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新生児の疾患:胎児・新生児の生理

こんにちは!yanagiです。
学生のうちに小児科専門医試験に受かるくらい勉強したいという気持ちで、日々学んでいます。

先日、残業となった職場の皆さんへ両手いっぱいの差し入れを買っていく方々とお話をして、ほっこりしました。"差し入れ"って温かみがあって嬉しいですよね。

今日は、胎児・新生児の生理について勉強していこうと思います!

【問題】出生後の循環動態の特徴について正しいのはどれか。
a. 肺動脈圧は上昇する
b. 体血圧は低下する
c. 正期産児の卵円孔は生後数日で閉鎖する
d. 動脈管は早産児が正期産児より自然閉鎖しやすい

《問題の正解は一番下にあります》

呼吸

胎児の肺胞が外界で呼吸できる程度まで"構造的に"完成するのは妊娠26週頃であり、出生後まで発育を続けます。サーファンクタントが十分に産生され、羊水L/S比が上昇するのも34週ころです。

※羊水中のL/S比(レシチン/スフィンゴミエリン比)
Ⅱ型肺胞上皮細胞から分泌される肺サーファクタントの主成分であるレシチンは妊娠週数の増加とともに上昇するのに対し、スフィンゴミエリンはほぼ一定です。そのため、妊娠週数が進むにつれL/S比は上昇します。マイクロバブルテストとともにRDSに対するスクリーニング検査として用いられます。

新生児の第一呼吸は、分娩時の低酸素状態と、その結果として高二酸化炭素血症・pH低下が化学受容体を刺激するために起こると考えられています。ここで肺胞の表面張力を低下させているのがサーファクタントです。胸郭が軟かく、呼吸筋も発達途上なので、横隔膜に頼った腹式呼吸になります。

循環

胎児循環は、静脈管・卵円孔・動脈管の3つのバイパスを備えています。
まず、静脈管は、胎盤からの動脈血を臍静脈を経て(肝臓を介さずに)右房へ運ぶバイパスです。卵円孔は右房に運ばれた血液を(肺を通過せずに)左室へ送るための右房→左房のバイパスです。それでも多少は右室から肺動脈へと血液が送られますが、それを大動脈へバイパスするのが動脈管です。卵円孔と動脈管が機能するためには、肺動脈圧>大動脈圧となる必要があり、胎児は生理的に肺高血圧となっています。ちなみに、胎児では心拍出量の50%が動脈管を流れているようです。

胎盤からの循環が失われると、左心系の圧が上昇する一方で、呼吸が開始されて肺が広がり、肺血管抵抗も低下します。圧較差が逆転することで、体循環へと移行することで、卵円孔(→卵円窩へ)、臍動脈(→臍動脈索へ)、臍静脈(→肝円索へ)、動脈管(→動脈管索へ)が閉鎖します。
卵円孔は生後2〜3分で機能的に閉じられ、数日で閉鎖して卵円窩となります。臍動脈・臍静脈も生後10分以内に閉鎖します。動脈管だけ機能的な閉鎖には約15時間ほどかかります。動脈管の閉鎖はPaO2の上昇により起こりますが、低出生体重児ではこの反応が弱く、動脈管開存症が比較的高い頻度でみられます。

消化

胎便は胎生16週から作られはじめ、正期産では60〜200gあります。健常児では出生後にこれが排泄されることで、尿排泄・不感蒸泄と合わせて生理的体重減少(正常は10%以内でしたね)がみられます。胎児に低酸素血症があると出生前に排泄をしてしまい羊水混濁をきたします。一方、胎便排泄遅延がみられるときはHirschsprung病を疑います。

嚥下反射がみられるのは胎生32週以降なので、これより早く出生してしまった早産児では経管栄養が必要になります。糖類の消化吸収に関して、乳糖分解酵素(ラクターゼ)は30週でもまだほとんど存在しないため、早産・低出生体重児では母乳やミルクの消化吸収に際して問題となります。胆汁酸や膵リパーゼは低地を示し脂肪吸収能力は低いですが、蛋白質の消化吸収能力は早期から認められます。

解答

【正解】c(正期産児の卵円孔は生後数日で閉鎖する)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・Primary Care「レシチン・スフィンゴミエリン比」
https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/index.cgi?c=speed_search-2&pk=750




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