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じぶん と ファッション

2023年12月19日(火) 天気:曇り

「ワタシって天才かもね で生きていけ、だって。」
左隣を歩く相方が、ふと思いついたように言う。

歌詞や小説の一節や映画のセリフなど、適当な言葉を拾ってはそれについてグルグル考えを巡らせるという、僕がときどきやる遊びを始めたのかと思った。どうやらアパレル店舗のポスターが目に入ったらしい。
彼女が僕の左側を歩くのはいつものことで、実際その方が落ち着くのだけれど、それは自分が国産車(助手席が左、運転席が右)を運転しているからかもしれないし、彼女がショルダーバッグを右肩から斜めにかけるのが習慣だからかもしれない。

自尊心が強いとか、自己愛が強いというと大袈裟な気はするが、僕は自分のことが好きな方だとは思う。だから基本的に「ワタシってしょうもない人間だよね」で生きている。それくらいでいると、威厳と尊敬のバランスが丁度よくなるような、そんな気がしている。

冒頭のキャッチコピーには続きがある。

うまく作れた弁当、
うまく盛れたマスカラ、
うまく歌えたヒトカラ、
今日にいちいち感動して、
ワタシ幸せ者になれ。

ある日じぶんには価値がないと思ってしまった。
次の日ワタシって天才かもねと思ってしまった。

なにを信じているの?
たぶんじぶん。

earth music & ecology 公式サイトより

自分に価値がないと幾度となく自覚させられながらも、自分が好きな気持ちを諦められない。そんな人物と彼の悩みを、Vaundyの『僕は今日も』を聴いてぼんやりと想像してしまい、『平凡と凸凹』という物語を書いた。

たしかに、服装、髪型、バッグ、アクセサリーで気分が上がることや自信を持てることも少なくはない。わざわざ人に話すほどじゃないけど、ちょっぴり嬉しくて、視線がほんの少し上を向く、みたいな。そうすると、駐車場にスズシロの花が咲いているとか、コンビニで佐藤さんって店員が笑顔で接客してくれたとか、何気ないことに感謝の気持ちを抱くことができる、みたいな。
そういう小さな幸せに気が付く感性と、それを大切にできる謙虚さ、それを持ちあわせている人は、きっと静かに輝いて見える。古いお寺に鎮座する大樹のように。寒い夜に佇む月のように。

「ワタシって天才」に繋がるような、その可能性を広げてくれるような服を、今年一年頑張った自分に贈ろうかな。そんな、少し背中を押してくれるようなアクセサリーを、大切な人に贈ろうかな。なんて思ったりした。

防寒がしっかりしているとか、他の服とも合わせやすいとか、季節を跨いで使えるとか、トレンドだとか、同世代の女子ウケがいいとか、そんなことは無視して、ただ "気分が上がる" モノを見つけたい。なんて思ったりした。

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