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新生児の疾患:ハイリスク児

こんばんは!yanagiです。
学生のうちに小児科専門医試験に受かるくらい勉強したいという気持ちで、日々学んでいます。

ジョージ・オーウェルの『動物農場』を読んだのですが、途中からゾクゾクが止まりませんでした。この寓話が書かれた時代背景や経緯を知らずに読むと、訳者による解説でさらに衝撃を受けることになります。

さて、今日扱う内容は「ハイリスク児(成熟異常)」です。

【問題】ハイリスク児について、正しいのはどれか。
a. 低出生体重児とは出生体重1,500g未満の児である
b. 母体糖尿病児の低血糖は、未熟な糖新生機能が原因である
c. 双胎間輸血症候群では、供血児の方が予後が悪い
d. 妊娠高血圧症候群では胎児発育遅延をきたす

《問題の正解は一番下にあります》

ハイリスク児とは

既往や所見により、新生児期に疾病への罹患や死亡の危険性が予想され、一定期間の経過観察や特別な治療を必要とする新生児をハイリスク児と呼びます。全出生児のおよそ10%にみられます。ハイリスク児の中でも重要なのは、低出生体重児・母体糖尿病児・双胎間輸血症候群・胎盤機能不全症候群です。

低出生体重児

出生時低体重になるものには、発育は順調なのに早く産まれてしまった場合(早産, AGA児)と、もともと在胎日数に比べて発育が悪い場合(SGA児)とがあります。AGA児は分娩の異常が原因となることが多いのに対し、SGA児やFGR児は、染色体異常などの先天異常、TORCH症候群などの胎内感染症、奇形症候群などが原因であることが多いのが特徴です。
死亡の原因としては、生後3日以内は呼吸窮迫症候群(RDS)頭蓋内出血が多く、生後7日以後は感染症が多くなっています。

AGA=appropriate for gestational age
SGA=small for gestational age
FGR=fetal growth restriction

在胎34週未満もしくは出生体重1,500g未満(低出生体重児)の児は、温度変化に弱いため、保育器内で保育するのが原則です。保育器内の温度は35℃, 湿度は60%くらいを目安にします。

無呼吸発作とそれによる脳障害を避けるため、呼吸モニタリングを怠らないようにし、マスクでPaO2を60〜80TorrとなるようにO2投与を行います。
また、未熟児では嚥下もうまく行えないため、嚥下性肺炎をおこす危険があります。呼吸状態が安定する生後72時間ほどまでは、経管栄養を控えてグルコースを基本とした輸液を行います。

母体糖尿病児(IDM)

Ⅱ型肺胞上皮細胞(肺サーファクタントを産生)の成熟は、ステロイドによって促されます。母体が高血糖の場合、胎児ではインスリン分泌が亢進していますが、これはⅡ型肺胞上皮細胞のステロイド感受性を低下させます。よって、母体糖尿病児ではRDS発症率が高くなります。

IDM=infant of diabetic mother
RDS=respiratory distress syndrome

また、胎児の高インスリン血症により、グリコーゲンの合成や蛋白質への同化が促進されるため、成長が促進され、IDMのほとんどは巨大児となります。したがって、出生時に仮死を呈したり、分娩外傷を伴うこともあります。

その他、代謝系では低血糖・低Ca血症、血液循環系では多血症・黄疸・心筋症などを認める場合もあります。母体の糖尿病が重症であれば、血管障害から胎盤機能異常などを伴ってFGR児となることもあります。

双胎間輸血症候群(TTTS)

一卵性双胎で胎盤を共有しているとき、両児の胎盤血管には動静脈吻合が存在します。吻合血管を介して、両児の間に循環血液量の不均衡が生じることによって、受血児(多血児)と供血児(貧血児)が生まれることがあります。特に、A-Vシャントが存在すると、血圧差によってA→Vの輸血が起こってしまいます。

受血児では、Ht値上昇・過粘稠度症候群・高ビリルビン血症・心肥大・浮腫などをきたし、供血児では、低体重・貧血・低血圧・脱水などをきたします。受血児・供血児とも死亡のリスクがありますが、予後は心不全や胎児水腫をきたす多血児の方が圧倒的に悪くなります。

一卵性双胎では妊娠中から十分に経過観察を行い、必要であれば治療を行います。26週未満のTTTSに対しては、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術が第一選択となり、適応外の場合は積極的羊水除去を行います。

胎盤機能不全症候群

胎盤が退行性変化を起こし、胎児に対する栄養や酸素の供給が減少することで生じる病態です。20〜30%が過期産児にみられますが、妊娠高血圧症候群、胎盤異常でも起こります。

解答

【正解】d(妊娠高血圧症候群では胎児発育遅延をきたす)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・病気がみえる vol.10 第4版



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