ちゃんとできるようになるよ。ちゃんと人間やれるよ。
みんな、すごいよほんと。映えを気にしたり、楽しそうなストーリーをあげたり、SNSを更新してる後ろで、みんなちゃんと暮らしてるんだもん。平日は早起きして、満員電車に揺られて会社に向かって、社員証をピッとかってして。美味しいランチなのかお弁当なのかを食べて、また満員電車に揺られて家に帰る。ほんとうにすごい。
不特定多数の人の目の前に出す自分の後ろで恋愛して、趣味に没頭して、プロポーズして、傷ついて、喧嘩して、仲直りして、また眠って起きて。
見えないところで人間をしてるんだもんな。
高校の同級生で1人、「この子は大学に進学して、一人暮らしになったら生活できるんだろうか?」という友達がいた。それは彼女のお母さんがいわゆる過保護で、彼女のことを大切大切にしていた。過保護のカホコ、ここにありという感じだった。嘘かと思ったけど、家庭科の実習でお米を洗剤で洗う人を初めて見たのは彼女だった。「お米を洗っといて」の言葉をそのまま受け取ってくれる心綺麗な子だった。包丁も、フライパンも、菜箸すらも「初めて持つ」と言っていた。目をひんむいたけど、その嘘偽りない初めてがあるのが彼女らしすぎて笑った。
そんな彼女も、大学へ進学して一人暮らし、社会人になってちゃんと社会に進出した。
そして久しぶりに会う約束をして、彼女の一人暮らしの家に遊びに行った。お邪魔するとお茶が出てきて、軽いお菓子も用意してくれた。少し話しているとピーっと音が鳴って「あ、洗濯機回してたんだった!」と言って立ち上がり、「ちょっとごめんね」と言って洗濯物を干し始めた。
その様子をスタンディングオベーションしながら見ていた。
彼女の部屋にいたのは26歳の私と彼女だけど、そこには高校生の私と彼女もいたような気がする。お米を洗剤で洗って、玉ねぎを剥きすぎて、添え手をせずに包丁使っていた彼女に向かって、高校生の私が拍手喝采をした。
ちゃんとできるようになるよ。ちゃんと一人で暮らしていけるようになるよ。ちゃんと人間やれるよ。
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。