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商品は、商品だけにあらず。

代表の私は、就活を普通にすることなく社会人になり、その後も転職サイトを使うような転職は一度だけで、その時その時の波に乗って先に進む習性があります。

大学卒業後、ほんとうは大学院に行こうと思っていたものの、なんだかピンとこなくて、締切1週間前に出願を取りやめ。そのあたりから、その時々で自分の「なんか違う」とか「なんかこっちな気がする」の勘に従うようになりました。これが、決して順風満帆ではなく、遭難しかけてはなんとか助かるの繰り返し。でも、すっかり今では勘がどんどん研ぎ澄まされ、ますますそれに従うことが怖くない今日この頃です。さて。

想像もしなかった就職先、思いもしなかった仕事。

そんな私が3つ目の就職先としてたどり着いたのが、日本野鳥の会

・・・そうです。あの、野鳥の会です!

え、数えてたんですか?!」とか、カチカチカウントする手つきをされるのは結構あるあるです(笑)。野鳥の会と言えば、やはり紅白で最後のカウントしてたイメージが強く残っているんですよね。でも、実際何している団体なのかを知っている人は少なめ・・。元職員として声を大にして言わせていただきます!日本野鳥の会は、日本最大級の自然保護団体です。(ちなみに、野鳥の会が紅白でカウントを担当していたのは最初の数年だけだそうです。ちょっと驚きませんか?)

そんな感じで言わずと知れた野鳥の会、と思いきや、20代以下の皆さんには「それなんですか?」って素で聞かれます。なので今や、先手を打って、「野鳥の会っていう有名な鳥の会があってね、」って言ってしまいます。

そして、年代を問わず、時々こんな反応をいただきます。「野鳥の会って言ったら、あの長靴ですよね?」って。時には、「長靴持ってますよ!」って言っていただきます。すかさず「実は私、その商品担当していたんですよ」と返答して、ひと盛り上がりします。

よかったら、「野鳥の会 長靴」で検索してみてください。たくさん出てくるはずです。くれぐれも「会長の靴」ではありませんので。

野鳥の会は、商品開発や通信販売をしているんですね。オリジナルグッズも結構たくさん。そのオリジナルグッズのスター的存在が「バードウォッチング長靴」!もう名前が、どストレート過ぎるんだけど、それ以外の何ものでもない商品です。バードウオッチングするための長靴。正確には、田植え長靴を改良した、沼地などで水辺の鳥を観察する時に履く長靴。ちなみに、この長靴を長時間履いても疲れない靴下とか、はめたままでも図鑑がめくりやすいグローブとか、痒いところに手が届く商品を結構生み出しています。

この長靴がすごく有名になったきっかけは、なんとフジロック!あの、夏に苗場スキー場でやっているフェスです。そして、フジロッカーなら知らない人はいないと言い切れるくらいに有名なのが当長靴。私も二度ほど長靴の利用状況の視察(!)でフジロックに行ってますが、履いている人は来場者の半数超えです!誇張でもなんでもなく。あまりにみんなが履いているので、周辺の宿に泊まる際には、長靴の取り違えに注意がいるほどだそう。すごいね。

素材が柔らかくて、持ち運びに適している長靴ということで、一気にブレイクしたと言われてます。フジロックは例年必ず雨が降り、田んぼフェスの異名も取るほどで、となるとやはり元・田植え長靴は本領発揮となるようです。残念ながら野鳥の会の職員の中には、あまり夏フェス行く感じの人はいないので、そのマーケットを狙ったとか、仕掛けたとかではないのがまた面白い。

と、長々書きましたが、長靴はもともと野鳥観察をする会員さん向けに開発された商品です。そのほかにも、アウトドアだけでなく、本や雑貨などライフスタイルとして野鳥を楽しんでもらうアイテムを、仕入れたり作ったりしています。ちなみにバナーの写真は、私が退職する直前まで制作を担当していたフィールドノートとマステ。野鳥と野帳をかけているとか、かなりマニアックな商品です(笑)

で、もちろん使ってくださる会員さんや一般の方に喜んでもらえる商品を売っているわけですが、一方で野鳥の会という団体にとって商品は商品だけにあらず、なんです。商品を通して何を伝えるのか。例えば、野鳥の生息域の食品を買ってもらい、その地域の応援をしてもらう。寄付付きのTシャツを買ってもらい保護の費用の一部を補う。フェアトレードの雑貨をカタログに掲載することで児童労働の事実を知ってもらう。商品を通して、様々なメッセージを発することができるのです

そういえば私が所属していた販売グループは、普及室という部署の中の一つでした。販売を通じて自然保護を普及するということなのでしょう。

だとしたら、商品はメディアだ、ともいえます。そして、商品を通して何かのメッセージを伝えるというのは、それはもう我が原点「インタープリテーション」そのものだったのです。私にとってのインタープリテーションについては、別記事をどうぞ。

なお、バードウォッチング長靴は、ひょんなことから人気に火がついた商品でしたが、年間でものすごい数が出荷される中、ただ売っているだけでは勿体無いということで、ある時は自然保護に関するリーフレットを商品とともにお届けしていました(現時点では不明)。

ただ単に自然に関わる仕事がしたいという理由でたどり着いた職場、かつ、まったく思ってもみなかった商品企画に携わるという展開。結局、本人の想定をはるかに超えて6年も関わりました。ありがとうございました。

その時々の波に乗ってたどり着いた野鳥の会。ここに来なければ、コピーライティングにはきっと出会っていません。もちろんカタログでコピーを書く機会があったという意味でもありますが、それ以上に、何を伝えるのか、どのように伝えのか、なぜ伝えたいのか、伝えることに向き合えたことが何より貴重な経験だったと思います。

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「伝えてゆきたい。『ひろわない』というやさしさ。」多分人生でもっとも大きなところに載ったキャッチコピーであり、たしか人生最初に世に出したキャッチコピーです。初心忘るべからず、です。

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