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創世記1章2節a 原語解説

והארץ היתה תהו ובהו

地は形がなく、何もなかった。 (新改訳)

The earth was formless and void, (NAS)

וְהָאָ֗רֶץ (ヴェハアレツ)

הָֽיְתָ֥ה (ハイター)

תֹ֨הוּ֙ (トフ)

וָבֹ֔הוּ (ヴァヴォフ)

(上記の単語には、ニクダーをつけました)

創造の過程の一番最初の状態を描写する場面です。原語で読むと、また違った風景が見えてきます。これから各単語を詳細に見ていきましょう。

והארץ (ヴェハアレツ)

最初の文字 ו (ヴェ)は、接続詞です。「そして」と訳すことができます。日本語訳でも英語訳でもあえて訳出されていない語です。

ティンデルの聖書注解によれば、「さて地は」と訳す方が適切であるとのことです。理由としては、文の構造が、ヨナ書3章3節の「さて、ニネベは…非常に大きな町であった」と同じ構造とのことです。

つまり、ここで視点を「地」に移しているといえるでしょう。

הארץ (ハアレツ)は、1節でも出てきました。the earthという意味です。

היתה (ハイター)

これは、日本語の「~であった」および英語のwasに対応する動詞「ハーヤー(היה)」の完了3人称女性単数です。

ヘブライ語には、日本語にも英語にもない男性形と女性形があるのです。

ここでなぜ女性形が使用されているかというと、主語の「地」が女性形だからです男性と女性の区別が、創造の始めから重要であることがここでもわかります。

ちなみに、ヘブライ語では通常、動詞の後に名詞が来ますが、ここでは、名詞הארץ(ハアレツ)の後に動詞היתה(ハイター)が来ています。これは、הארץ(ハアレツ)を強調するためです。

ותהו ובהו (ヴァヴォフ)  (トフ)

文字 ו (ヴェ)は、「そして」やandに対応する接続詞です。

תהו(トフー)は、「茫漠」という意味です。ほかの箇所では、道のない荒れ野、空しさ、混乱、比喩的には根拠のないとか無益なという意味で用いられています。

בהו(ヴォフ)は、「何もない」という意味です。תהו(トフー)と対になっています。

この2つの語は韻を踏んでいます。

感想

まさに茫漠としていて、虚無の状態。実際にどのような状態か想像が付きません。しかし、人間の歴史の中には、茫漠として、虚無的な期間もあると思います。パンデミックもそのような期間かもしれません。

しかし、創世期にはこの後の劇的な展開が記載されています。このような状況に働きかけることができるのは、まさに創造主のみであることがわかります。

参考元

青木偉作著「はじめての聖書ヘブライ語」(国際語学社)
デレク・キドナー著「ティンデル聖書註解 創世記」(いのちのことば社)
The Complete Tanakh (Tanach) - Hebrew Bible
https://www.chabad.org/library/bible_cdo/aid/63255/jewish/The-Bible-with-Rashi.htm














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