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蛙化現象と童話問題

「蛙化現象」というのを知っているだろうか。

蛙化現象とは、ずっと好きだった男性が振り向いてくれた途端、相手のことを「気持ち悪い」と感じてしまう現象を意味します。

GO!GO!ワンク

という現象のことらしい。
まぁ聞いたことなくもない。

っていうか、「蛙化現象」でググって一番上に出てくる「GO!GO!ワンク」っていうのが西日本シティ銀行のオウンドメディアであるという驚きのほうがでかい。
銀行の皆さんなにやってんすか。

「付き合えたらすぐ飽きちゃう」みたいなのはたまに聞く話ではあるが、「なんで蛙化」なんだ?と思って調べてみたら、「かえるの王さま」というというグリム童話が由来らしい。


ということで、あまり知られていない「かえるの王さま」がどんな話か、wikipedia「かえるの王さま」掲載のあらすじを俺氏の副音声付きでお楽しみください。


ある国の王女が、森の泉に金の鞠を落としてしまう。

おとぎ話で泉があったら、そこに何かを落とすのは鉄板の流れである。
丁寧な前振りからの落とし、これぞおとぎ話。


そこへカエルが「自分を王女様のお友達にしてくれて、隣に座って同じ皿から食事を取って、あなたのベッドで寝かせてくれるのなら、拾ってきてあげよう」と申し出る。

そして出現するカエル。毬を取ってくる条件として出したのは

  • 友達になってくれ ←わかる

  • 一緒に食事をしてくれ ←わかる

  • 一緒に寝てくれ ←なるほどわからん

最初の二つはハートフルな話だが、最後になって突然のエロガエルである。
取引条件にエロいことを出してくる奴はやばい奴と決まっている。というか、そんなやつをおとぎ話に登場させないでほしい。


王女は条件をのむが鞠を取り戻せた途端、カエルを置き去りにして走って城へ帰ってしまう。

そして王女様、条件を飲むと見せかけて毬を取ってもらった瞬間に逃亡。
民法90条にも「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」とありカエルとの契約も無効なので、この王女様の作戦勝ちである。


翌日王女が家族と夕食を取っていると、カエルが城に現れて王女に約束を守るように要求する。

しかしこのエロガエル、なかなかにめげない。その強靭な意思を生かす場所は他になかったのかよ。


王は王女から事情を訊き、約束を守るように命じる。

おい王様!お前それでも王女の父親かよ!「あー、約束したんかー、それはしゃーないなー」って、素直かよ!


王女が嫌々ながらもカエルと一緒に夕食をとった後、カエルは王女のベッドでの同衾(俺注:要はエッチなこと)を要求する。王女は恐怖と嫌悪から泣きながら拒むが、王の命令によって寝室へ行くこととなる。

いやいや王様、さすがにそれは断ってやれよ!そうやって凝り固まった考えしかできないから娘に嫌われるんだって!てか、恐怖と嫌悪から泣きながら拒んでいる娘に強要するって、もはやお前もカエルの共犯だぞ!鬼畜かよ!


王女は寝室の隅にカエルを置いて一人で寝てしまおうとするが、カエルは「自分をベッドに上げてください、さもないと王に言いつける」と抗議する。

単なるエロガエルじゃなくて、すぐに告げ口しようとするタイプのエロガエルである。王様が自分の味方だと分かったとたんこの態度である。絶対に友達にはなりたくないタイプである。


王女は腹を立て、罵りながらカエルを壁に叩きつけようとする。

王女の反撃キタ――(゚∀゚)――!!
さすがにここまでくると上品な王女もブチ切れ案件である。俗にいう、「ガンジーも助走つけて殴るレベル」というやつである。


するとカエルの魔法が解け、立派な王子の姿に戻る。これまでの無礼を詫びた王の求婚を受け、間もなく二人は仲良くなり、婚約をする。

ん?なんかのきっかけでカエルが人間に戻るのは許そう。それが立派な王子なのも百歩譲って許そう。でも、仲良くなって婚約するのは違くないか?だって中身は告げ口エロガエルだぞ?結局見た目と肩書なのか?イケメン王子なら何でもいいのか?!?!おい!!!!!!!


しばらくして、王子の国から忠実な家来のハインリヒが馬車で迎えにやってくる。ハインリヒは王子がカエルになってしまった折、悲しみに胸が張り裂けそうだったので胸に3本の鉄の帯を巻き付けていたが、無事人に戻ることのできた王子と花嫁と共に祖国に戻る道中、鉄帯は喜びによって1本ずつ大きな音をたてて弾けて外れていく。(完)

ハインリヒについては、もう「いや、君、だれ?」という感じである。
悲しみで胸が張り裂けそうだからって鉄の帯をまいたり、めちゃくちゃキャラが濃いことは推察されるが、突然の出現過ぎて意味不明である。
こういうのはちゃんと伏線を張っておいてほしい。

そして、「鉄帯は喜びによって1本ずつ大きな音をたてて弾けて外れていく」という、ハリウッド映画だったらエンドクレジット前の最後のシーンにふさわしいようなカッコいい一文ではあるが、なんせ鉄帯をまいてるハインリヒが数分前に突如出現したモブキャラなため、「え、こいつで終わるの?」感がすごいのである。



童話とは、本来親などが子供に読み聞かせる教訓あふれた物語のはずなのだが、一体この物語からは何を学べばいいのだろうか。
この童話の登場人物といえば

  • カエル:エロい。告げ口魔。実はイケメンで王子。

  • 王女:毬を落とすなどおっちょこちょいだが、腕力に定評がある。面食い。肩書に弱い。

  • 王様:娘が困っていても、通り一辺倒に「約束は守りましょう」しか言わない頭でっかち。

  • ハインリヒ:最後に登場してオチをかっさらうモブキャラ。

もう登場人物にやばい奴しかいない。
「こういうやつらにはならないようにしましょう」くらいしか学びがない。
ここまでカオスな童話は他にないのではないか。

美女と野獣は「見た目で判断しちゃだめだよ」的な教訓があるが、「かえるの王さま」は「結局見た目と肩書だよね」みたいな、元も子もないストーリーである。
あとめちゃ細かいけど、この童話「かえるの王さま」って題名だが、カエルだったのはどっかの国の王子であって、あやつは王様ではない。題名だけ見たときKing of カエルの話かと思ったぞ。

しかも、wikipediaによると、「かえるの王さま」は1812年のグリム童話初版から、最終決定版の7版まで一貫して巻頭を飾る話らしい。
これな物語が巻頭たっだら、他の読まずに速攻でメルカリに売られる。


そして、「かえるの王様」がヤバすぎて忘れがちだが、「ずっと好きだった男性が振り向いてくれた途端、相手のことを「気持ち悪い」と感じてしまう」という蛙化現象と「かえるの王さま」が関連性を見いだせないのである。

前述の西日本シティ銀行の公式見解によると

この物語では、気持ち悪いと思われていたカエルが最終的に王子になっています。蛙化現象の場合は反対に、いわば王子だった相手がカエル(嫌悪感を抱く存在)になります。物語とは逆の現象ですが、同じ対象への気持ちが正反対に変化するところに着目して、「蛙化現象」という名前が付いたものと考えられています

GO!GO!ワンク

とのことだが、「同じ対象への気持ちが正反対に変化する」物語なんて、他にいくらでもあったでしょうよ…


こんなカオスな童話でも200年後も読まれていると思うと、このブログも200年後に誰か読んでてくれないですかね。

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