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小児保健:乳幼児突然死症候群・児童虐待

こんにちは!yanagiです。
僕は肩の力を抜いているとき、いい加減なことを口に出してしまいます。"出してしまう"というのは、不適切かもしれないと思いながら発するから。
でも時々、そんな適当な言葉が目の前の人を笑顔にすることがあって、なんだか不思議な気持ちになります。

本日学ぶのは「乳幼児突然死症候群」と「児童虐待」です。

【問題】乳幼児突然死症候群と児童虐待について、正しいのはどれか。
a. 1歳未満の小児の死因で最も多いのは、乳幼児突然死症候群である
b. 乳幼児突然死症候群は、解剖で時に死因となる頭蓋内出血を認めることがある
c. 3歳児の肩を持って何度も強く揺さぶって起きた意識障害は、脳内出血の可能性が高い
d. 児童虐待が疑われたとき、その通告先へ繋がる電話短縮番号は189である

《問題の正解は一番下にあります》

乳幼児突然死症候群(SIDS)

乳幼児突然死症候群SIDS: sudden infant death syndrome)は「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義されています。
SIDSの診断は主に除外診断によりますが、突然死の他の要因(頭蓋内出血、髄膜炎、心筋炎など)を除外するための適切な剖検が必要となります。
SIDSの発生頻度は人種・民族によって差がありますが、日本ではおよそ出生6,000人に1人(米国は出生2,000人あたり1例)で、生後2〜5か月に多く発症します。

SIDSの原因に関して、その全貌は明らかになっていませんが、呼吸中枢の軽微な機能不全・発達遅延が覚醒反応の低下を引き起こすことが考えられています。例えば、うつ伏せ寝していると、口や鼻が圧迫されて徐々に低酸素状態となります。通常なら寝返りをうって(頭を動かして)姿勢を変えるのですが、死亡する児は息苦しさを感じることができず、そのままの姿勢で寝続け、低酸素状態から回復できずに死亡するのではないか、という仮説です。他にも、心筋症や刺激伝導系の異常など、心臓の器質的異常も関与が指摘されています。

危険因子には、以下があげられています。
①うつ伏せ寝:SIDSで死亡した子どものうつ伏せ寝の割合は健康な子どもに比べて明らかに高く、欧米でうつ伏せ寝をやめるキャンペーンを行った地域でSIDSが減少しています。
②添い寝・柔らかい寝具・乳児の包みすぎ
③低出生体重児
④両親の喫煙:両親が喫煙する場合、両親が喫煙しない場合の約4.7倍もSIDSの発症率が高いと報告されています。
⑤非母乳育児:母乳で育てられている乳児は、人工乳で育てられている乳児と比べてSIDSの発症率が低いと報告されています。人工乳がSIDSを引き起こすものではありませんが、できるだけ母乳で育てることが推奨されます。

これらを複合的な要因として考慮し、「軽微な脳幹障害」を背景に、「脳や心臓のはたらきの不安定性」「外界からのストレス」が重なることでSIDSが発症するというTriple risk modelが提唱されています。

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被虐待児症候群

虐待には、殴る・蹴る・火傷などの身体的虐待、性的に暴行する性的虐待、子どもを捨てたり世話をしないネグレクト、言葉などのいじめで子どもに精神症状を認める心理的虐待があります。3歳以下に多く、望まれずに生まれた子どもや障がい児などが多い傾向があります。親には成育歴に問題があり、生活不安、貧困、家庭不和などがあることが多いです。

子ども虐待を疑った場合は、まず自宅に帰すかどうかの判断をします。
①生命の危険が考えられるときは、絶対に入院させます。親の同意が必要なため、「入院での治療が必要」と説明するようです。自宅へ帰す場合は、次回の診療予約を必ず行い、受診しなかった場合に電話連絡を入れることを伝えます。
②入院後、全身写真、骨X線、頭部CT、および必要な場合は婦人科診察を行い。安全の確保と適切な治療を行います。裁判になる場合があるため、虐待の証拠を確実にしておく必要があります。
児童相談所または市町村の福祉事務所にまず通告して、指示があれば警察に通報します。通告・連絡は疑った時点で、あるいは虐待の可能性も否定できないと感じた時点で行います。
*児童虐待防止法において、虐待を発見した場合(虐待が疑われた場合)すべての国民に通告義務があります。児童相談所の全国共通ダイヤルは『189(いちはやく)』です。

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解答

【正解】d(児童虐待が疑われたとき、その通告先へ繋がる電話短縮番号は189である)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・国試小児科学 第6版
・MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳幼児突然死症候群(SIDS)」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/19-小児科/乳幼児および小児におけるその他の疾患/乳児突然死症候群-sids
https://rednose.org.au/article/the-triple-risk-model
・日本小児科学会「子ども虐待への初期対応」
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/abuse_17.pdf


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