「どうして憎くなっちゃったんだろうな」と憎くなってしまった人の前で漏らす
先週最終回を迎えた水曜10時に放送されていたドラマ、「ムチャブリ! わたしが社長になるなんて」。
主演の高畑充希さん演じる雛子が、突然、子会社の社長に就任するというストーリーだ。最終話、志尊淳さんと高畑充希さんのさらりとしたラブシーンがとっっっっても素敵で胸がぎゅんぎゅんした……。
と、私が気になったのはそこではなく(そこも間違いなくそうなんだけど)、あるシーンだった。
雛子を子会社の社長に指名したのは、松田翔太さん演じる株式会社リレイションゲートの浅海寛人 代表取締役社長。雛子はもともと浅見社長の秘書をしていたのだ。そして、浅見社長のもとで専務取締役を担っていたのがお笑い芸人 坪倉由幸さん演じる葛原啓次郎だ。
この浅見と葛原、2人のシーンがとても印象に残っている。
葛原は、物語の中で浅見社長をその座から引きずり降ろそうといろいろ画策する。最終回直前で、その目論見が成功し、浅見は社長を退任してしまう。ところが、これがドラマの素晴らしいところ、最後の最後で浅見は再び社長に返り咲く。その結果逆に葛原が会社を追われることになってしまったのだ。
そんな敵対関係にある2人が社長室で話すシーン。
最初は嫌味っぽく「よかったな、また社長になれて」と浅見に声をかける葛原。どうして2人は敵対するようになってしまったのか。いがみ合う前、かつては会社のために頑張る2人の協力関係がそこにはあった。しかし、いつからかずれた2人の調和。話し込むうちに葛原は最後に、ぽろっとこう漏らすのだ。
「いつからこんなに(浅見社長が)憎くなっちゃったんだろうな」
この一言が、私には一番じーんときた。
憎くなかったはずの人が、そうではなくなってしまって、本人の目の前でこの一言をもらす。自分のコントロールに負えないほど大きくなってしまった負の感情。それを生み出したのも、少しずつ成長させてたのも、確かに自分のはずなのに、ようやく化け物のようになったその存在に気づいた瞬間だったのだろう。
しかも、それを憎い相手、本人の目の前でぽとっとこぼすように言うのが、また。ああ、そうだよなあ、と。そんなふうになりたくなかったはずなのに。そうならない道もあったはずなのに。でも、憎くなってしまった。
自ら選んで進んだはずの道が、いつの間にか沼のように自分の歩みを奪っていた。そのどうしようもなさが、漏れていた。それが印象的だった。
私もいつか、今はポジティブな気持ちで受け取っている人がネガティブになってしまうことがあるんだろうか。時を重ねて、そのことを本人の前で「どうしてこんなことになっちゃったんだろうな」と漏らすことはあるんだろうか。
自分まだまだわからないこと、感じたことがない気持ちがたくさんあるんだなあ、とこのシーンを見ていて思った。好きだった人を嫌いになってしまう。それはどのくらい切なくて、だけど、自分ではどのくらどうしようもない気持ちなんだろうか。
2人が交わっていた道はきっとこれからもう、交わることはないんだろう。確かな決別。協力関係にあった、明るい2人とのお別れ。寂しいなあ。
そのあとに、高畑充希さんと志尊淳さんがちゅっちゅとして、こんな恋もしたいなあ、なんてのもちゃーんと思ったのだった。
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。