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モノに囲まれているというのは、ある種、安心感でもある

最近、周りの人が生活をコンパクトにしている。いらない洋服を処分したり、ずっと大切にとっておいた高校生のときの宝物を見直したり、溜め込んでいたスケジュール帳を思い切って捨てたりと、モノを少なくしている人がたくさんいる。そんな姿を見ると、「すげ~……」となんともリアルな感嘆の声しか出てこない。そして自分の部屋を見渡す。なかなかモノが多い。本は文庫本で100冊以上あるし、新書も50冊以上あって。大学生のときにタワレコでは買えないからと大富豪になったような気分で、マイナーなバンドマンに投資するためにライブハウスに通い、たくさんのCDとグッズを買いあさった。彼らが鳴らした音楽とグッズは、タンスを十分に肥やしている。ありがとう。

どこから捨てればいいのやら。というかそもそも、私はこれらを捨てられるのだろうか? 捨てたら二度と買えないという考えが、私の断捨離の手を甘くする。ほら、これは? これはもう一度買える? では、こちらは? こちらは、もう一度出会えるのかな? ここで捨てたら、あなたは後悔しない?

……

…………する。小さな声だけど私がそう言うから、結局またタンスへお戻りあそばせる。

捨てるって難しい。むしろ、なんで捨てないとモノは増えてしまうのだろうか……。捨てなくてもいいようにコンテナ業者とか、いつでも預かってくれる個人倉庫、みたいなものがあることも知っている。知っているけど利用するには、これまたコストがかかるようで、それなら私が持っています、と結局いつもの通りになってしまうのだ。

捨てられる人に聞くと「その空間にも家賃を払ってるんだよ?」と言われた。わかっている。わかっているけど、モノに囲まれているというのは、ある種、安心感でもあるのだ。私が好きだったものが可視化されて、リアルな物量としてここにある。私が大切にしてきた過去の私が、ここにある。そんな気持ちになるんだよね。

そしてまた、「まあいいか、捨てなくて」とモノが増えていく。


”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。