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過焦点距離と被写界深度

過焦点距離と被写界深度って、聞いたことありますか?

これを知っていると、観光地での記念写真に役立ちます。
前ボケや後ボケの撮影が理解できます。
どうやったら大きくボカせるかもわかります。


【過焦点距離とは】

過焦点距離は、この距離より遠いところはピントが合いますってこと。

過焦点距離の計算を覚えておくと、観光地で記念写真撮るときに、人にも風景にもピントを合わすことができます。

いきなり計算式です。

過焦点距離(H) = 焦点距離(f)^2 / (許容錯乱円の直径(σ) × 絞り値(F) ) ※近似式

重要なのは、どんな要素で計算式ができているかです。

分子に、「焦点距離(f)」があります。
レンズの焦点距離が大きく(望遠)なると、過焦点距離が大きく(遠く)なります。
反対に、レンズの焦点距離が小さく(広角)になると、過焦点距離が小さく(近く)なります。

分母には、「絞り値(F)」があります。
絞り値を小さく(絞りを開けて明るく)すると、過焦点距離が大きく(遠く)なります。
反対に絞り値を大きく(絞りを絞って暗く)すると、過焦点距離が小さく(近く)なります。

広角レンズで絞りを絞ると、パンフォーカスにしやすくなるのは、計算式からわかります。

【許容錯乱円の直径】

さて、分母にはもう一つの要素「許容錯乱円の直径(σ)」ってのがあります。
映像センサーの画素数や、写真のプリントサイズなどがこの値を決めますが、奥が深い要素です。
詳しいことは↓を見てください。

ピントが合っているように見える範囲が許容錯乱円です。

二つの考え方があるようですが、ひとつは、フイルムや映像素子の粒子や素子の大きさで、二つ目は、どの大きさでプリントするかです。

ピントが合っているように見えるというのは、人間の目の解像度を超えていればいいのです。


【過焦点距離はどれぐらい?】

フイルムの「許容錯乱円の直径(σ)」は、一般的に0.026mmと言われてます。
(Canonは、0.03mmと言ってたと記憶してます)

過焦点距離は、焦点距離が大きく(望遠)なるほど、絞りを小さく(開放)なるほど過焦点距離は大きくなってます。

過焦点距離(35mmフイルム)

カメラの画素数より「許容錯乱円の直径(σ)」を求めて、過焦点距離を計算してみました。
パソコンでドット単位で鑑賞する人用ですw

過焦点距離(EOS-1DX3)

高解像度カメラになるほど厳しいですね。

過焦点距離(α7RIV)

目の解像度(ちょっと目が悪い人)からすると、こんなものです。
2L版の写真を20cmの距離で見ると、笑えるほどの計算結果です。

過焦点距離(人間の目 20cm)

実用的には、フイルムの過焦点距離を目安にするのがいいでしょうし、A4以上にプリントするのであれば、EOS-1DXmarkⅢのようなフラグシップ機(2000万画素)を目安にすればいいと思います。

【被写界深度とは】

ピントは、ある奥行き(距離)の間で合います。
これを被写界深度っていいます。

被写界深度は、ある距離の間はピントが合っているってことですから、ピントが合う近い距離(Near)と遠い距離(Far)を計算します。
距離(Near)~距離(Far)の間がピントが合います。

いきなり被写界深度の計算式です。

被写界深度(Near) = 被写体距離(s)^2 × 絞り値(F) × 許容錯乱円の直径(σ) / (焦点距離(f)^2  被写体距離(s) × 絞り値(F) × 許容錯乱円の直径(σ))

被写界深度(Far) = 被写体距離(s)^2 × 絞り値(F) × 許容錯乱円の直径(σ) / (焦点距離(f)^2  被写体距離(s) × 絞り値(F) × 許容錯乱円の直径(σ))

2つの式は、分母のところが、プラス か マイナス が違うだけです。
被写界深度(Near)より近い距離のものはボケます。
また、被写界深度(Far)より遠い距離のものはボケます。
この2つの被写界深度の計算結果の間がピントが合っていますので、被写界深度は次のとおりになります。

被写界深度 = 被写界深度(Near) + 被写界深度(Far)

計算式を見ると、被写界深度は、被写体の距離(S)、絞り値(F)、レンズ焦点距離(f)、許容錯乱円の直径(σ)で決まるってことです。

許容錯乱円の直径(σ)は写真の鑑賞状況(プリントサイズ)が決まれば固定値ですので、撮影現場では、被写体の距離(S)、絞り値(F)、レンズ焦点距離(f)の3つの要素で被写界深度が決まります。

焦点距離が長い望遠で、絞りを開放にし、被写体と距離を近くにすることにより、被写界深度を小さく(浅く)することができ、ボケを作り出すことができます。

【後ろの被写界深度のほうが深い】

被写界深度を計算してみましょう。

フラグシップ機(2000万画素)で、被写体の距離は10mで撮影した場合の被写界深度です。

被写界深度(被写体10m)_harf

10mの距離にピントを合わせると、前後どれぐらいの範囲がピントが合っているかがわかります。

焦点距離35mmのレンズで、F22に絞ると被写界深度は無限大、つまりパンフォーカスになります。
旅行に行った時、人物も風景もピントを合わせた写真を撮りたい場合は、この設定です。

そして、手前側(Near)と奥側(Far)の被写界深度をよくみると、奥側(Far)のほうが被写界深度が大きい(深い)のがわかります。

前ボケは作りやすいが、後ボケが難しいのは、奥側(Far)の被写界深度が深いからです。
奥側(Far)の被写界深度を勘案してピント位置を手前にすると、後ボケも容易になります。

【極薄の被写界深度】

被写体の距離が近いほど被写界深度が小さく(浅く)なります。
被写体の距離が近い撮影といえば、マクロレンズでの撮影です。

マクロレンズの最短撮影距離は、0.3m~0.5m程度です。
被写体距離を0.3mで被写界深度を計算したのが次の表です。
被写界深度の単位はmmです。

被写界深度(被写体 0.3m)_harf

私が愛用する Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM の被写界深度を見てみると、F2.8で 0.3mmです。 紙1枚の厚さしかありません。
F22まで絞っても、2.6mm程度です。

マクロレンズでの撮影で、ピント合わせに苦労するのは、被写界深度が極薄だからです。
撮影には三脚が必須です。

マクロ撮影は、どこにピントを合わせるかで、全く違う写真になりますから奥が深いです。

【被写界深度の目盛】

オールドレンズには、被写界深度の目盛がありました。
ハッセルブラッドのプラナーレンズは、絞りを操作すると、赤い2つの指標の間隔が広がったり狭まったりします。
赤い指標が指し示す距離目盛の間が被写界深度の目安です。

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最近のレンズには、被写界深度のメモリはついていません。
計算するか、面倒だったら勘で撮ってください <-オイ!

マクロ撮影の時は、試算しておくと取れ高がよくなるかもしれません。(たぶん)

【まとめ】

ボカしたいときは、
(1)絞りを開ける
(2)焦点距離の大きい(望遠)レンズにする。
(3)被写体に近づく

パンフォーカスにしたいときは、上に書いた(1)から(3)と反対のことをすればいいです。

被写界深度は、ピントを合わせた奥側(Far)のほうが大きい(深い)。
被写界深度の特性を理解すれば、前ボケ、後ボケも思いのままです。

マクロ撮影の被写界深度は、紙1枚程度の極薄です。
思い通りの写真を撮るには、三脚を立てて、マニュアルフォーカスで慎重にピントを合わせることが重要です。

<Neoうんちくオジサン>







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