試した結果のメモは次の通り。

MWiC+S-1の時に音の出だしが速すぎる(アタックを感じすぎる)のを緩和する設定

【MWiC側】
・04 BreathのSmoothingを3または4にする
   https://teefonics.jp/mwic_settings/04_Breath

・ブレス設定を少し「きつく」する(Range値を少し上げる、カーブを少しキツくする)
   https://teefonics.jp/mwic_settings/05_Breath-A

【S-1側】
・ENVのATTACKを0でなく、20くらいに設定(10〜40くらいの範囲で好み)
・FILTER ENVを0でなく、40〜50くらいに設定

上記の組みわせで自分にとって一番良いポイントを探していきますが、一番影響が大きいのがMWiCのBreathのSmoothingだと思います。このSmoothingパラメーターは、ソフト音源でもハード音源でも、ほとんどの音源では最小値(1=OFF)で問題ないのですが、ハード音源の場合、音源によっては音の立ち上がりとフィルター開閉ノイズの程度が変わることがあり、その兼ね合いで1でなく2〜5程度にしたほうが吹奏感や聴感上、良い場合があります。極端に大きくするとどの音源でも息に対する反応が鈍くなって演奏しにくくなります。まとめると、MWiCの「Smoothing」は音源を変えた時にアタックやノイズに違和感を感じたら2〜5程度の範囲で変えてみると自分の好みに合うことがあるかもしれない、というパラメータといえます。

ブレスで3種の任意CCを出せる点を活かしたい!

MWiCはブレスセンサーの出力として3種の任意CC+アフタータッチが出せて、このうちBreath-Bは独立してカーブと範囲指定、Breath-Cは範囲指定ができる機能があります。

S-1をブレスコントロールするにはCC74でフィルターカットオフをコントロールしつつ、好みによってはCC11での音量コントロールを併用するのが、まぁ定石なのではと思います。CC74とCC11の同時出力はNuRADでも可能なので、ここまではNuRADもMWiCも共通ですね。
MWiCの場合はもう一つ任意のCCを範囲を決めて出せるので、何を出そうかなというところになりますが、個人的オススメはCC15かCC102です

CC15でブレスでパルス幅コントロール(ブレスPWM)

CC15はS-1ではパルス波オシレーターのパルス幅が変わります。
CC15の値を0→127まで変化させると、S-1ではパルス幅は50%→約4%まで変化しますがこのパルス幅コントロールをブレスコントロールでやる(ブレスPWM)とブレスで音色が「じゅわっ」とした感じで変化します。かつてのEWI1000/EWV2000でのプロ演奏で結構聴ける音色でブレスPWMはウィンドシンセ音色の定番テクニックですね。
NuRADでもBreath CC A = CF(CC74)、Breath CC B = 15にすることでS-1でのブレスPWM音色を試すことができますがCC15の範囲は0→127固定です。

MWiCではCC15の範囲を変えることができるので、
例えばBreath B = CC15にして、
・最小値0、最大値127 → 音色変化は大きいが最大値付近ではパルス幅が小さくなりすぎて音が痩せる
・最小値0、最大値110 → 音痩せせずに音色がじゅわじゅわする
・最小値127、最大値0 → 変化を逆転できる。
・Breath Bのブレスカーブも好みでいじってみる
ということができるので、一番好みの音色・変化になるように設定します。最初はパルス波オシレーターだけで鳴らしてみて、その後SAW波、SUBオシレーターと重ねて、トータルでの音色変化を確認しつつ好みの音色になるようにCC15の幅を設定すると良いと思います。
コントローラー側でこの設定をすると、パルス波オシレーターのパルス幅は常に変わってしまいますが、CC15ではSAW波オシレーターの音は変化しないので、うまく使えば「ライブで使う数個の音色をコントローラー側設定は変えずに鳴らす」という運用は可能かと思います。

CC102でブレスでDRAW MULTIPLYコントロール

CC102はS-1ではOSC DRAWしたときの波形のMULTIPLYが変化し、値を上げると倍音構成が変化し聴感上の音が高くなっていきます。やや階段状の変化で滑らかさは足りませんがアナログシンセでオシレーターシンクをしたときの音色変化に近いです。0→127まで変化させると変化が大きすぎて良い効果が得られないですが、0→30くらいまでの変化量だとブレスで大胆に音色が変えられます。
なのでCC102に関しては範囲が0→127に固定されているNuRADには不向きで、MWiCだけが活用できる設定かなと思います。
例えばMWiCのBreath B = CC102にして、
・最小値0、最大値22 (5〜40くらいの範囲でお好み)
・Breath Bのブレスカーブも好みでいじってみる
にしてみたりすると、マイケル・ブレッカーの吹奏による「Beirut」の音色のような「くわーくわー」という変化をする音色にすることができます。

CC102はOSC DRAWを使用した場合のみ音色変化するのでパルス波オシレーターをOSC DRAWを使用せず普通にパスル波オシレーターとして使用した場合はCC102で音色変化せず、コントローラー側の設定を変えなくても普通のパルス波音色を使うことができるので、これも「ライブで使う数個の音色をコントローラー側設定は変えずに鳴らす」という運用が可能な現実的なコントローラー設定かと思います。

あと、MWiCの場合はバイトセンサー、ベンドプレートでも任意のCCが出せるので、これらのセンサーでいろいろ音色を変えることも可能ですが、CC15、CC102ではちょっと試した限りではあまり効果的になりませんでした。他のCCではうまく活用できる可能性は充分あると思います。

S-1の4音ポリ機能の活用

S-1の仕様説明にはシンプルに「4音ポリ」って書いてあるだけなんですが、実はポリにはいろいろモードがあって、そのモードをCC80で切り替えることができます。(S-1取扱説明書P28、P81参照)

CC80の値が
 0=OFF(monoモード)
 1=Unison
 2=Poly
 3以上=Chord
となります。

S-1のChord機能

Chordは主音の他の「3つ」について独立して-12〜12半音の間でトランスポーズ設定して重ねて和音とし、主音にあわせて平行移動できる、という機能です。ちょっとわかりにくいのでS-1 Editorの画面の一部を貼り付けますが

図1  S-1のCHORD機能設定内容(S-1 Editor画面)

VOICE2, 3, 4独立してトランスポーズとON/OFFを設定できます(ちなみに図1の赤文字のCC番号でコントロール可能)。こういった平行移動和音で一番汎用的に使いやすいのはオクターブ下とか、5度上(7半音上)の音なので、例えばVOICE2のみを5度上(7半音上)でONに設定し、monoモードで演奏中にCC80の3以上を送信すれば5度上の音が重なる、という演奏ができます。
NuRADではリップセンサー等でCC80を送信すればOK。
MWiCでは方法はいろいろありますが、例えばLp3 KeyでCC80の3以上を送信する設定ができます。
https://teefonics.jp/mwic_settings/17_LeftPnky3Key

MWiCのPoly演奏機能

MWiCはXtraキーを触れることでいくつかある和音演奏モードのひとつを利用できます。
https://teefonics.jp/mwic_settings/16_XtraKey

また、このとき01 MusicalにあるHarmonyStatCCを「S-1」にすることで、Xtra keyを使って和音演奏をしたいときにS-1をPolyモードに、単音演奏をしたい時にS-1をmonoモードに切り替える(CC80の0、2を送信している)という機能があります(MWiC最新ファームウェア8.45の場合)

ウィンドシンセの場合、普通はS-1はmonoモード(モノレガートモード)で演奏することが多いと思うので、このHarmonyStatCC=S-1の設定はモノとポリの切り替えを意識せずともやってくれる便利な機能ですね

NuRADの場合はNuRADからmono/poly切り替えをすることはできないので、S-1を常にPolyモードで使用しないとNuRADの和音機能は使えません。まあS-1のPolyモードは他の音源と比べてレガート演奏時の不自然な音の切れ目は目立たないほうなので、S-1を常にpolyモードで使用することも充分許容範囲な使い方だと思います。

また、MWiCには和音演奏時に「ハーモニーに対して主音を目立たせる」ための工夫がありまして、ハーモニー音はベロシティを小さくできます。01 MusicalのHarmony Vol https://teefonics.jp/mwic_settings/01_Musical を例えば50%にすると、和音構成音は主音の半分のベロシティ値が送信されるのでベロシティ対応音源ならハーモニーの音量が小さくできます。S-1にはベロシティに関する設定は存在しませんが、小さいベロシティでは単純に音量が小さくなるようです。和音を鳴らしながらちょうどよいと思う値に設定しましょう。私の場合は80%で設定しています。

さらに、MWiCのDynamic PolyモードとSustain Polyモードでは、運指で和音の音を指定するわけですがこのときピロ音が発生すると、そのピロ音の音を保持してしまって意図外の和音になってしまうことがあるので、MWiCのこれらのモードでは「NoteIgnore Th」という、和音ピロ音除外機能があります。
https://teefonics.jp/mwic_settings/19_Misc-2

50〜100msくらいに設定すれば良いかと思います。こうするとピロ音の他、グリッサンド的にわざと含めた経過音も和音からは除外してくれるので、うまく使うとこれまでにない表現ができると思います。

MWiC Poly Sustain機能での裏技

MWiC(最新ファームウェア8.45)のXtra keyで入る「Sustain」ポリモードは、吹奏中にXtra keyを触るとその音を1〜4音まで記憶しXtra keyを離すとその音を持続、タンギングするとリセットされる、という仕様なので「タンギングを入れたsustain演奏はできない」ことになっているのですが、タンギング入りsustainはAKAI EWI4000ではこんな感じ↓にできるので(0'45〜)

どうにかできないものかなあと思ってあれこれやってみたところ
・04 BreathのSmoothing=3
・Breath-Aのmin.= マイナス30
にすることで「タンギングしてもレガート扱い」になるようで、タンギングsustain演奏をすることができました。ただしこの設定では吹いていなくても常にnote onが出ている状態なので、他の音源や設定によっては不都合も出てくるかと思いますので(特にマルチトリガー音色)、S-1使用時の特定の場合の裏技ですね。(S-1はピッチEGが無く効果的なマルチトリガー音色が使えないと言っても良いので))

S-1のアルペジオ利用

S-1はアルペジオ機能もあるので、鍵盤で和音を弾けば、その構成音を指定の設定でアルペジオします。鍵盤シンセでは当たり前の機能ではありますが、ウィンドシンセでは通常和音は演奏しないので、ウィンドシンセでアルペジオ演奏は少なくとも僕は見たことがなかったですが、今回MWiCでポリ演奏をあれこれやってみたついでに試してみました。
S-1のアルペジオ機能をONにして、TYPEとRATEを設定。
(S-1マニュアルP62〜参照)
全体のTEMPO設定とあわせて、高速アルペジオだとトレモロ的に使えて一応音楽的に使えるかも?という可能性は感じましたが、きちんと音楽にするにはもっと考えないといけなさそうですね・・・

というわけで、この一連の設定をまとめて試し吹きしてみたのがこちらです。ブレスからはCC74,CC11,CC102(0〜22)を出力。

おわりに

ということで、音の出だしのアタック感が強め、という点が気にならなければS-1とMWiCの組み合わせは、かなりいろいろできる組み合わせだなあと思いました♪♪♪♪


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