Part1-2 Breath: The New Science of a Lost Art / James Nestor の要約
Part1 人類は、食物連鎖の頂点にいるにも関わらず、呼吸には大きな問題を抱えている
ジェームス・ネスターは、物心ついたときから呼吸の問題に悩まされていました。彼の頭蓋骨、口、喉頭は萎縮しており、気道はひどい状態でした。
このような問題意識から、ネスターはスタンフォード大学のジャヤカール・ナヤック博士とその実験に行き着いたのです。
その実験とは、
第一段階 10日間、鼻の穴にシリコンの栓をして、口だけで呼吸する
第二段階 鼻で呼吸し、呼吸の練習をし、体調の変化を記録する
口呼吸は、主に、鼻の調子が悪いときに起こります。鼻には、空気中の埃や体内の不要な細菌を取り除き、入ってきた空気を温め、潤いを与える働きがあります。さらに、鼻呼吸をすると、一酸化窒素NOが産生され、臓器や筋肉に酸素が行き渡るのを助けます。
不適切な呼吸をすると、鼻腔の容積が減少し、空気の流れが妨げられます。
鼻腔が狭くなるため、鼻の中で細菌が繁殖しやすくなり、風邪を引きやすくなったりします。
酸素は生命と発展の源です。進化は、空気を温め、浄化する機能をに鼻を与えてきましたが、、、150万年前、既に、人類の気道は劣化し始めました。
火の使用や刃物の発明・発見を通じて、食べ物の加工や調理が出来るようになると、顎などの筋肉が弱くなり、脳も発達して、頭部の中で脳が場所を取るようになりました。
小さくなった鼻は空気をろ過するのが苦手で、歯の噛み合わせも悪くなりました。先祖より体が弱く病的になってしまったのです。
これらの変化によって人類は食物連鎖の頂点に立つことができたのですが、同時に個体としては弱体化してしまいました。
実験の少し前、ネスターはアンダース・オルソンという参加者と知り合いました。オルソンは、ネスターの家の近所に引っ越してきて、一緒に、呼吸法や体操をやって、自分達の健康状態を記録しました。(※アカウンタビリティー・パートナーの存在は実験の継続率・完遂率を著しく上げます。Atomic habit.com)
オルソンは、実験の各段階で、自転車でのエクササイズをして、スタミナをチェックしていました。
鼻にシリコンの詰め物をして、口呼吸になったネスターには、このお遊びのような自転車エクササイズが、気分が悪くなるほどキツかったのです。
Part 2 口による障害と衝撃の事実
どんな運動にも不可欠な要素である呼吸について、アスリートは普通の人より、よく知っています。
空気や食べ物からエネルギーを得る方法には、有酸素と無酸素の2つがあります。無酸素でのエネルギー生成はブドウ糖の分解から作られます。
これは有酸素と比べて効率が悪く、脱力感やめまいを起こすなど、体に悪影響があります。
急に、激しい運動した後に、脱力感やめまいを感じた事があるのではないでしょうか?
しかし、十分ウォーミングアップすると(※デット・ゾーンを乗り越えてセカンド・ウィンドに入ると)好気性呼吸に切り替わり、ストレスを受け入れやすくなります。
1970年代に一流アスリートを指導したフィル・マフェトンコーチは、心拍数に基づいた個人別トレーニングプログラムを開発しました。(マフェトン理論)
このプログラムにより、アスリートは意図的に有酸素運動を行い、より効率的なトレーニングを行い、より早く回復することができたのです。
ちなみに、180から自分の年齢を引くことで、有酸素運動に最適な心拍数を知ることができます。
酸素飽和度が90%以下では、筋肉や臓器を維持するのに必要な酸素を運搬・供給できません。
ところで、口呼吸の実験はまだ続いていました。ネスターは、いつも疲れていて、睡眠が浅くなり、いびきや無呼吸の指標も悪化していきました。また、精神的にもだいぶ参っているようでした。
2019年日本での、口呼吸を強制されたラットの実験でも、迷路の通過が困難になることが確認されています。
ネスターは、エジル・P・ハーヴォルドのサルを使った実験を自分に重ね合わせて思い出しました。野生のサルの鼻にシリコンのプラグを入れて、2年経つと、サルの口蓋は変形してしまいました。その後、鼻栓をはずすと、サルは再び鼻呼吸を覚え、顎の形も元に戻りました。
鼻呼吸ができるようになると、幸せな生活を取り戻せたのです。
ついに、ジェームズ・ネスターがシリコンプラグを取り除く日がきました。自宅で、副鼻腔を洗浄し、鼻から深く息を吸い込み、自宅の裏庭にある木や花の匂いを楽しむことが、再びできるようになりました。
その時、ネスターは正しく完全な呼吸をすることの大切さを実感したのでした。
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